中銀総裁と財務相交代をきっかけとした急騰続く
〇トルコリラ円、トルコを取り巻く状況改善への思惑で11日深夜に13.55まで高値を切り上げる
〇トルコの9月経済収支は23.64億ドルの赤字、8月の43.16億ドルからは減少
〇19日のトルコ中銀金融政策決定会合では現時点で15%の利上げ予想で大幅利上げに期待膨らむ
〇13.25以上での推移中は上向きとし13.70超えから14円を目指す上昇を想定
〇13.25割れから13.00前後への反落を想定
【概況】
トルコリラ円は11月6日深夜に史上最安値を更新した後、11月7日にトルコ中銀総裁更迭が報じられ、8日にはアルバイラク財務相が辞任を表明したことで週明け前時点では連日にわたるリラ安がさらに進行するのではないかと危惧されたが、財務相更迭による経済政策の改善期待が勝るとして反騰に転じた。9日夜は米ファイザー社のワクチン治験の良好な結果と早期承認申請見込み報道でドル円が急伸、NYダウが大幅上昇で史上最高値を更新する中でリスク選好感も高まったために対ドルでのトルコリラも急伸したために10日早朝には13.05円まで高値を切り上げた。
急騰の反動で10日午後には12.46円までいったん下げたが12.50円割れを買い戻されてしっかりし、11日夜にはトルコ及びトルコリラを取り巻く状況が改善するのではないかとの思惑で10日早朝高値を超える一段高となり、11日深夜には13.55円まで高値を切り上げた。
対ドルでのトルコリラは11月6日夜に8.57リラまで史上最安値を更新したが、9日には8.07リラまで急騰、10日夕刻にはいったん8.36リラまで反落する乱調さを伴ったが、11日には9日夜高値を超える一段高に入り12日早朝には7.76リラまで続伸している。
11月11日に発表されたトルコの9月経常収支は23.64億ドルの赤字で8月の43.16億ドルの赤字からは赤字幅が減少し、市場予想の32億ドルの赤字よりも少なかった。
【金融政策は好転するのか?】
エルドアン大統領は11日、「我々は雇用を創出し、インフレも経常赤字も生じさせない成長の枠組みを構築していく」等と演説した。
11月7日に判明したトルコ中銀総裁の更迭については、低金利を主張してきたエルドアン大統領が9月の中銀による利上げを批判しての更迭と思われる。昨年7月の前々総裁更迭も利下げしないことへの不満の表明と受け止められたためだが、娘婿の前財務相も更迭してエルバン元副首相を任命したことにより、トルコリラの暴落による金融政策的な危機を脱却するための人事として市場は逆に期待を持ち始め、11月6日までのリラ安の悲観的な連鎖から抜け出した。また先安感から「万人総弱気」状態だったところからの反騰入りにより、売り方の狼狽による買い戻し、反騰への飛びつき買いが強気の連鎖反応を発生させたといえる。
トルコ西方の大地震によりギリシャとの東地中海ガス田開発を巡る対立が双方の地震被害により一服、ナゴルノ紛争もロシアの仲介により停戦に合意するなど、地政学的なリスクもややトーンダウンしていることもリラ買いには有利に働いている印象もある。
11月19日に次回のトルコ中銀による金融政策決定会合が予定されている。政策金利の週間レポレートは現状で10.25%であり、10日時点では12%への利上げ予想が出ていたが、11日時点では15%への利上げ予想へと大幅利上げ期待が膨らんでいるようだ。
しかし今回の更迭劇が利上げを約束するものとは限らない。果たして市場の期待通りに利上げを決断するのか、利上げ見送りかわずかな利上げ幅にとどまって市場を再び失望させるのか、重要な試金石になりそうだ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月9日の急騰により11月3日夜安値から3日目となる6日夜安値で直近のサイクルボトムを付けて強気サイクルに入ったが、10日早朝高値でいったんサイクルトップを付けて10日夕刻へ下落した。その後は10日早朝高値から10日夕刻安値までのレンジ内での推移で三角持ち合いの様相となっていたが、11日夜に一段高に入ったため、三角持ち合い終点の11日午後安値を起点として新たな強気サイクルに入ったと思われる。高値形成期は10日早朝高値を起点として13日早朝から17日朝にかけての間と想定し、弱気転換は11日夕刻に一段高入りする直前安値12.79円割れからとする。
60分足の一目均衡表では9日の急騰で遅行スパンが好転、先行スパンを突破したが、遅行スパンは10日夜へいったん悪化したところから再び好転に入って一段高へ進んでいる。11日夕刻安値も先行スパンの上限が下支えとなった。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とし、先行スパンを上回るうちは遅行スパンが一時的に悪化してもその後の好転から上昇再開と考える。遅行スパン悪化からは先行スパンの上限試しとするが、弱気転換は先行スパン転落からとする。
60分足の相対力指数は10日早朝高値から11日深夜への一段高に対して指数のピークは切り下がっているので弱気逆行の気配となっているが、乱高下を伴う急騰情勢のため50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとし、弱気転換は50ポイント割れからとする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、13.25円を下値支持線、13.70円を上値抵抗線とする。
(2)13.25円以上での推移中は上向きとし、13.70円超えからは14円を目指す上昇を想定する。13.85円以上は反落注意とみるが、13.25円以上での推移なら13日も高値試しへ向かう可能性があると考える。
(3)13.25円割れからは13.00円前後への反落を想定するが、13.00円前後は押し目買いも入りやすいとみる。ただし13.25円以下での推移が続く場合は13日に安値試しへ向かう可能性があると注意する。
【当面の主な経済指標等の予定】
11月12日
16:00 週次外貨準備高 11/6時点 (10/30 422.6憶ドル)
11月13日
16:00 9月鉱工業生産 前年比 (8月 10.4%、予想 7.2%)
16:00 9月小売売上高 前年比 (8月 5.8%、予想 3.6%)
11月19日
20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 10.25%、予想 12.0%)
20:30 週次外貨準備高 11/13時点
11月20日
16:00 11月消費者信頼感 (10月 81.9)
11月23日
17:00 10月観光客数 前年比 (9月 -59.4%)
11月24日
16:00 11月製造業景況感 (10月 108.1)
16:00 11月設備稼働率 (10月 75.4%)
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