トルコリラ円見通し 史上最安値をさらに更新、トルコ中銀へ利上げ催促、仏土対立も悲観売りを助長(10/27)

26日夜から27日朝へ続落して27日朝には12.92円まで史上最安値を更新した。

トルコリラ円見通し 史上最安値をさらに更新、トルコ中銀へ利上げ催促、仏土対立も悲観売りを助長(10/27)

史上最安値をさらに更新中、トルコ中銀への利上げ催促、仏土対立も悲観売りを助長

〇トルコリラ円、26日夜から27日朝へ続落し12.92まで史上最安値を更新
〇トルコ10月製造業信頼感指数、設備稼働率それぞれ前月から改善
〇エルドアン大統領、仏風刺画殺人事件対応でマクロン大統領を批判、仏製品不買運動等で両国の関係悪化
〇13.00以下での推移中は一段安警戒、12.90割れから12.80、12.70を段階的に試す流れ
〇13.30超えから続伸の場合、13.50手前への上昇を想定

【概況】

トルコリラ円は26日午後の下落で23日夕刻安値を割り込み史上最安値を更新、26日夜から27日朝へ続落して27日朝には12.92円まで一段安となった。
対ドルでのトルコリラも26日夜に8.09リラへ大幅続落となり市場最安値を更新し、その後も最安値近辺での推移が続いている。

トルコ中銀は9月24日に予想外の大幅利上げに踏み入りいったんはリラ安に歯止めをかけた。しかし9月27日にナゴルノ紛争が勃発したことで中銀利上げによるリラ上昇が吹き飛び再び最安値更新に陥ってきた。10月22日の中銀会合前には連続利上げの可能性が高まったとして21日にかけてはリラ反発が見られたのだが、今度は市場の期待を裏切って利上げを見送ったことで失望売りに見舞われた。ナゴルノ紛争も停戦合意を繰り返しつつも軍事衝突が止まず、東地中海ガス田問題やロシア製ミサイルシステム試射問題等でトルコを巡る地政学的リスクは増大の一方であり、コロナ不況の長期化、国内の消費者物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態の継続、外貨準備高の減少など、リラ売り要因が重なり合う中での利上げ見送りに対して、市場は利上げ催促、対策を求めてリラ売りを進行させている状況だが、エルドアン大統領は却って市場を逆なでしている状況だ。

【トルコの製造業は改善傾向を続ける】

【トルコの製造業は改善傾向を続ける】

10月26日に発表されたトルコの10月製造業信頼感指数は108.1となり9月の105.3から改善して市場予想の102.0を上回った。また設備稼働率も10月は75.4%となり9月の74.6%から改善、市場予想の74.4%を上回った。
製造業に関しては4-6月期の悪化から改善傾向を続けているが、欧米の感染拡大が深刻化する中で観光大国であるトルコの観光収入の大幅減少傾向は改善が難しいと思われる。10月30日には四半期ベースの観光収入と9月の観光客数の統計が発表されるので注目したい。

【フランスとの関係悪化】

10月26日にはエルドアン大統領がフランスのマクロン大統領を批判、フランス製品不買運動を煽り、フランス側もこの動きを批判して両者の対立が深刻化しつつある。トルコとフランスは東地中海ガス田探査問題でフランスがEUを代表する形でギリシャを支援して空軍を派遣するなどによりトルコ批判の急先鋒となっている。ナゴルノ紛争では紛争解決のための議長国連合に参加してトルコへの批判を強めている。
今回の不買運動はフランスで発生したイスラム過激派によるフランス人教師殺害事件に際して、マクロン大統領が殺害事件のきっかけとなったイスラム教徒を冒涜する風刺画について「フランスは風刺画文化をやめない」としたことが両者の対立を深刻化させている。

フランスの事件に対する対応についてはクウェートやサウジアラビアでもフランス製品や小売チェーンのボイコット運動が始まっており、バングラデシュでもマクロン大統領への抗議デモが発生するなど、イスラム教諸国によるフランスへの抗議という側面も強調されているので、単純にエルドアン大統領の乱暴な強硬姿勢ともいえないが、両国の関係悪化により東地中海問題やナゴルノ紛争およびロシア製ミサイル導入問題でのフランスとトルコの対立深刻化への影響は不可避と思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月15日夜安値を直近のサイクルボトムとして上昇したが、21日午後高値13.44円と22日の中銀政策金利発表前の高値13.42円をダブルトップとして下落期に入った。
22日に急落した後も安値更新が続いているので28日夜にかけての間へ下落継続しやすい状況にある。また23日夕安値からいったん下げ渋りを入れてから一段安しているため、23日夕安値を直近のサイクルボトムとした場合はボトム形成期が28日夕から30日夕にかけての間へ延びる可能性もあると思われる。強気転換には13.05円を超えてさらに続伸するような反騰が必要であり、そうした反騰が見られないうちは一段安警戒が続くとみる。

60分足の一目均衡表では22日夜の急落で先行スパンから転落した。このため強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとし、転落状態が続くうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後の悪化から下げ再開へ進むと考える。

60分足の相対力指数は20ポイント割れまで低下したがその後も20ポイント台にとどまっている。相場の安値更新に対して指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られないためまだ一段安余地ありとし、上昇再開には50ポイントに到達する反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12.90円を下値支持線、13.00円を上値抵抗線とする。
(2)13.00円以下での推移中は一段安警戒とし、12.90円割れからは12.80円、12.70円を段階的に試す流れとみる。市場をサプライズ的に反騰させるような情勢変化がないと安値更新の流れから本格的に脱却するのは難しい状況と考える。
(3)13.30円前後は戻り売りも出やすいとみるが13.30円超えから続伸の場合は13.50円手前への上昇を想定する。ただし上昇継続には13.50円を超えて続伸する勢いと13.30円台維持が必要と思われる。

【当面の主な経済指標等の予定】

10月28日
 16:00 10月経済信頼感 (9月 88.5、予想 85.1)
 16:30 トルコ中銀インフレレポート
 20:00 トルコ中銀MPC(金融政策決定会合)議事要旨
10月30日
 16:00 9月貿易収支 (8月 -62.8億ドル、予想 -43.0億ドル)
 16:00 7-9月期観光収入 (4-6月 41.0億ドル、予想 34.0億ドル)
 17:00 9月観光客数 前年比 (8月 -71.23%、予想 -48.8%)
11月2日
 16:00 10月イスタンブール製造業景況指数 (9月 52.8)
11月3日
 16:00 10月消費者物価上昇率 前年比 (9月 11.75%)
 16:00 10月消費者物価上昇率 前月比 (9月 0.97%)
 16:00 10月生産者物価上昇率 前年比 (9月 14.33%)
 16:00 10月消費者物価上昇率 前月比 (9月 2.65%)


注:ポイント要約は編集部

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