トルコリラ円見通し 10月22日から9日連続の史上最安値更新、大地震被害も圧迫要因(20/11/4)

トルコリラ円は10月22日に10月15日安値を割り込んで史上最安値更新を再開したが、22日から11月3日まで9営業日連続で最安値を更新した。

トルコリラ円見通し 10月22日から9日連続の史上最安値更新、大地震被害も圧迫要因(20/11/4)

10月22日から9日連続の史上最安値更新、大地震被害も圧迫要因

〇トルコリラ円、10/22から11/3まで9営業日連続で最安値更新
〇10/30の大地震発生によりトルコ第三の都市イズミルで甚大な被害
〇対ドルも対円同様、11/3夜に8.53で連日の最安値更新
〇10/30発表の第3四半期観光収入、前年同期比で100億ドルの減収
〇10月会合の利上げ見送りと消費者物価上昇で実質的なマイナス金利幅は9月から拡大
〇11/19の次回中銀金融政策発表までは下落期基調が続きやすい
〇11/3夜安値12.21割れからは12.10、12.00を段階的に試す

【概況】

トルコリラ円は10月22日に10月15日安値を割り込んで史上最安値更新を再開したが、22日から11月3日の12.21まで9営業日連続で最安値を更新した。10月22日のトルコ中銀による利上げ見送りを失望してのリラ売り攻勢により、連日の最安値更新が続く中、10月30日にはトルコ西方での大地震発生により同国第三の都市イズミルで甚大な被害が出ていることもリラ売りにつながっている印象だ。外貨準備高不足、観光収入激減と経常収支悪化、政策金利を消費者物価上昇率が上回るマイナス金利状態に対する有効策を打ち出せない状況の中で欧州勢を中心としたリラ離れが加速し、トルコ国内投資家もリラからドルやユーロ、ゴールド等へ逃避していることで下落に歯止めがかからなくなっている。ナゴルノ紛争への介入やギリシャ沖のガス田探査強行、ロシア製ミサイル導入によるNATO内からの批判等の地政学的リスクも拡大する一方だったこともリラ売りを加速させてきたが、この流れが中々収まる気配が見られない。

対ドルでのトルコリラは11月3日夜に8.53リラまで史上安値を更新しているが、対円同様に連日の最安値更新であり、月間足での下落率は8月が5.4%安、9月が5.0%安、10月は8.15%安と加速している。

【観光収入の落ち込み、実質マイナス金利状態も続く】

10月30日に発表された観光統計では、トルコの第3四半期(7-9月)の観光収入は40億4000万ドル、第2四半期のコロナによる入国規制でデータはなく、第1四半期は41億ドルだった。2019年の第3四半期は140億ドルであり凡そ前年同期比では100億ドルの減収となった。2018年同期も約115億ドル、2017年同期も約114億ドルであり、書き入れ時の収入減が極めて深刻な状況にある。欧米での感染拡大が止まないため、来年の第2四半期及び第3四半期についても果たして劇的な改善で通常の水準に戻るのかは懐疑的だ。
9月の観光客数は220万3482人で前年同月比でマイナス59.4%となった。2019年9月は542万6818人であり、7月から10月まで毎月400万人以上がトルコを訪れていた。
11月2日に発表されたイスタンブール10月製造業PMIは53.9となり9月の52.8から改善して市場予想の52.4を上回った。コロナショックにより4月に33.4まで急低下した後は持ち直して6月以降は強弱分岐点の50を超えているが経済活動再開から7月には56.9まで改善した後は伸びが鈍化している。

10月22日から9日連続の史上最安値更新、大地震被害も圧迫要因

トルコ統計局が発表した10月の消費者物価上昇率は前年比11.89%となり9月の11.75%から上昇し、前月比は2.13%で9月の0.97%から上昇した。10月の生産者物価上昇率は前年比18.2%となり9月の14.33%から大幅上昇し、前月比は3.55%で9月の2.65%からさらに上昇した。トルコ中銀は9月会合で政策金利を2%引き上げて10.25%としたがそれでも消費者物価上昇率には届かなかった。10月会合で利上げが見送られた上に消費者物価がさらに上昇しているため、実質的なマイナス金利幅は9月時点から拡大した。
懸念されるのは生産者物価が8月から急上昇していることであり、9月時点で消費者物価上昇率を抜いたが、2016年12月に同様の現象が発生してから消費者物価も後を追いかけて急上昇しているため、今後も同様の状況へ向かう可能性が懸念される。リラ安が物価を押し上げており、トルコ中銀及び政府はインフレが急激に進まないように十分な利上げをすべきところだが、11月19日の次回会合で市場を裏切らないインパクトを持って利上げできるのかどうか、試されることになるのだろう。

【大地震被害も深刻】

トルコとギリシャの沖合のエーゲ海を震源とする10月30日の大地震ではトルコ西部イズミルにおいて家屋倒壊や津波被害により数千人が家を失った。トルコ政府は救出活動と並行してコンテナ型の仮設住宅の準備を進めている。この地震によりトルコでは100人以上の死亡が確認されて千人以上が負傷した。オクタイ副大統領は1日の会見で11月1日時点で2600人以上がテントに避難しているとし、今後は約2万人を収容できるテント避難所をイズミルで準備するとした。
ギリシャも被害が出ていることで、大地震発生早々に両国首脳は電話会談で弔意を示し、地震被害に対する協力姿勢を示した。東地中海のギリシャ沖ガス田探査問題で両国は対立しているが、ひとまず地震対策でこの問題は先送りになった印象だ。
大地震への各国からの支援と弔意に関し、トルコのエルドアン大統領は台湾への感謝を示すためにツイッターに中華民国国旗のイラストをいったんアップしたが1日に削除された。中国による圧力を考慮したものと思われるが、外交政策的には自国優先で強硬姿勢を常にするエルドアン大統領も中国には気を使ったことが分かった。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月22日の中銀利上げ見送りによる急落後も安値更新とその後の戻り高値の切り下がりが続いているが、10月22日夜安値から4日目の10月28日夜安値、さらに4日目の11月3日夜安値でボトムを付けてきた。3日夜安値からいったん戻したが4日午前には反落して新たな底割れに余裕が乏しくなっているため、底割れからは新たな弱気サイクル入りとして6日夜から10日夜にかけての下落継続と考える。

60分足の一目均衡表では3日夜安値からの反発では先行スパンが上値を抑えて失速し、遅行スパンも再び悪化している。このため先行スパンを上抜き返せないうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後の悪化から下げ再開に向かう展開が続くとみる。

60分足の相対力指数は3日夜安値で20ポイントを割り込んでからいったん60ポイント台へ戻したが、4日午前には40ポイント割れへ再び低下しているので既に下げ再開に入っている印象だ。50ポイント前後を戻り抵抗とし、10ポイント台を目指す下落が懸念される。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)11月19日の次回中銀金融政策発表までは下落期基調が続きやすいとみる。また戻り高値を切り下げて一段安を繰り返しているので、上昇再開には高値切り上げへ進む=現時点では4日早朝高値12.45円を超える必要があり、超えないうちは一段安警戒が続くとみる。
(2)11月3日夜安値12.21円割れからは12.10円、12.00円を段階的に試す流れとみる。12.00円割れはいったん買い戻しも入りやすいとみるが、12.35円以下での推移が続くうちは安値試しへ向かいやすく、12.10円以下での推移が続く場合は12円割れを目指す可能性が優先される展開と考える。

【当面の主な経済指標等の予定】

11月5日
 20:30 週次外貨準備高 (10/16 428億ドル) 
11月10日
 16:00 8月失業率 (7月 13.4%、予想 13.8%)
11月11日
 16:00 9月経常収支 (8月 -46.3億ドル)
11月12日
 20:30 週次外貨準備高
11月13日
 16:00 9月鉱工業生産 前年比 (8月 10.4%、予想 7.2%)
 16:00 9月小売売上高 前年比 (8月 5.8%、予想 3.6%)
11月19日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 10.25%、予想 12.0%) 

注:ポイント要約は編集部

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