トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁更迭から財務相交代へ、市場は混乱回避でリラ買い戻しに(20/11/10)

トルコリラ円は高値で13.05円まで急伸して10月27日からの9営業日分の下落幅を一挙に解消し、10月26日以来の13円台到達となった。

トルコリラ円見通し トルコ中銀総裁更迭から財務相交代へ、市場は混乱回避でリラ買い戻しに(20/11/10)

トルコ中銀総裁更迭から財務相交代へ、市場は混乱回避でリラ買い戻しに

〇トルコリラ円、週明けから急騰、11/9高値13.05まで急伸し10/26以来の13円台到達
〇対ドルでも急騰、10/27以降の下落分を解消
〇財務相交代、経済政策改善を期待させるとして市場は好感している模様
〇12.80を割り込まないうちは一段高余地あり、13.05超えからは13.20前後への上昇を想定
〇12.70割れからはいったん調整局面に入るとみて12.60前後、さらに12.50台中盤への下落を想定

【概況】

トルコリラ円は11月3日深夜安値12.21円からの下げ渋りで持ち合いに入っていたが、6日夜には3日深夜安値を割り込んで持ち合い下放れとなり、6日深夜安値で11.99円(ベンダ-によっては12円割れは回避)まで史上最安値を更新した。
週末時点ではトルコ中銀総裁の更迭が報じられて7日朝の官報で確認されたこと、さらに8日にはアルバイラク財務相が辞任を表明したことで、トルコの金融財政政策がさらに混乱に陥るのではないかとの懸念が強まった状況で週明けを迎え、市場の声としてはリラ安がさらに進行するのではないかとの見方が優勢となっていた。
しかし、週明けの取引再開からトルコリラは対円、対ドルで急騰した。トルコリラ円は高値で13.05円まで急伸して10月27日からの9営業日分の下落幅を一挙に解消し、10月26日以来の13円台到達となった。
対ドルでのトルコリラも11月6日に8.57リラまで史上最安値を更新し続けてきたが、9日の急騰により10月27日以降の下落分を解消した。

【中銀総裁と財務相の交代で市場も混乱】

中銀総裁の更迭は9月に利上げを実施したことへのエルドアン大統領による不満を具現化したものとして今後の利上げ期待が後退するものと受け止められたが、財務相交代により経済財政政策での失態から脱却する可能性も出てきたと市場は評価を変えたのかもしれない。また相次ぐ更迭劇によりトルコの金融取引における規制強化への警戒感、先行きが読めない不安からリラ売り一辺倒だった総弱気からポジション縮小、買い戻しに動いた可能性もあるだろう。

トルコのエルドアン大統領はトルコ中央銀行のウイサル総裁を更迭し、後任にアーバル前財務相を充てたと英紙フィナンシャル・タイムズが報じ、7日付けのトルコの官報で確認された。ウイサル総裁が9月に利上げへ踏み切ったことを不満として更迭したと思われる。
トルコ大統領府は9日夜の声明でエルドアン大統領が8日に辞意を表明したアルバイラク財務相の辞任を了承したとし、後任にはエルバン元副首相が指名されたとした。7日の中銀総裁更迭に続く異例の事態だが、エルドアン大統領の娘婿であるアルバイラク氏に対する評判は悪く、経済政策への不満が高まる中でエルドアン氏が引導を渡したようだ。中銀総裁の更迭は市場を不安にさせたが、アルバイラク財務相の更迭は経済政策の改善を期待させるものとして市場は好感しているようだ。

トルコリラが連日にわたる史上最安値更新を続けて通貨危機的な様相に陥りつつある中で、今回の更迭劇がリラ暴落をひとまず落ち着かせたようだ。9日の日足陽線では高安レンジが1円近い上昇幅であり、6月以降の下落基調の中では最大の上昇となっている。反騰規模としては3月13日に16.30円から17.12円まで1円近い上昇の大陽線を付けた時以来といえる。
概ね4か月前後の底打ちサイクルで推移してきたが、5月7日底から4か月を経過しても底打ちらしい動きが見えずに6か月目に入ったところであったが、やや長引いた状況からこのサイクルの底を付けていったん戻しに入った可能性がある。ただし、今年1月6日底からの上昇が1月17日高値までの短期的な上昇にとどまって下落に転じた経緯もあるので、新たなリラ買い材料を提供してゆかないと戻りも短命に終わる可能性があると注意したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月9日の急騰により、11月3日夜安値から3日目となる6日夜安値で直近のサイクルボトムを付けて強気サイクル入りしたと思われる。4日午後の戻り高値を基準とすれば高値形成期は9日午後から11日午後にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるため、急騰の反動でいったん弱気サイクル入りする可能性もあると注意する。このため12.70円以上での推移中は上昇継続余地ありとするが、12.80円割れを弱気転換注意、12.70円割れからはいったん弱気サイクル入りするとみて11日夜から13日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では9日の急騰で遅行スパンが好転、先行スパンを突破した。急騰後の反動も警戒されるので、遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、遅行スパン悪化からはいったん調整に入るとみて安値や飯優先へ切り替える。

60分足の相対力指数は9日の急騰で80ポイントを超えたが、9日夜から10日早朝への高値切り上げに対して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られるため、いったん調整安を入れやすいところとみる。70ポイント台回復からは上昇再開とするが、70ポイント以下での推移中は下向きとして40ポイント台への低下を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.70円から12.80円までを下値支持帯、10日早朝高値13.05円を上値抵抗線とする。
(2)12.80円を割り込まないか一時的に割り込んでも回復するうちは一段高余地ありとし、10日早朝高値超えからは13.20円前後への上昇を想定する。13.20円以上は反落警戒とするが、12.80円以上での推移なら11日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)12.70円割れからはいったん調整局面に入るとみて12.60円前後、さらに12.50円台中盤への下落を想定する。12.55円以下は反騰注意とするが、12.80円以下での推移が続くようなら11日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

11月10日
 16:00 8月失業率 (7月 13.4%、予想 13.8%)
11月11日
 16:00 9月経常収支 (8月 -46.3億ドル)
11月12日
 16:00 週次外貨準備高 11/6時点 (10/30 422.6憶ドル)
11月13日
 16:00 9月鉱工業生産 前年比 (8月 10.4%、予想 7.2%)
 16:00 9月小売売上高 前年比 (8月 5.8%、予想 3.6%)
11月19日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 10.25%、予想 12.0%) 
 20:30 週次外貨準備高 11/13時点
11月20日
 16:00 11月消費者信頼感 (10月 81.9)
11月23日
 17:00 10月観光客数 前年比 (9月 -59.4%)
11月24日
 16:00 11月製造業景況感 (10月 108.1)

注:ポイント要約は編集部

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