日銀会合 結果のポイント:円はゴルディロックス相場入りを迎えた可能性も(24/1/29)

大規模な金融緩和策の維持を全員一致で決めたほか、金融政策のフォワードガイダンス(先行き指針)も変更せず、先行きの政策修正は示唆されなかった。

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日銀会合 結果のポイント:円はゴルディロックス相場入りを迎えた可能性も(24/1/29)

日銀会合 結果のポイント:円はゴルディロックス相場入りを迎えた可能性も

【今回のポイント】

〇 金融政策の現状維持を全員一致で決定
〇 植田総裁、展望リポート記載の「物価目標実現の確度、引き続き少しずつ高まっている」を複数回発言
〇 記者会見中、146円台に入るも瞬間的な動きに留まり、円は147円台での推移

【日銀会合の結果】

今回、日銀金融政策決定会合(日銀会合)の内容が公表されたのは、ランチタイムの12時9分頃だった。

大規模な金融緩和策の維持を全員一致で決めたほか、金融政策のフォワードガイダンス(先行き指針)も変更せず、先行きの政策修正は示唆されなかった。マイナス金利政策の解除は見送り、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール(YCC))や、上場投資信託(ETF)買い入れといった措置も現状のままとした。

15時30分からの植田和男日銀総裁の記者会見での主なコメントは下記の通りである。

「わが国の景気は緩やかに回復している」
「物価目標実現の確度、引き続き少しずつ高まっている」
「賃金と物価の好循環強まるか確認していく」
「現時点で大きな不連続性が発生する政策運営は避けられる」
「確度向上の根拠、コアコアCPI再点検で同じ数字だった」
「被災地の製造業がサプライチェーンに与える影響、観光業や消費者信頼感などを注視」
「昨年同時期よりも早めに賃上げ決めた企業多い」
「今後のポイントは賃金からサービス価格への転嫁」
「3月に比べて4月はより情報量が増えることは言うまでもない」
「実質賃金が近い将来にプラスに転じる見通しあれば政策正常化妨げず」
「すべての中小企業の賃金上がらないと政策判断できないことではない」
「米経済、ソフトランディング期待が高まっている」
「ETF購入、目標達成が見通せる段階で維持が適切なのか検討」
「マイナス金利解除後の緩和環境の長さは申し上げられない」

【市場の反応】

結果内容は、事前報道通りの内容だったものの、「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」にて、「先行きの不確実性はなお高いものの、こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている。」と明記した。そして、15時30分からの植田日銀総裁の記者会見において、植田総裁が、この発言を複数回繰り返していたほか、「3月会合に向けては賃金、経済、物価関係のデータがある程度出てくる」とも発言した。

一方「長期金利コントロールの枠組みをマイナス金利解除後もある程度残すつもり」とも発言しており、金融緩和政策の基本的な枠組み維持の可能性も示唆した。

植田日銀総裁の記者会見中、円は買われ、15時40分ごろ、一時146円台を付ける場面も見られた。ただ、円高の動きは限定的で、記者会見後の海外時間では、ドルは147円台、ユーロは160円台で推移した。

【今後、円はどう動く?】

今回の記者会見では、植田日銀総裁が慎重に言葉を選びながらも自分の言葉で表現している姿が印象に残った。

市場は、3月会合での「金融政策の正常化」に動きだす可能性を指摘しているが、中小企業の賃金引上げの状況や消費者物価指数など様々なデータを見た状況で判断することから、4月がタイミングの本命だろう。

どちらにしても春頃には、「金融政策の正常化」に動き出す確度は高まったのは間違いなさそうだ。

ただ、あくまでも「長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)」の「短期金利」をマイナスからゼロ(推測)にするのが春頃であって、日銀が行っている金融政策の下記の項目の対応検討及び終了への道程作成はこれからだ。

(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)

@次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針
短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に−0.1%のマイナス金利を適用する(これが春頃)
長期金利:10 年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。

A長短金利操作の運用
長期金利の上限は 1.0%を目途とし、上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。

(2)資産買入れ方針

長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。

@ ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。

A CP等は、約2兆円の残高を維持する。社債等は、感染症拡大前と同程度のペースで買入れを行い、買入れ残高を感染症拡大前の水準(約3兆円)へと徐々に戻していく。ただし、社債等の買入れ残高の調整は、社債の発行環境に十分配慮して進めることとする。


「以上、日銀発表資料から抜粋」

金利のある生活は着実に近づいているが、市中金利が上昇するタイミングは不明だし、「金融政策の正常化」を迎えるタイミングもだいぶ先だろう。

植田日銀総裁の記者会見では、「金融緩和政策の基本的な枠組み維持の可能性」を示唆したことから、ここ2年ほどで日銀以外の各国中銀が行ったような「毎会合ごとの利上げ」は想定しにくい。

「日本の金利が急上昇することは無い」を軸とすれば、欧米中銀の利下げのタイミングおよびスピード次第ではあるが、短期的には1ドル140円割れや1ユーロ150円割れといったスピード感を伴った円高局面は考えにくい。そもそも、市場は、今年春頃に日銀が行動を起こすことをほぼ織り込んでいる。

さすがに「円キャリートレード」加速は想定しにくいが、中長期的には、1ドル140円台や1ユーロ150円台といった、「円のゴルディロックス相場(適温相場)」となる可能性はある。

ボラティリティが低下しトレードチャンスが乏しくなり投資家にとっては面白みがない相場となるが、企業や日銀、財務省幹部は一安心の地合いとなるかも。

【2023年以降の日銀会合終了時間一覧】

以下は、2023年以降の日銀会合の終了時間一覧である。なお、速報が市場に伝わるのは、終了してから7分ほど経過してからだ。

日銀会合 結果のポイント:円はゴルディロックス相場入りを迎えた可能性も

【2024年】
1月23日(火)・・・12時02分終了、前回会合の方針を維持

【2024年スケジュール】

※米国は現地時間なので、金利発表及び記者会見は日本時間で翌日未明

日銀金融政策決定会合(日銀会合)
1月22日−23日(経済・物価情勢の展望)・・・現状の金融政策を維持
3月18日−19日
4月25日−26日(経済・物価情勢の展望)
6月13日−14日
7月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
9月19日−20日
10月30日−31日(経済・物価情勢の展望)
12月18日−19日

米連邦公開市場委員会(FOMC)
1月30日−31日
3月19日−20日
4月30日−5月1日
6月11日−12日
7月30日−31日
9月17日−18日
11月 6日− 7日
12月17日−18日

欧州中央銀行理事会(ECB理事会)
1月25日・・・現状の金融政策を維持、利下げの議論は時期尚早
3月 7日
4月11日
6月 6日
7月18日
9月12日
10月17日
12月12日

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