トルコリラ円見通し 10月27日から7日連続の史上最安値更新、週明け早々に安値更新8日目に入る(20/11/2)

史上最安値は週末の31日早朝時点で12.41円まで切り下がった。週明けの11月2日朝には12.39円までさらに安値を更新している。

トルコリラ円見通し 10月27日から7日連続の史上最安値更新、週明け早々に安値更新8日目に入る(20/11/2)

10月27日から7日連続の史上最安値更新、週明け早々に安値更新8日目に入る

〇10/30にトルコとギリシャ沖合のエーゲ海を震源としたマグニチュード7.0の大地震が発生
〇トルコリラ円、2日早朝に12.39まで下がり更に最安値更新
〇対ドルでは10/30深夜に8.38リラで最安値更新
〇11/19の中銀金融政策決定会合では市場は12%への利上げを想定
〇最安値更新からは12.30、12.20、12.10、12.00と刻んでいく展開を懸念
〇12.62を超える場合は12.70前後への上昇を想定

【トルコ沖大地震】

トルコとギリシャの沖合のエーゲ海を震源として10月30日にマグニチュード7.0の大地震が発生した。31日未明時点ではトルコとギリシャ両国で少なくとも26人の死亡が確認されて負傷者は約800人と報じられていたが、11月2日朝時点までの報道ではトルコで69人死亡、負傷者949人、ギリシャで2人死亡、19人がけがをしたという。被災地では現在も救助活動が続いているが、トルコにとっては第三の都市イズミルを中心に被害が拡大している。
地震発生からトルコのエルドアン大統領とギリシャのミツォタキス首相は電話会談し、互いに弔意を伝え、それぞれがツイッターでギリシャ首相は「私たちの間にどのような違いがあろうとも今は団結する時だ」とし、エルドアン大統領も「ギリシャを支援する用意ができている」と述べた。両国は東地中海のギリシャ沖でのトルコによる海軍を伴ったガス田探査管轄強硬がギリシャ及びEUとの対立を険悪化させてきたが、ひとまず地震騒動で一呼吸置くこととなった。

【概況】

トルコリラ円の歴史的暴落は30日も続き、史上最安値は週末の31日早朝時点で12.41円まで切り下がった。週明けの11月2日朝には12.39円までさらに安値を更新している。
10月22日にトルコ中銀が市場予想に反して利上げを見送ったところから直前の21日午後高値13.44円から22日夜安値13.08円まで急落したが、23日夕刻には安値を更新し、連日の安値更新モードに入ったが、安値更新後の一時的な買い戻しによる高値も切り下がりが続き、またジリ安が徐々に加速して安値を更新するという展開が続いている。
トルコリラ円の週足は7月24日の週から15週連続の陰線であり、6月高値16.23円から11月2日朝安値12.39円まで23.6%の下落率となっている。

【対ドルでも最安値更新続く、セリングクライマックスも警戒】

対ドルでのトルコリラは10月30日深夜に8.38リラまで最安値を更新した。週足では8月28日の週から10週連続陰線だが、7月末の急落開始してからは3週連続陰線の後1週を置いての10週連続であり、先週の下落率は4.82%安となった。すでに2018年8月の通貨危機的な下落中を上回る下落角度で進んでいるが、リラ安のクライマックスであった2018年8月には1週間で高値5.07リラから6.87リラへ凡そ26%も急落し、翌週もさらに下落した経緯もあり、今回もまだクライマックス的な大暴落状態には至っていないがこのままのペースでの下落が続けば、2018年8月暴落時並みの変動率になる可能性もあると警戒される。

【11月19日の次回会合では利上げせざるを得ないか】

トルコ中銀はエルドアン政権による利下げ圧力を背景に2019年7月に政策金利を24.00%から19.75%へ引き下げ、以降9会合連続の利下げで今年5月には8.25%まで引き下げてきた。しかしコロナ不況により引き下げた金利の据え置きを続けたために政策金利が消費者物価上昇率を下回る実質マイナス金利状態に陥った。観光収入激減による外貨準備高の減少も続き、欧州勢によるリラ放れ・リラ売りが加速、トルコ国内でもドルやユーロ、ゴールドへの逃避が進んでリラ安に歯止めが効かなくなった。強硬な銀行取引規制等でも抑えが効かなくなった状況から現在に至るリラ暴落商状の継続に入った。

またシリア紛争、リビア内戦への介入、トルコによる東地中海のギリシャ沖でのガス田探査強行によるEUとの対立、ロシア製ミサイルシステム導入による欧米との対立、9月27日に勃発したナゴルノ紛争と地政学的リスクも拡大の一途となってきた。エルドアン大統領としては国内経済の停滞とリラの危機的状況を踏まえて排外主義的な姿勢で国内の不満をそらす姿勢を示しているようにも思われるが、フランスで相次いだテロ事件によるイスラム圏とフランスの対立深刻化もあり、エルドアン大統領の対外的な強硬姿勢もなかなか収まらないと思われる。
11月19日には次回の中銀金融政策決定会合がある。市場は12%への利上げを予想しているが、果たしてどうなるのか?

【当面のポイント】

【当面のポイント】

大地震による実体経済への影響も懸念されるが、それよりも心理的なトルコ不安を助長する事件という印象がある。
10月22日の急落以降、安値更新からいったん戻しても長続きせずにジリ安に入り、さらに安値を更新する展開が続いているので、戻り高値を切り上げる=現状では10月30日早朝高値12.62円を超える反騰へ進めばひとまず下落一服感でやや持ち直しに入る可能性があると思われるが、切り下がりが続くうちは連日の様に安値が続く展開を懸念すべきだろう。

11月3日の米大統領選挙でトランプ氏勝利ならトルコへの姿勢も従来と変わらないが、バイデン氏勝利ならトルコへの制裁へ向かう可能性も強まるとみてリラ売り要因になってくると思われる。
(1)当面、10月30日早朝高値12.62円を上値抵抗とし、下値の目途はつかない状況と思われる。
(2)最安値更新からは0.10円ずつの下値目途切り下げにより12.30円、12.20円、12.10円、12.00円と刻んで行く展開を懸念する。
(3)10月30日早朝高値を超える場合はいったん戻しに入るとみて12.70円前後への上昇を想定するが、その後は反落に転じて安値更新を目指す流れへ向かうとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

11月2日
 16:00 10月イスタンブール製造業景況指数 (9月 52.8、予想 52.4)
11月3日
 16:00 10月消費者物価上昇率 前年比 (9月 11.75%、予想 11.50%)
 16:00 10月消費者物価上昇率 前月比 (9月 0.97%、予想 1.80%)
 16:00 10月生産者物価上昇率 前年比 (9月 14.33%、予想 17.80%)
 16:00 10月消費者物価上昇率 前月比 (9月 2.65%、予想 3.20%)
11月5日
 20:30 週次外貨準備高 (10/16 428億ドル) 

11月10日
 16:00 8月失業率 (7月 13.4%、予想 16.8%)
11月11日
 16:00 9月経常収支 (8月 -46.3億ドル)
11月12日
 16:00 週次外貨準備高
11月13日
 16:00 9月鉱工業生産 前年比 (8月 10.4%)
 16:00 9月小売売上高 前年比 (8月 5.8%)
11月19日
 20:00 トルコ中銀金融政策決定会合 政策金利 (現行 10.25%、予想 12.0%) 


注:ポイント要約は編集部

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