ECB理事会 結果のポイント: 利下げ時期不透明でユーロはトレンドレスの地合いか
【今回のポイント】
〇 政策金利は過去最高の4.5%を据え置き
〇 ラガルドECB総裁は「利下げに関する議論は時期尚早」
〇 市場は6月利下げ織り込むも、ECB理事会見解とは乖離しておりユーロはトレンドレス
【ECB理事会の結果】
2024年最初の欧州中央銀行(ECB)理事会は、主要政策金利の据え置き(4.50%)を発表した。ラガルドECB総裁の記者会見では、金融緩和を検討し始めていることは示唆せず、インフレ対策へのコミットメントを改めて確認した。
ECB声明で「現在の評価に基づき、理事会は3つの主要な政策金利が、これが十分に長い期間続けば、インフレ率が目標達成に重要な貢献をする水準にあると考えている」「理事会の将来の決定について、政策金利が必要とされる期間にわたり十分に制限的な水準に設定されるよう保証する」と、確実にインフレ率を速やかに中期的に2%という目標に戻す決意を発した。
ECB声明後に行われた記者会見では、ラガルドECB総裁に対して、ダボス会議で「夏の利下げの可能性」に言及したことから、利下げの時期に関する質問が多かった。
ラガルド総裁は、「利下げ議論は時期尚早」というのが理事会のコンセンサスで、「データの動向を見つつ、会合毎に決定するという原則は不変である」との見解を強調した。また、夏の利下げは否定しなかったが、フォワードガイダンスではないと念押ししている。
賃金データについては、「今後数か月で多くの情報が得られる」ことに言及した一方、「新しいスタッフ見通しが手に入るのは6月頃か?」という質問に対して、時期に対する明言は回避し、「それまでは情報が十分にそろわない」ことを示唆し、早期の利下げをけん制した。
一方、「ユーロ圏では実際のインフレ率が大きく低下しており、ECBも、直近12月のインフレデータが予想よりも弱かった」と評価。また、「エネルギー価格がカギ」「先物価格を前提にすれば、物価が下振れるリスクがある」とも言及した。
利下げに関する「時期尚早」の意味を問う質問に対しては、「これ以上、詳細に述べるつもりはない」「言えることは、理事会では利下げ議論が時期尚早であるとのコンセンサスがあった」という範囲にとどめた。
【市場の反応】
為替市場では、ラガルドECB総裁の早期利下げ観測けん制にも関わらず、夏前の利下げを織り込む動きから、ユーロは対円で160円後半から159円台と1週間ぶりの150円台に、対ドルでは1.09ドル台から一時1.0813と1か月半ぶりの水準まで下落した。
ただ、26日の為替市場では、ユーロは下げ渋っており、ユーロ売りの動きはさほど強まっていない。
【今後、ユーロはどう動く?】
ECB理事会およびラガルドECB総裁の記者会見の見解「利下げの検討は時期尚早」と、金利先物市場の見通しは「6月会合での利下げを織り込む」と乖離している。
ただ、米連邦準備制度理事会(FRB)の2024年見通し(年3回利下げ(0.75%))に対して、金利先物市場は「2024年6回程度の利下げを織り込む(1.5%)」と、こちらも乖離しており、金利先物市場の見通しは「参考程度」と捉えておいた方がいいと考える。
ECB理事会後のユーロはやや売られる動きが見られたが、短期的な動きに留まっている。ユーロ利下げのタイミングが明確にならなければ、短期的な売買は入ったとしても、積極的なポジション取りは回避されよう。ユーロだけではなく、ドル、円もこの数か月で利下げもしくはマイナス金利の解除に動く公算が大きいことから、ユーロだけではなく、主要な通貨はトレンドレスの地合いを想定する。
3月会合までのユーロは、対円で157円台から161円台、対ドルでは1.07ドルから1.10ドルの狭いレンジでの推移を想定する。
なお、今週30−31日に、米連邦公開市場委員会(FOMC)開催を控えている。為替市場では様子見ムードが強まっているが、今FOMCではドットチャートの発表は無いことから、見どころはパウエルFRB議長の発言ぐらいか。
【2024年スケジュール】
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オーダー/ポジション状況
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