米国大統領選挙について(3)(2020年6月23日)

トランプ大統領の支持率が悪化している。 コロナウィルス、リセッション、黒人虐待反対デモの3重苦である。

米国大統領選挙について(3)(2020年6月23日)

米国大統領選挙について(3)

ガラガラの選挙ラリー

トランプ大統領の支持率が悪化している。
コロナウィルス、リセッション、黒人虐待反対デモの3重苦である。

コロナウィルスについては、すでにトランプは完全に興味をなくしている。
死者が全米で10万人を超えたとき(現在12万人)も公に弔意を示すことがなくホワイトハウスの対策本部もほとんど名前だけになってしまった。5月に各州にロックダウンを解除することを推奨した際に、経済をとるか、コロナウィルス感染拡大防止策をとるかの選択で、感染死の増加は不可避と見たのであろう。それまでの戦時大統領を気取る姿勢を一擲して、景気重視の路線をとった。その結果その1カ月半後の今日ロックダウン解除が速すぎた州で、感染者の急速な増加に見舞われている。その結果トランプはこの問題に対する興味を失い、まったくやる気を見せていない。まだ12万人の死者が毎日500-1000人ずつ増加しているのに、この問題は放り出して、自分の再選だけが現在の彼の興味の対象である。

米国のウィルス対策は結果を見れば明らかに失敗であった。
全世界の25%を占める感染者、死者数を記録しながら、今でも毎日2万-3万人の新規感染者を出し続けている。ホワイトハウスの介入による中途半端なロックダウンの結果、これからは感染者の増加と、景気の悪化の2重苦になりそうだ。
勿論人種差別反対デモについては、トランプの支持者が基本的に白人の人種差別主義者たちなのでこれに対する対処も全く不十分どころか、そうした大きな国民運動を拒否する姿勢を明らかにしている。
そうした中でトランプの支持率は低下しつつある。

数百種類に及ぶPOLL 人気投票の中には、大きくバイアスがかかっているものもあるので、それらのPOLLの過去の実績、手法の妥当性等のふるいにかけ、それを更に過去のバイアスもアルゴリズムで処理して出してくる、ウェブサイトFIVE THIRTY EIGHT(538人は大統領選挙の選挙人の総数−過半数の270人をとると大統領に当選する)を筆者は重視している。
その中で大統領のapproval Rating (信認率)は直近でApprove 41.1% Disapprove 55.2%でマイナスの14.1%まで支持率が落ちている。
コロナ禍が激化する前の3月この支持率はマイナス8%程度であったので、トランプの人気剥落は顕著である。
トランプ支持者の圧倒的な支持を集めるFOX NEWSの直近のPOLLでも大統領候補のバイデン50%、トランプ38%と相当大きく差を開けられている。一時CNN(リベラル系のケーブルテレビ)がバイデン14%リードとPOLLの結果を発表して、トランプ・キャンペインがフェイクニュースだと声明を出したが、味方のはずのFOXの数字もあまり違わないので、フェイクニュースだと否定するのは難しいだろう。

何より人気剥落を印象づけたのは、3月以降初めての選挙ラリーであるオクラホマ州のタルサで6月20日に行われた選挙ラリーである。3カ月のインタバルを置いて満を持して、トランプが登場するというので、全米の注目を集めた。
もともとオクラホマ州も急激にコロナ感染者が増えつつあり、そのような場所の19000人収容のアリーナで室内ラリーを行うことは、まさにトランプがコロナ感染についての配慮を全くしていないことの証明であるが、ほとんどのエキスパートの反対を押し切って、これを強行した。事前にトランプは自分のラリーは何時も超満員で、今回も4万には来るだろうと豪語していた。室内だけでは間に合わないので、追加で屋外ステージをも用意して、そこでも大統領、副大統領が話をすることになっていた。

ラリーの実況放送は最初FOXを見ていたが、やたらにトランプのアップが多く背景のパンが狭い感じがした。CNNに切り替えると、1階はそこそこ入っているが、2階以上がガラガラで青い席にぽつぽつと人が座っているだけである。トランプの話の内容は全くなく、いつものつまらない、下品な話の連続である。自分が再選されたら何をするという政策の話は皆無で、ひたすらリベラル批判である。
超満員にするはずのアリーナに観客はNYタイムズによると6400人、主催者側の発表で1万2千人であった。そのガラガラの会場の様子が全米に放送され、得意のフェイクニュースの口実も使えず、今回のラリーは致命的な失敗であったという専門家もいる。
何より前評判を煽りながら、ガラガラの会場というのは、トランプの凋落ぶりをビジュアルに見せつけた決定的な場面であった。
選挙まであと135日でこのダメージを取り返すことができるか。もちろん可能性はあるが、まず難しいだろう。

滔々たるリベラルの流れ

米国の政治経済思潮が40年を節目に流れを変えるというのが筆者の説で、1980年のレーガン革命から始まったレーガノミクスによる新自由主義的な政治経済思潮は40年経過した2020年から流れが変わり、保守有利からリベラル有利に転換すると申し上げてきた。
したがって、2020年の選挙では民主党が大統領を勝ち得る。トランプ1期だけの大統領になると主張してきた。
この2020年に入って明らかに世の中の流れが変わりつつある。

きっかけはミネアポリスの警官による黒人殺害事件である。5月25日のこの事件は、全米150都市で大規模なデモ活動を呼び起こした。コロナウィルスでの死者の比率が圧倒的に黒人が高いということで、医療その他の社会インフラが黒人に不利に作用しているという批判があったところに、白人警官による黒人虐待から殺害が報道され一気に警官によるマイノリティー虐待に対する批判と、人種差別の是正を求める声が高まった。
この全国デモで注目されるのは、デモの参加者に白人が多くみられることである。
ワシントンのデモで64%は白人、NYでも62%は白人、といつもの人種差別デモが黒人中心であったのと大分趣を異にしている。
SILENCE IS Racism というスローガンで、白人がこの問題で黙っていること自体が、人種差別主義であるという流れになっている。トランプ大統領になって勢いを増した白人至上主義者に対する反作用である。
このデモの流れがいつまで続くかわからないが、この高まりはやはり40年ごとの思潮変化の動きと解するのが正しく、今から始まる大きな社会改革の原動力になると考えるべきだろう。

驚きの最高裁判決

この2週間の間に重要な最高裁の判決が下された。
中でも一番世の中を驚かせたのは、職場でのLGBT差別禁止をアップルホールド(下級審判決を支持する)する決定を下したが、その内容が、賛成6、反対3と大きくリベラルに偏った判決になった。
米穀最高裁の判事は9人で4人はリベラル系、あとの5人は保守系(そのうちの一人はロバーツ最高裁長官)でどちらかといえばリベラル不利といわれていたが、保守派でトランプに指名されたゴーサッチ判事と、長官ロバーツが賛成に回り、このLGBTが正式に世間に認められることになった。判決を聞いてトランプがゴーサッチ判事を裏切り者と酷評したと伝えられる。
又ロバーツ長官は、最高裁が余り党派的になるのは望まず、今までもリベラルに加担して判決を下すことがみられた。

もう一つの判決は5対4で採決された、移民の子供で国籍を持たないDREAMERと呼ばれる人たち(70万人)が、国外退去を求められないというオバマ政権時の措置DACAを2年間延長することを認めた判決である。
これはリベラル派4人に長官ロバーツが加わって、このリベラル判決が通った。

いずれもリベラル陣営が苦戦を予想していたもので、この判決を見ても、政府の司法ブランチがリベラルに傾き始めていることは明らかである。やはり40年たったうえでの思潮変化ということだろう。
だとすると2060年までの40年間米国の支配原理がリベラルに大きく傾斜することになり、日本の政治家も今までの共和党だよりから、民主党との人脈づくりに励んだほうがよさそうだ。
この滔々たる流れは2020年の選挙を超える、あるいはそれを嚆矢として始まる大きな流れである。もちろん選挙ではバイデンが勝利するだろう。

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