来週の為替相場見通し:『ドル円相場の急伸リスクに要警戒。来週はFOMCと米大統領選に注目』(11/2朝)

ドル円は9/16に記録した年初来安値139.58をボトムに切り返すと、今週前半にかけて、約3カ月ぶり高値となる153.88(7/30以来の高値圏)まで上昇しました。

来週の為替相場見通し:『ドル円相場の急伸リスクに要警戒。来週はFOMCと米大統領選に注目』(11/2朝)

『ドル円相場の急伸リスクに要警戒。来週はFOMCと米大統領選に注目』

〇今週のドル円、本邦政局不透明感と日銀利上げ観測後退、「トランプトレード」に週明け153.88を記録
〇その後は、米指標不冴え、日銀・植田総裁のタカ派姿勢、週末の米雇用統計悪化等に一時152円割れ
〇ユーロドル、週初1.08割れの水準から、欧州指標好調、週末米雇用統計の不冴え等に一時1.09台回復
〇ドル円、主要テクニカルポイント上抜け、強い買いシグナルも成立、地合い強い
〇日米金利差縮小観測後退、米大統領選後のドル買い期待もドル円をサポート
〇来週は米大統領選、FOMCに注目集まる
〇米FOMCでの慎重スタンス継続+米大統領選でのトランプ氏勝利の組み合わせを想定
〇これまで同様、ドル買い・円売りトレンドの本格再開をメインシナリオとして予想
〇来週の予想レンジ(USDJPY):150.00ー158.00、(EURUSD):1.0500−1.1000

今週のレビュー(10/28−11/1)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初152.34で寄り付いた後、(1)週末に開催された衆院選で自民党と公明党を合算した議席数が過半数の233議席を下回る215議席に留まったことや、(2)上記1を背景とした日銀による追加利上げ観測の大幅後退(政局不透明感が高まる中、日銀が追加利上げに踏み切ることが一段と難しくなるとの見方が台頭→円キャリートレード活発化)、(3)日経平均株価の大幅上昇、(4)米大統領選でのトランプ氏優勢報道(トランプ・トレードの再開期待)が支援材料となり、週明け早々に、週間高値153.88(7/30以来の高値圏)まで上昇しました。

しかし、買い一巡後に伸び悩むと、(4)急ピッチな上昇に対する反動売り(利食い売り)や、(5)加藤財務相による「投機的動向含め為替市場動向を緊張感をさらに高め注視」との円安牽制発言、(6)米7ー9月期実質GDP速報値(結果+2.8%、予想+2.9%)の市場予想を下回る結果(7)日銀金融政策決定会合のタカ派的な内容(政策金利は0.25%で据え置かれるも、同時に公表された展望レポートで「引き続き政策金利を引き上げ金融緩和の度合いを調整していく」との記載あり)、

(8)植田日銀総裁によるタカ派的な記者会見(市場参加者に注目されていた「時間的余裕」という表現を一度も使用せず)、(9)上記7、8を背景とした日銀による年内追加利上げ観測再燃、(10)株式市場の大幅下落(リスク回避の円買い圧力)、(10)米10月非農業部門雇用者数(結果+1.2万人、予想+10.0万人)の市場予想を下回る結果が重石となり、週末にかけて、週間安値151.80まで下落しました。もっとも、売り一巡後に下げ渋ると、引けにかけて持ち直し、本稿執筆時点(日本時間11/2午前3時00分現在)では、152.90前後で推移しております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.0795で寄り付いた後、(1)ムーディーズによるフランス格付け見通しの下方修正(ムーディーズは10/25にフランスの格付けを「Aa2」で据え置きつつも、見通しを「安定的」から「ネガティブ」に下方修正)や、(2)中東情勢を巡る地政学的リスク(イスラエル軍は10/26にイラン国内の約20カ所の軍事施設にミサイル攻撃を断行)、(3)ECBによる根強い追加利下げ観測が重石となり、翌10/29にかけて、週間安値1.0768まで下落しました。

しかし、売り一巡後に下げ渋ると、(4)ドイツ11月GFK消費者信頼感指数(結果▲18.3、予想▲20.5)の市場予想を上回る結果や、(5)ユーロ圏7ー9月期GDP速報値(結果+0.9%、予想+0.8%)の市場予想を上回る結果、(6)ドイツ9月小売売上高(結果+1.2%、予想▲0.6%)の市場予想を上回る結果、(7)ユーロ圏10月HICP速報値(結果+2.0%、予想+1.9%)の市場予想を上回る結果、(8)ユーロ圏10月HICPコア速報値(結果+2.7%、予想+2.6%)の市場予想を上回る結果、(9)ユーロ圏9月失業率(結果6.3%、予想6.4%)の良好な結果、(10)欧州債利回り上昇に伴うユーロ買い圧力、

(11)米10月非農業部門雇用者数(結果+1.2万人、予想+10.0万人)の市場予想を下回る結果が支えとなり、週末にかけて、週間高値1.0905まで反発しました。もっとも、買い一巡後に伸び悩むと、引けにかけて反落し、本稿執筆時点(日本時間11/2午前3時00分現在)では、1.0840前後まで値を崩す動きとなっております。

来週の見通し(11/4−11/8)

<ドル円相場>
ドル円は9/16に記録した年初来安値139.58をボトムに切り返すと、今週前半にかけて、約3カ月ぶり高値となる153.88(7/30以来の高値圏)まで上昇しました。この間、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表転換線、基準線、雲上限、ボリンジャーミッドバンド)を軒並み上抜けした他、強い買いシグナルを示唆する「21日線と90日線のゴールデンクロス」「一目均衡表三役好転」「ダウ理論の上昇トレンド」も成立するなど、テクニカル的に見て、地合いは「極めて強い」と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)日銀による過度な利上げ期待の剥落(衆院選での与党大敗を受けて日銀による追加利上げは一段とやり辛くなったとの見方が優勢→国民民主党の玉木雄一郎代表も11/1に「春闘の動向を見極める必要があるため、来年3月までは利上げをすべきではない」と発言)や、(2)米FRBによる過度な利下げ期待の剥落(米経済のソフトランディング期待が高まる中、50bpの大幅利下げの必要性は後退。市場コンセンサスは11月FOMCで25bp利下げ実施、12月FOMCで更に25bp利下げ実施のシナリオ)、(3)上記1、2を背景とした円キャリートレードの再開期待(日米金利差はすぐには縮まらないとの見方から海外勢を中心にドル買い・円売りが再開する見通し)、(4)米大統領選後のドル買い期待(トランプ氏・ハリス氏のいずれが大統領になったとしても大幅減税+財政出動が公約となるため、米長期金利に上昇圧力が加わり易い)など、ドル円相場の上昇を連想させる材料が揃っています。

こうした中、来週は上記2を見極める目的で11/6ー11/7の日程で開催される米FOMCと、上記4を見極める目的で11/5に実施される米大統領選に注目が集まります。前者(米FOMC)については、週末に発表された米10月非農業部門雇用者数(NFP)が冴えない結果となったことで、25bpの追加利下げが完全に織り込まれる状況となっていますが、今回のNFP鈍化の背景には、ハリケーン被害やボーイングでのストライキの影響が含まれている可能性があるため、今回の数字を以って米国の労働市場が鈍化したとは言い難く、来週予定されている米FOMCやパウエルFRB議長記者会見が過度にハト派寄りとなる蓋然性は乏しいと考えられます(米FOMC後に米金利上昇→米ドル買いが強まる公算大)。

また、後者(米大統領選)については、トランプ氏・ハリス氏の両方が大幅減税+財政出動を公約に掲げているため、基本的には米長期金利上昇→米ドル買いの波及経路が想定されます(※接戦となる場合、勝敗の行方が週末あたりまで持ち越される恐れあり)。但し、為替マーケットはトランプ氏勝利(トリプルレッドを見越したトランプ・トレード=米債売り・米ドル買い)を非常に強く織り込んでいるため、ハリス氏に決まる場合は、トランプ・トレードの逆流(米債買い・米ドル売り)を通じて、一時的にドル円が強い下押し圧力に晒されそうです(一巡後は上記理由で再び持ち直す公算大)。尚、当方は米FOMCでの慎重スタンス継続(ハト派色を過度に見せないバランスの取れた見解)+米大統領選でのトランプ氏勝利の組み合わせを想定しているため、これまで同様、ドル買い・円売りトレンドの本格再開をメインシナリオとして予想いたします。

来週の予想レンジ(USDJPY):150.00ー158.00

<ユーロドル相場>
ユーロドル相場は9/25に記録した年初来高値1.1214をトップに反落に転じると、10/23に一時1.0760(7/3以来の安値圏)まで下げ幅を広げましたが、今週は一転、週を通して持ち直す動きとなりました。但し、日足ローソク足が主要テクニカルポイント(21日線、50日線、90日線、200日線、一目均衡表基準線、雲下限、ボリンジャーミッドバンド)の下側で推移していることや、強い売りシグナルを示唆する「21日線と90日線のデッドクロス」「一目均衡表三役逆転」「ダウ理論の下落トレンド」が成立していること等を踏まえると、テクニカル的に見て、地合いは「極めて弱い」と判断できます。

また、ファンダメンタルズ的に見ても、(1)欧州経済の先行き不透明感や、(2)次回ECB理事会での大幅利下げ観測(来月予定されているECB理事会で50bpの大幅利下げに踏み切るとの警戒感)、(3)米FRBによる過度な利下げ期待の後退、(4)上記2、3を背景とした欧米金融政策の方向性の違い、(5)米大統領選後のドル高懸念(トランプ氏・ハリス氏のいずれに決まっても米金利上昇→米ドル買いの波及経路)、(6)米大統領選後の地政学的リスク(トランプ氏が米大統領選に勝利する場合は、ウクライナや中東を巡る地政学的リスクが急速に高まる恐れあり)など、ユーロドル相場の下落を連想させる材料が揃っています。以上を踏まえ、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします。尚、来週はユーロ圏9月生産者物価指数や、ユーロ圏9月小売売上高などが予定されておりますが、市場を動かすドライバーは米大統領選を巡る各種ヘッドラインとなりそうです。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.0500−1.1000

注:ポイント要約は編集部

『ドル円相場の急伸リスクに要警戒。来週はFOMCと米大統領選に注目』

ドル円日足

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