トルコリラ円見通し トルコ中銀の利上げによる上昇幅を解消する反落
〇トルコリラ円、11/23夜13.00まで急落、深夜以降は13.20台までやや戻し小康状態
〇対ドル、11/23夕刻の下落で中銀利上げ前の水準を割り込む、深夜7.94リラまで安値を切り下げる
〇11/23夜のリラ急落、米11月PMIが強い数字だったことによるドル全面高の影響か
〇トルコ中銀の政策金利利上げを好感したリラ買い戻し、長続きせず
〇感染拡大第二波により行動制限発表、観光客数も観光シーズンにも伸びず
〇13.40以下での推移中は一段安余地あり、13.00割れからは12.75前後への下落を想定
〇13.30から13.40にかけては戻り売りにつかまりやすく、上昇再開感強めるには大幅な反騰が必要とみる
【概況】
トルコリラ円は11月19日夜のトルコ中銀による大幅利上げを好感して直前安値13.30円から13.825円まで上昇、11月13日夕高値13.829円とほぼ同値を付けたが、その後は利上げ好感による買い一巡となり20日深夜には13.44円まで下落、23日朝の取引再開時にも13.45円まで下げて19日夜の急騰幅の半値以上を解消していたが、23日夕刻に23日朝安値を割り込んでからは下げ足が早まり、23日夜に米11月PMIが強い数字だったことでドル高へ進むと対ドルでのリラ安が進み、ドル円での円安による下支えも効かずに13.00円まで急落して19日に中銀利上げにより反騰する直前の水準を割り込む一段安となった。
対ドルでのトルコリラも11月19日夜に7.48リラまで高値を更新したが、20日深夜には7.69リラまで反落して19日の利上げによる急騰直前の水準に迫るところとなり、23日夕刻の下落で中銀利上げ前の水準を割り込み、23日深夜のドル全面高となったところでは7.94リラまで安値を切り下げて11月11日以来の安値水準となった。
23日深夜以降は対ドルでのリラ安一服、ドル円の上昇継続によりトルコリラ円も13.20円台までやや戻して小康状態となっている。
【トルコ中銀新総裁の大幅利上げを好感したリラの買い戻しは長続きしなかった】
トルコ中銀はアーバル新総裁のもとで初めて開催された11月19日の金融政策決定会合において政策金利の週間レポレートを現行の10.25%から市場予想通りの15.0%へ引き上げた。翌日物借入金利も8.75%から13.50%に引き上げ、翌日物貸出金利も11.75%から16.50%に引き上げた。中銀は声明で「政策委員会はインフレ見通しへのリスクを取り除きインフレ期待を抑制し、インフレ低下プロセスを再開させるため、透明で強力な金融引き締めを実施することを決めた」と説明した。
エルドアン大統領はイスタンブールでの財界関係者への演説で19日の利上げについては「インフレを抑制するために必要な苦い薬だ」と「我々は今の段階で必要な多少の苦い薬を飲まなければならないと感じている」とし「我々の真の目標はまずインフレ率をできる限り早期に1桁に下げた上で、その後に中期目標水準に下げ、それに伴い金利を低下させることだ」と述べた。また国内投資家に対して景気拡大を促すために、海外にある貯金やたんす預金を国内経済に戻すべきだとした。
インフレ進行とリラ暴落により大統領も渋々利上げに賛同したということだろう。コロナ不況が落ち着き、トルコ経済が上向いてリラが安定し、通貨安によるインフレが抑制されれば大統領の望む利下げ余地も出てくるかもしれないが、世界的なパンデミックの拡大は収まらず、トルコにとって重要な観光収入の激減も改善しないと、リラ防衛での市場介入で大幅に減少しているであろう正味の外貨準備高も枯渇して一段とリラを取り巻く情勢が厳しくなる可能性もあるところだ。次回のトルコ中銀金融政策決定会合は12月24日に予定されている。
トルコ中央銀行のオズバシュ副総裁は23日に「今回の金融引き締めはインフレ率が恒常的に低下するまで断固として維持される。これによりトルコリラに対する信頼感は増大すると予想している」と述べたが、23日夜のリラ安をみると、市場はさらに一段とリラ防衛姿勢を強めること、国内景気の改善を求めているようだ。
【トルコの感染拡大第二波、観光客数伸びず】
エルドアン大統領は11月22日の公正発展党(AKP)の第7回県会議において、「国民は清潔・マスク・距離のルールと、この新型コロナウイルス感染拡大防止対策を、細心の注意を払って守れば、数週間のうちに感染状況のグラフが下方向に向かうことに成功するだろう。そうならない場合は、制限の継続さらには追加措置を取るという状況に直面する可能性もある」と述べた。
感染拡大の第二波に入ったトルコは11月18日に週末夜の外出制限、年末までの学校遠隔授業、商業施設の営業時間制限、スポーツイベントの無観客、映画館の閉鎖、レストランはデリバリーのみとする行動制限を発表している。
世界の感染者累計は5948万人、米国は1276万人、インドが917万人、ブラジルが608万人、フランスが214万人、ロシアが211万人等、ピークが見えない爆発的な状況が続いている。トルコは11月23日時点で世界25番目の45.3万人だが、前日比では21日に5532人、22日に6017人増、23日も6713人増となり第一波のピークであった4月11日の5138人を超えた。
7月に週末ロックダウンが解除され観光客の入国規制も緩和されてきたが、行動規制を緩めれば感染が再び拡大して第一波を超えるというのが世界全体での傾向であり、9月まではかなり抑制に成功してきたトルコも11月に入ってからは急増している。夏場に弱まるウイルスは冬には気温と湿度の低下で強さが増すために夏場までの防御レベルでは抑制しきれなくなるということを日本でも痛感するところだが、トルコも経済活動の継続と感染抑制のジレンマに陥っている。
トルコ文化観光省が発表した10月の観光客入国数は174万2303人で2019年10月の429万1574人に対して59.40%減となった。コロナ感染拡大により4月に99.26%減となってからは5月の99.26%減、6月の95.96%減、7月の85.9%減、8月の71.23%減と続き、9月が59.40%減となってきたが、欧州の感染爆発の継続により観光客の入国数は全く伸びない状況だ。トルコの観光シーズンは6月から10月までが最盛期であり、経常赤字国のトルコにとっては最も稼ぎ時となるところだったが残念な結果となっている。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月19日夜の中銀利上げからの反騰により、利上げ直前の19日夕安値を直近のサイクルボトムとして反騰入りしたが、13日夕高値と19日夜高値でダブルトップ型を形成して反騰幅の半値以上を削って下落期に入り、23日の一段安により弱気サイクル入りとなった。安値形成期は24日夕から26日夕にかけての間とし、13.50円を超えないうちは一段安へ進む可能性があるとみる。
60分足の一目均衡表では20日深夜の反落で両スパンそろって悪化し、23日の一段安により両スパン揃っての悪化が続いている。新たな安値更新を回避して推移すれば24日夜にかけて遅行スパンが好転しやすくなるが、先行スパンを超えないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後に悪化するところから下げ再開とみる。
60分足の相対力指数は23日夜の下落で20ポイント台序盤へ低下したが、相場が安値を更新する際に指数のボトムが切り上がる強気逆行等は見られないためまだ一段安余地が残る。上昇再開には50ポイント超えから続伸するような反騰が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、11月23日深夜安値13.00円を下値支持線、13.40円を上値抵抗線とする。
(2)13.40円以下での推移中は一段安余地ありとし、13.00円割れからは12.75円前後への下落を想定する。12.75円以下は反騰注意とするが、13.40円以下での推移が続く場合は25日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.30円から13.40円にかけては戻り売りにつかまりやすいとみる。また上昇再開感を強めるには13.50円を超えるような反騰が必要と思われる。
【当面の主な経済指標等の予定】
11月24日
16:00 11月製造業景況感 (10月 108.1)
16:00 11月設備稼働率 (10月 75.4%)
11月26日
20:00 トルコ中銀MPC議事要旨公開
20:30 週次外貨準備高 11/20 (11/3 403.7億ドル)
11月27日
16:00 11月経済信頼感指数 (10月 92.8)
16:30 トルコ中銀財務安定性レポート
11月30日
16:00 10月貿易収支 (9月 -48.3億ドル)
16:00 7-9月期GDP 前期比 (4-6月 -11.0%)
16:00 7-9月期GDP 前年同期比 (4-6月 -9.9%)
12月1日
16:00 11月イスタンブール製造業PMI (10月 53.9)
12月3日
16:00 11月消費者物価 前月比 (10月 2.13%)
16:00 11月消費者物価 前年同月比 (10月 11.89%)
16:00 11月生産者物価 前月比 (10月 3.55%)
16:00 11月生産者物価 前年同月比 (10月 18.20%)
20:30 週次外貨準備高
注:ポイント要約は編集部
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良い意味で期待は裏切られコンセンサス通り4.75%の利上げを行い政策金利を15.0%としました。
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