ドル円見通し FOMC後もドル安基調は継続(20/12/17)

FOMC声明発表直後の一時的なドル高反応時に103.91円まで戻したものの早々に失速して17日早朝には103.39円まで下落した。

ドル円見通し FOMC後もドル安基調は継続(20/12/17)

FOMC後もドル安基調は継続

〇ドル円、16日夜に103.26まで下落、FOMC声明発表後に103.91まで戻すも17日早朝に103.39まで下落
〇NYダウは前日比44.77ドル安と小幅下落、ナスダック総合指数は63.13と終値ベースの史上最高値を更新
〇FOMCでゼロ金利政策と量的緩和政策の維持を決定し長期的な買い入れを行う姿勢を示した
〇103.91を超えないうちは一段安余地あり、103.26割れから103.20、102円台中盤を目指す流れ
〇103.65超えから103.91試しとするが更新できないうちは103.50割れから下げ再開とみる

【概況】

ドル円は12月16日夜に103.26円まで下落して12月14日深夜安値103.51円を割り込んだ。11月6日安値103.17円割れはひとまず回避してFOMC前の買い戻しに入り、FOMC声明発表直後の一時的なドル高反応時に103.91円まで戻したものの早々に失速して17日早朝には103.39円まで下落した。新たな安値更新へは進んでいないものの安値圏に留まった状況にある。
FOMCは金融政策を現状維持とし、会合参加者の景気見通しを若干上方修正し、量的緩和政策の長期化を示唆したものの量的緩和規模拡大等のサプライズはなかったため、発表直後はいったんドルが買い戻されてドル円も反騰した。しかし長期的なゼロ金利と量的緩和の長期化による過剰流動性供給は続くとして早々にドル安に回帰した印象だ。

12月16日のNYダウは前日比44.77ドル安と小幅下落、ナスダック総合指数は63.13ポイント高と上昇して終値ベースの史上最高値を更新した。米小売売上高が予想を下回ったことがダウの上値を抑えた印象だがナスダックを先導役に米国株高基調は継続している。
米商務省が発表した11月の小売売上高は前月比1.1%減で市場予想の0.3%減を下回り、自動車を除くと前月比0.9%減で市場予想の0.1%増を下回った。IHSマークイットが発表した12月の製造業PMI速報値は56.5となり市場予想の55.7を上回ったが、サービス業PMI速報値は55.3で市場予想の55.9を下回った。

【FOMC、サプライズ無しだがドル資金供給過剰は続く】

米連邦準備制度理事会(FRB)は12月16日の連邦公開市場委員会(FOMC=金融政策決定会合)でゼロ金利政策と量的緩和政策の維持を決定した。市場に若干期待のあった量的緩和の規模拡大は見送られたものの、「雇用最大化と物価安定の目標に向けて著しく前進するまで現行ペースで増やす」として前回の「今後数カ月間は現行ペースで増やす」との表現を変えてより長期的な買い入れを行う姿勢を示した。
会合参加者による政策金利見通しの中央値ではゼロ金利が少なくとも2023年末まで続くとの見通しを前回同様に維持したが、2023年末までの利上げを予想する参加者が17人中5人となり9月会合から1人増えた。
成長率見通しは2020年をマイナス2.4%、2021年を4.2%として、9月会合時にそれぞれマイナス3.7%、4.0%としたところからやや上方修正した。失業率の見通しでは2023年が3.7%で前回会合の4.0%から上方修正した。インフレ見通しは政策目標の2.0%にはしばらく届かない見通しのままとした。

【FOMCを通過してもドル安基調は継続】

メジャー通貨の加重平均であるドル指数は16日に90.13まで下げて3月天井以降の安値を更新している。
ユーロドルは12月16日夕高値で1.2211ドルを付けて3月コロナショック暴落以降の高値を更新していたが、FOMC声明発表直後に一時的に1.2124ドルまで反落したものの切り返して高値更新に迫る水準となっている。
ポンド/ドルは英国とEUのFTA交渉が難航しているものの合意への期待がやや優勢となって16日夜には1.3552ドルを付けて3月暴落以降の高値を更新し、その後はやや下げているものの1.340ドル台後半を維持している。

豪ドル米ドルも16日夕刻に0.7578ドルまで上昇して3月以降の高値を更新し、FOMCでいったん下げてから切り返して高値更新に迫っている。南アランド、メキシコペソの対ドルでの上昇基調も継続している。
FOMCの量的緩和政策の長期継続はドル資金の供給過剰をもたらし、投機マネーと化して株式市場を買い支えると共に為替市場でも投機通貨買いを助長する。ドル円にとっても短期的なブレで上昇する局面があっても流れとしては3月以降のドル安円高基調の範囲での推移が続きやすいという印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、14日夜安値で底を付けていったん戻しに入ったが、15日夜の反落により16日朝時点では15日午後高値でピークを付けて下落期に入ったとした。また底割れの場合は17日夜から21日夜にかけての間への下落を想定するとし、強気転換には104円台回復まで反騰する必要があるとした。
17日未明の一時的な反騰では104円に届かずに失速しているのでまだ15日午後高値を起点とした下落基調の継続とし、強気転換は17日未明高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では17日未明の一時的な反騰では先行スパンを突破しきれずに失速し、遅行スパンも悪化のままとなっているので遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、強気転換は両スパンそろって好転するところからとする。
60分足の相対力指数は17日未明への上昇で50ポイントをいったん超えたが再び割り込んでいるのでまだ一段安余地ありとし、強気回復には50ポイント超えから続伸するような反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月16日夜安値103.26円及び11月6日安値103.17円を下値支持線、17日未明高値103.91円を上値抵抗線とする。
(2)17日未明高値を超えないうちは一段安余地ありとし、16日夜安値割れから11月6日安値割れへと進み102円台中盤を目指す流れと考える。103円割れではいったん買い戻しも入りやすいとみるが、103円以下での推移が続く場合は週明けもさらに一段安へ進みやすいとみる。
(3)103.65円超えからは17日未明高値試しとするが、高値更新できないうちはその後の103.50円割れから下げ再開とみる。ただし17日未明高値を上抜き返す場合は10日夕からの下落一巡によるリバウンド入りとして104円台序盤(104.00円から104.25円)を目指すとみるが、そこは戻り売りにつかまりやすいとみる。

【当面の主な予定】

12/17(木)
日銀・金融政策決定会合 初日
09:30 (豪) 11月 新規雇用者数 (10月 17.88万人、予想 5.00万人)
09:30 (豪) 11月 失業率 (10月 7.0%、予想 7.0%)
17:30 (ス) スイス国立銀行 政策金利 (現行 -0.75%、予想 -0.75%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 -0.3%)
19:00 (欧) 11月 消費者物価コア指数改定値 前年同月比 (速報 0.2%)
21:00 (英) イングランド銀行(BOE)金利発表 (現行 0.10%、予想 0.10%)
21:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 8950億ポンド、予想 8950億ポンド)
21:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨

22:30 (米) 週間 新規失業保険申請件数 (前週 85.3万件、予想 80.0万件
22:30 (米) 週間 失業保険継続受給者数 (前週 575.7万人、予想 559.8万人)
22:30 (米) 11月 住宅着工件数・年率換算件数 (10月 153.0万件、予想 153.0万件)
22:30 (米) 11月 住宅着工件数 前月比 (10月 4.9%、予想 0.3%)
22:30 (米) 11月 建設許可件数・年率換算件数 (10月 154.5万件、予想 155.0万件)
22:30 (米) 11月 建設許可件数 前月比 (10月 0.0%、予想 1.0%)
22:30 (米) 12月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (11月 26.3、予想 20.0)
28:00 (メ) メキシコ中銀、政策金利 (現行 4.25%、予想 4.25%)

12/18(金)
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利発表 (現行 -0.10%)
06:45 (NZ) 11月 貿易収支 (10月 -5.01億NZドル、予想 2.55億NZドル)
08:30 (日) 11月 全国消費者物価指数 前年同月比 (10月 -0.4%、予想 -0.8%)
08:30 (日) 11月 全国消費者物価指数・生鮮食料品除く 前年同月比 (10月 -0.7%、予想 -0.9%)
08:30 (日) 11月 全国消費者物価指数・生鮮食料品・エネルギー除く 前年同月比 (10月 -0.2%、予想 -0.3%)
09:00 (NZ) 12月 NBNZ企業信頼感 (11月 -15.6)
09:01 (英) 12月 GFK消費者信頼感 (11月 -33)

15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見
16:00 (独) 11月 生産者物価指数 前月比 (10月 0.1%、予想 0.1%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前月比 (10月 1.3%、予想 -4.0%)
16:00 (英) 11月 小売売上高・除自動車 前年同月比 (10月 7.8%、予想 4.1%)
16:00 (英) 11月 小売売上高 前月比 (10月 1.2%、予想 -4.2%)
16:00 (英) 11月 小売売上高 前年同月比 (10月 5.8%、予想 2.3%)
18:00 (欧) 10月 経常収支・季調済 (9月 252億ユーロ)
18:00 (欧) 10月 経常収支・季調前 (9月 335億ユーロ)
18:00 (独) 12月 IFO企業景況感指数 (11月 90.7、予想 90.0)
22:30 (米) 7-9月期 経常収支 (4-6月 -1705億ドル、予想 -1900億ドル)
24:00 (米) 11月 景気先行指数 前月比 (10月 0.7%、予想 0.4%)

注:ポイント要約は編集部

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