2024年米国大統領選挙 1 (2024/07/25)

現職の大統領であるバイデンが、2期目の立候補を断念すると発表した。

2024年米国大統領選挙 1 (2024/07/25)

2024年米国大統領選挙 1

7月21日は歴史的な日であった

現職の大統領であるバイデンが、2期目の立候補を断念すると発表した。
同様の事件が起こったのは1968年、現職大統領のリンドン・ジョンソンが、同年の予備選挙の最中に最有力候補であったロバート・ケネディ―(ジョン・ケネディー大統領の弟)が3月に暗殺され、ベトナム反戦の嵐が吹き荒れる中でジョンソンが再選を辞退したことがある。その背景は彼の健康問題、さらには大統領選挙に出ても勝てる見通しが立たないということだったらしい。
今回の事件は実に56年ぶりの現職大統領の出馬断念である。
6月27日に行われた共和党のトランプ候補との討論会(ディベート)で無残な姿をさらしたバイデンは、出馬辞退の圧力の高まりに抵抗していたが、24日間の抵抗でついに力尽きて敗北、断念に追い込まれた。
ディベート以前から一般の投票者の世論では圧倒的に老齢すぎるという意見が高まり、民主党支持者でも半数以上はバイデン出馬反対であった。
さらにディベートのパーフォマンスを見てこれでは勝てないと、上院、下院議員たちが出馬反対に回った。

最後には、民主党下院で圧倒的な影響力を保持していた、前議長のナンシー・ペロシ議員(84歳)が、これでは民主党は負けるというので、直接バイデンに出馬断念を迫ったといわれている。さらにオバマ元大統領も【この選挙のトラジェクトリー(打球の球筋)では選挙での勝利は難しい】と間接的に発言したことが報道されている。
最後のオバマの発言は、バイデンの神経を逆なでして反感を募らせたようだ。
そもそも2016年の民主党候補選びの際に、オバマは副大統領であるバイデンをバイパスして、国務長官であったヒラリー・クリントンを推薦している。それに対してバイデンは深くオバマを恨んでいたということらしい。

表面的にはやーやーで肩をたたき合うジェスチャーを見せながら、バイデンはオバマを嫌っていたことは明らかである。それに対しナンシー・ペロシ下院議員は2022年の中間選挙で民主党が下院で過半数を制することが出来なくなり、議長の座を降りたが、同時に民主党のトップの座も下りた。83歳の高齢を意識して、自ら民主党下院院内総務の座を放棄した。
彼女にしてみれば、81歳になってまだ大統領の椅子にしがみ付く バイデンに耐えられなかったのであろう。自ら権力の座を降りた彼女は、老齢の問題でバイデンにアドバイスできる立場の唯一の人間であったろう。

副大統領のカマラ・ハリスをトップ・オブ・ティケットに推薦

バイデンが候補の座を降りるにあたって、副大統領のカマラ・ハリスをトップ・オブ・ティケット(大統領候補)に推薦した。大統領に指名の権限はなく、あくまでも8月19日から始まる民主党大会で、3800人からの代議員の投票で決められることになる。
このハリス女史の立候補には、多くの人が賛意を表している。当初、オバマ元大統領も、ペロシ議員もあからさまな賛意を見せていなかったが、23日にはほぼ態勢は決して、ハリス女史が大統領候補にほぼ決定した。
24日のNYタイムズにはそれに反対する意見も出ている。
ハリス候補の弱みは、いくつかあるが、まず不人気である。(これから劇的に変化する可能性はある)国民の彼女に対する信認率は38.3%、不信認は51.4%となっている。
彼女は選挙活動が不得手である。彼女は圧倒的に有利なはずのカリフォルニア司法長官の選挙(2010年)で、共和党の候補に1%以下の票差で辛勝している。

また2020年の大統領候補の予備選挙では、立候補後、数カ月で、立候補を断念している。
さらに彼女はbad managerである。
副大統領のときも、彼女の補佐をする高級スタッフの辞職が頻繁で、彼女が人の使い方を知らないといわれている。
そもそも彼女の出世にきっかけになったのは、サンフランシスコの地方検事への就任だが、当時のブラウン州知事のガールフレンドであった彼女が、そのコネクションを使って、選挙運動をしたといわれている。
しかしその弱みを持つハリスがトランプに勝てないということにはならない。

ハリス候補の出だしは絶好調である

ダブルヘイトリッド(バイデンも嫌だしトランプも嫌い)の有権者が相当数いて、この人たちの投票活動が焦点の一つとなっていたが、バイデンヘイターがいなくなり、トランプヘイターが取り残された状態でこの選挙がどう転ぶかわからなくなっている。
バイデンの81歳に比べて59歳と若いハリスは若年層の票を掘り起こすことが出来る。
トランプ陣営はバイデン批判からハリス批判に切り替えているが、口汚く罵るタイプのトランプの言動はどうしても女性批判につながりやすく、おのずから墓穴を掘る可能性が高まる。
トランプが採用した副大統領候補のバンスは、最悪のチョイスだと、一部の民主党支持者は語っている。

バンスはオハイオ州出身でもともと共和党の強い地盤である。バンスがティケットに参加しても新たに有権者を引っ張ってくる力はほとんどなく、その上に有名な女性蔑視主義者で、妊娠中絶反対の急先鋒である。女性の票はさらに逃げる可能性が強い。
そんなバンスをなぜ副大統領候補に擬したかというと、もともとバンスはアンチ・トランプの論陣を張っていたが、途中で寝返ってトランパーのMAGA (make America great again)運動に熱中して、その結果オハイオ州選出の上院議員選挙でトランプのお墨付きをもらって当選した男である。上院議員になってからもトランプのフロリダの邸宅に日参してゴマをすりまくっていた男なのだ。
トランプはゴマをすられるのがうれしくて多くの欠点を持つバンスをあえて副大統領候補に選んだということらしい。
民主党の副大統領候補はメディアで名前が挙がっているが、すべて白人男性である。まだ決まっていない。

あと100日余の時点でのティケットの交代という異常事態

あと100日余の時点でのティケットの交代という異常事態で、先例もなく、おまけにトランプの暗殺未遂事件まで絡んで混沌の様相が深い。
しかし、ハリスの指名確実の報道は、各地で興奮でもって迎えられている。
今までどうしていいかわからなかった人々が突如現れた支持の対象としてのハリスに一斉に献金、無給の選挙員として名乗り出るなど、抑えられていたエネルギ―が一気に破裂しようとしているように見える。
後100日と短い時間なので、この熱気が冷めることはなく、ますます盛り上がる可能性が高いと思われる。
78歳の老齢のトランプに対して、ハリス陣営は、ハリスの検察官対トランプの有罪のフェロン(悪者)の図式で徹底的にトランプの悪を暴く姿勢のようだ。
これからのハリスに対する支持の広がりも見込まれ、ハリスが最終的に勝つ可能性が一気に高まったと思われる。
ハリスが偉大な大統領になるとは思わないが、トランプの当選を遮るくらいのことはできるのではないか。

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