ドル円見通し ファイザーのワクチン開発成功見通し報道から急伸、当日安値から2円超の上昇(20/11/10)

11月9日当日安値103.17円から深夜高値105.64円へ2.47円の円安ドル高となった。

ドル円見通し ファイザーのワクチン開発成功見通し報道から急伸、当日安値から2円超の上昇(20/11/10)

ファイザーのワクチン開発成功見通し報道から急伸、当日安値から2円超の上昇

〇ドル円、ワクチン開発成功見込み報道から急伸、11/9安値103.17から深夜高値105.64へ大幅上昇
〇ワクチン報道後NYダウ急騰、一時3万ドルに迫り史上最高値を更新、前日比834.57ドル高で終了
〇米債券市場、米10年債・米30年債利回りともに今年3月以来の高水準
〇105円を割り込んでも切り返すうちは上昇余地あり、105.64円超えからは106に迫るとみる
〇104.75割れからはいったん反動安に入るとみて104.50、次いで104.25前後を試すとみる。

【概況】

ドル円は米ファイザー社のワクチン開発成功見込み報道から急伸、11月9日当日安値103.17円から深夜高値105.64円へ2.47円の円安ドル高となった。日足は大陽線での反騰となったが、7月31日に104円割れを回避して反騰した時の1日の値幅1.86円を上回り、3月のコロナショック暴落でつけた3月9日底の翌日である3月10日の3.91円の上昇幅以来の大陽線規模となった。
米大統領選挙開票速報での混乱を通過して株高ドル安の流れが続いて11月6日には103.17円まで下落して9月21日安値103.99円を割り込み3月暴落時以来の103円台に突入していた。6日夜の米雇用統計が予想以上に改善していたことで一時的にドル高円安反応が見られて6日夜には103.46円まで戻す場面があったが早々に売られ、週明けの9日も取引開始序盤には6日夜安値とほぼ同値水準まで下げていた。

しかし日経平均がバブル崩壊以降の高値を更新するなどアジア株が全面高、ダウ先物も上昇する中でリスク選好的なユーロ高ドル安の一方でドル円は株高同調の円安圧力から徐々に上昇し始めて夕刻には6日夜に反発した時の高値を超えてきていた。そこにファイザー社のワクチン開発成功見込みとの報道が飛び込んできてダウ先物が暴騰的な上昇に入る一方、株高債券安により米長期債利回りが上昇したため、ドル円は株高同調の円安と共に米長期債利回り上昇によるドル高が重なる形となり、104円を超えたところからはドル買い円売りの連鎖反応に入って105円台中盤まで一挙に急伸した。
深夜に105.64円の高値を付けた後はNYダウも上げ幅を削りナスダック総合株価指数がマイナスに転じる等で円安にブレーキがかかり、105円台序盤へやや失速している。

【NYダウが史上最高値を更新、ナスダックが大幅安、米長期債利回り上昇】

米製薬大手ファイザー社が新型コロナワクチンの治験で9割超の感染予防効果を確認したとの暫定結果を発表、来週にも安全性に関するデータを揃えて米当局に緊急使用許可を申請すると報じられた。これをきっかけにダウ先物が千ドルを超える急騰に入り、金融市場全般が騒然とした。
NYダウは前日比834.57ドル高で終了、一時は前日比1600ドル高を超えて3万ドルに迫り、今年2月の史上最高値を上抜いた。バイデン氏勝利で米大統領選挙を通過して上昇感を強めていたところでのビッグニュースに市場も過熱気味に反応したが、その一方ではナスダック総合株価指数が前日比181.45ポイント安と急落で終わった。経済活動正常化により巣ごもりでのIT関連需要が後退するとの見方も出てダウ以上に上昇し過ぎてきたことによる過剰な先高期待が後退したともいえる。

NYダウも高値からは大幅に下落して上昇幅をかなり削っており、最終的にワクチン承認に至るのかどうか、承認後の展開を見定めたいという印象もあるところだ。
米製薬大手ファイザーによると、安全性に関するデータは11月第3週に揃え、直ちに米当局に緊急使用許可を申請する予定。同社は「年内に世界で最大5000万回分、来年に最大13億回分を製造できる」との見通しを示した。同社は日本政府との間で来年6月末までに6000万人分=1億2000万回分のワクチン供給で基本合意している。
ワクチンが有効になれば今後の感染拡大は抑制が効いた状況に入るかもしれないが、却って油断を招けば現下の感染爆発がさらに深刻化する可能性もある。また欧米の感染爆発状況を一挙に収束させる展開に入るというのも楽観的過ぎるだろう。新型コロナウイルスは変異を繰り返して拡散してきた。当面は続報を見て冷静に今後の展開を見極める必要もあるだろう。

【米債券市場は高水準の動き】

株高により米長期国債は売られた。安全資産性後退と株式市場への資金シフトによるもので、米10年債利回りは先週末の0.82%から一時は0.97%まで上昇して3月以来の高水準となり、終盤も0.95%前後の高水準を維持した。米30年債利回りも前週末の1.59%から一時は1.76%まで上昇して今年3月以来の高水準となった。
先週までは株高なら為替市場のリスク選好感が強まってユーロやポンド、豪ドル等が買われてドル全面安となり、ドル円においても円高ドル安基調という反応であったが、米長期債利回り上昇によりドル全面安の流れにブレーキがかかり、ユーロドル等は深夜から失速、ドル円は日米金利差を意識した買い戻しに急伸するという、先週の株式市場と為替市場との相関が崩れる動きも見られた。

バイデン政権誕生による財政支出の拡大予想で米大統領選挙前には米長期債利回りも上昇してきた。選挙結果が見えて長期債利回り上昇も落ち着いていたのだが、再び上昇気配となり、ドル円には押し上げ材料になってきた可能性もある。
ただし、ワクチン報道はこれまでも成功期待を報じられた後にトーンダウンすることを繰り返してきたため、今回も最終的な承認に至るかどうか見定める必要があり、9日夜にやや過剰反応となった株高に対する揺れ返し、反動も警戒すべきところかもしれない。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、11月4日午前高値を直近のサイクルトップとして底割れにより新たな弱気サイクルに入ったとして9日午前から11日午前にかけての間への下落を想定してきたが、6日夜安値と9日午前安値をダブルボトムに急伸して強気サイクル入りとなった。高値形成期は4日午前高値を基準として9日午前から11日午前にかけての間と想定されるので既にサイクルトップを付けての反落注意期にある。105円を割り込んでも切り返すうちは上昇継続余地ありとするが、104.75円割れからは弱気サイクル入りを疑い、11日夜から16日午前にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では9日夜の急騰で遅行スパンが好転して先行スパンも突破した。その後も両スパンそろっての好転を維持しているので遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、急騰に対する反動も警戒されるので切り上がってくる26本基準線を割り込む場合は下げ再開注意、遅行スパン悪化からは安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は9日夜の急騰で80ポイント超えまで急伸したがその後は70ポイント割れへ失速している。値動きも大きいので50ポイント台を維持するうちは70ポイントを上抜き返すところから上昇再開とみる。ただしその際は相場が高値を更新したところで指数のピークが切り下がるようなら弱気逆行となりその後の反落警戒となる点に注意する。また50ポイントを割り込み、その後も70ポイント以上へ切り返せない場合はさらに下げる可能性があると注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)104.75円を下値支持線、9日深夜高値105.64円を上値抵抗線とする。
(2)105円を割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとし、9日深夜高値超えからは106円に迫るとみる。106円近辺は反落警戒とみるが105円台を維持しての推移なら11日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)104.75円割れからはいったん反動安に入るとみて104.50円、次いで104.25円前後を試すとみる。104.25円以下は反騰注意とするが、104.75円割れの状況が続く場合は11日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

11/10(火)
10:30 (中) 10月 生産者物価指数 前年同月比 (9月 -2.1%、予想 -2.0%)
10:30 (中) 10月 消費者物価指数 前年同月比 (9月 1.7%、予想 0.8%)
14:00 (日) 10月 景気ウオッチャー現状判断DI (9月 49.3、予想 50.5)
14:00 (日) 10月 景気ウオッチャー先行判断DI (9月 48.3、予想 49.8)
16:00 (ト) 8月 失業率 (7月 13.4%)
16:00 (英) 10月 失業保険申請件数 (9月 2.81万件、予想 5.00万件)
16:00 (英) 10月 失業率 (9月 7.6%)
16:00 (英) 9月 失業率・ILO方式 (8月 4.5%、予想 4.8%)
19:00 (独) 11月 ZEW景況感・期待指数 (10月 56.1、予想 41.7)
24:00 (米) クオールズFRB副議長、上院銀行委員会証言
24:00 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演
26:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、講演
30:00 (米) ローゼングレン・ボストン連銀総裁、講演

11/11(水)
休場、カナダ、米国(ベテランズデーで外為・債券市場が休場、株式・商品市場は通常取引)
OPEC月報、IOC理事会
08:30 (豪) 11月 ウエストパック消費者信頼感指数 (10月 105.0)
08:50 (日) 10月 マネーストックM2 前年同月比 (9月 9.0%、予想 9.2%)
10:00 (NZ) ニュージーランド準備銀行(RBNZ)政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
16:00 (ト) 9月 経常収支 (8月 -46.3億ドル、予想 -26.3億ドル)
22:00 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、ECBフォーラムで講演

注:ポイント要約は編集部

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