トルコリラ円見通し 週初からの急騰続くが上昇も5日目、週末控えた調整にも注意
〇トルコリラ円、11/11夜から一段高、11/12夜13.70まで高値を切り上げる
〇トルコリラ対ドル、11/13早朝7.64リラまで戻す
〇11/6安値から11/12高値まで1.71円の上昇、5月から6月の上昇幅を超える
〇トルコでの新型コロナ感染者急増、高齢者外出規制始まる
〇13.30以上での推移中は上向きとし、13.75超えからは14円を目指す上昇を想定する
〇13.30割れからはいったん調整に入るとみて13.00前後への反落を想定
【概況】
トルコリラ円は11月6日深夜の史上最安値からの反騰が続いている。11月7日のトルコ中銀総裁更迭、8日のアルバイラク財務相の辞任表明と副首相の就任をきっかけにトルコの金融経済政策の転換期待となり10日未明には13円台を回復、10日午後にいったん下げたものの11日夜から一段高に入り、12日夜には13.70円まで高値を切り上げてきた。
対ドルでのトルコリラも11月6日に8.57リラまで史上最安値を更新してから反騰に転じ、13日早朝には7.64リラまで戻している。11月9日はNYダウの史上最高値等でワクチンの早期供給期待によるドル円の急伸もトルコリラ円の押し上げ材料になったが、ドル円はその後に105円台前半を中心とした持ち合いに留まっており、11日から12日、13日早朝へのリラ高は対ドルでのリラ反騰が主因となっている。
【5月から6月への反騰時を超える勢い】
トルコリラ円は11月6日安値11.99円から12日高値13.70円まで1.71円の上昇であり、5月7日底14.61円から6月2日高値16.23円まで1.62円の上昇となったところを超えている。5月7日からの上昇角度よりも今回は急激な上昇のため、5月7日値と11月6日安値を結んだ日足における下値支持線と平行となる上値抵抗線を描くと11月12日時点の高値はまだ上値抵抗線に届いていないが、この抵抗線は現在14.0円前後に来ているため、さらに高値を更新してこの抵抗線に迫る可能性も出ているところだ。
週間足では17週連続の陰線引けから18週ぶりの陽線であり、直前5週分の下げ幅を一挙に解消する大陽線となっている。週間足の上昇幅としては2018年8月の通貨危機でつけた安値から反騰した際の大陽線以来の大きさとなっている。
果たして新中銀総裁と新財務相がリラ安防衛及び現在までのリラ反騰基調を維持してゆくだけの手腕、政策を実行してゆけるのかどうかは市場も懐疑的と思われるが、大胆な人事を敢行したことであるいは大幅な利上げやインフレ抑制への政策を打ち出す可能性もあると市場も身構えており、万人総弱気的なリラ暴落継続シナリオをいったん外して買い戻しに動いているという状況だろう。
11月19日のトルコ中銀の金融政策決定会合では、先週までは現行の10.25%から12%への利上げ予想だったが、今週に入ってからは15%まで利上げされるとの予想に替わってきている。こうした市場期待に応えるのか裏切るのかでその後もリラの明暗も分かれ、再び失望に転じる場合は通貨危機的な下落レベルとなることも考えておく必要があるだろう。週初からの上昇も既に5日目、先週末の人事により週明けから急変しているので、週をまたぐリスクも警戒されるところか。
【トルコの感染第二波、高齢者外出規制始まる】
トルコ政府は、首都アンカラと同国最大の都市イスタンブールで高齢者の外出制限を命じた。新型コロナウイルス感染による死者数が4月後半以降で最多となり、日々の増加数が上昇していることに対する規制強化と思われる。トルコ内務省によると対象は65歳以上の高齢者で、外出が許可されるのは午前10時から午後4時までとされ、外出時はマスク着用とソーシャルディスタンスの確保が義務付けられてルールを守らない場合は罰金が科される。
トルコでは新型コロナ感染者が急増している。これまでの死者数は1万1000人余り。重症患者の数は20日間連続で増加し、3001人となっている。累計感染者数は40万人を超えて世界26位、11日には前日から2693人増、12日も2841人増となり、感染第一波のピークであった4月11日の5138人増の後に減少期に入った4月29日以来の高水準となっている。
9月30日にはコジャ保健相が政府発表には無症状者を含めていないと発言して波紋を広げたが、10月15日から無症状者もカウントすると改めている。各国とも実際の感染者数は公式発表よりもはるかに多いとされるが、トルコでも正式発表を大きく超えている可能性があると思われる。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月6日夜安値をサイクルボトムとして急騰に入り、10日早朝高値でいったんサイクルトップを付けて10日夕刻へ下落した処から一段高に入ったため、12日午前時点では三角持ち合い終点の11日午後安値を起点とした新たな強気サイクル入りとした。また高値形成期は13日早朝から17日朝にかけての間と想定した。12日夜へ続伸してからも高値圏を維持しているのでまだ一段高余地ありとするが、前回サイクルトップから3日を経過したので12日午後の反落時安値13.30円割れからは弱気サイクル入りとして16日午後から18日夕刻にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では遅行スパンの好転と先行スパンを突破した状況が続いている。このため遅行スパン好転中の高値試し優先とし、先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後の好転から上昇再開と考える。遅行スパン悪化からは先行スパン下限限試しとするが、弱気転換は先行スパン転落からとする。
60分足の相対力指数は10日早朝高値から11日深夜、さらに12日夜への一段高に対して指数のピークは徐々に切り下がっているので弱気逆行の気配となっているが、逆行を繰り返して高値を切り上げてきている。乱高下を伴う急騰情勢のため50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、逆行も続いているので反落警戒期とし、50ポイント割れからは下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12日午後安値13.30円を下値支持線、13.75円を上値抵抗線とする。
(2)13.30円以上での推移中は上向きとし、13.75円超えからは14円を目指す上昇を想定する。13.85円以上は反落注意とみるが、13.30円以上での推移なら週明けも高値試しへ向かう可能性があると考える。
(3)13.30円割れからはいったん調整に入るとみて13.00円前後への反落を想定するが、13.00円前後は押し目買いも入りやすいとみるが、13.25円以下での推移が続く場合は週明けもさらに安値試しへ向かう可能性があると考える。
【当面の主な経済指標等の予定】
11月13日
16:00 9月鉱工業生産 前年比 (8月 10.4%、予想 7.2%)
16:00 9月小売売上高 前年比 (8月 5.8%、予想 3.6%)
11月19日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 10.25%、予想 15.0%)
20:30 週次外貨準備高 11/13時点
11月20日
16:00 11月消費者信頼感 (10月 81.9)
11月23日
17:00 10月観光客数 前年比 (9月 -59.4%)
11月24日
16:00 11月製造業景況感 (10月 108.1)
注:ポイント要約は編集部
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