トルコリラ円見通し トルコ中銀の連続利上げ回避による利上げ催促のリラ売り続く(20/10/26)

トルコリラ円の週足は7月末から14週連続の陰線で毎週のように市場最安値を更新している。

トルコリラ円見通し トルコ中銀の連続利上げ回避による利上げ催促のリラ売り続く(20/10/26)

トルコ中銀の連続利上げ回避による利上げ催促のリラ売り続く

〇トルコリラ円、23日も再び安値試しへ向かい13.06で史上最安値更新
〇対ドルでは、23日午前へ戻した後はジリ安推移で最安値更新への余裕が乏しい
〇10/23ポンぺオ米国務長官との会談、アルメニア外相「停戦に向けた取り組みは続けられる」
〇エルドアン大統領、ロシア製地対空ミサイル「S400」の試射実施を公式に認める
〇リラ安基調が早急に改善する見込みは大きく後退した印象
〇最安値更新からは13.00、12.90を段階的に試す可能性

【概況】

トルコ中央銀行は10月22日のMPC(金融政策決定会合)で主要政策金利の1週間物レポレートを10.25%に据え置いた。市場はリラ安防衛のために12%への利上げを予想していたために政策金利の据え置き決定は予想外の弱気サプライズとなった。失望売りによりトルコリラ円は22日夜に直前の高値13.42円から直後の安値13.08円まで急落となり、急落一服でやや戻した後の23日も再び安値試しへと向かい夕刻には13.06円まで史上最安値を更新した。23日深夜には13.16円まで戻したものの終盤は失速して13.10円を再び割り込みつつあるところだ。
トルコリラ円の週足は7月末から14週連続の陰線で毎週のように市場最安値を更新している。

対ドルでのトルコリラは中銀利上げ見送り前に7.77リラまで持ち直していたが利上げ見送り発表から急落し、22日夜には7.97リラへ大幅下落となり市場最安値を更新した。その後は新たな安値更新を回避しているものの下げ一服で23日午前へ戻した後はジリ安の推移で最安値更新への余裕が乏しくなっている。週足では8月末から9週連続の陰線での下落となった。

【トルコ中銀への利上げ催促相場暫く続くか】

トルコ中銀は9月24日の前回会合で政策金利を2.0%引き上げて10.25%とした。エルドアン政権が利上げを拒むとの見方から市場は据え置き予想だったため、予想外の大幅利上げによる強気サプライズでトルコリラ円は直前の13.60円近辺の水準から13.93円へ急伸し、9月25日には14.01円まで高値を更新したのだが、9月27日にナゴルノ紛争がぼっ発してトルコの介在が取り沙汰されたことで地政学的リスクが高まるとみてのリラ売りが殺到して9月28日には13.28円まで急落して史上最安値を更新した。

トルコ中銀の連続利上げ回避による利上げ催促のリラ売り続く

ナゴルノ紛争がトルコ中銀の利上げによるリラ高を潰す結果となり、その後も紛争長期化やロシア製ミサイルシステムの実射実験、東地中海ガス田探査を巡るEU・ギリシャとの対立等によりトルコの地政学的リスクは増大するばかりとなっていた。このため10月会合では連続利上げに踏み切るのではないかとの見方が強まっていたのだが、結果は予想外に据え置きだった。ただ、政策金利の事実上の上限とされる後期流動性窓口(LLW)金利は従来の13.25%から14.75%に引き上げられているため、金融機関の中銀からの借り入れについては利上げされた状況であり、引き締め効果は多少あるかもしれない。

トルコ経済の潜在的な強さを踏まえれば、現下の地政学的リスクの緊張度を覚まし、政府と中銀が適切な金融政策をもってインフレを抑制すれば、アフターコロナの復興後には大きな成長へ進む可能性もあり、トルコへの投資妙味も増すというものだ。しかし現状の金融政策の不安定さ、政権による外交政策の危うさを踏まえると、それらが落ち着かないことには海外からの投資意欲も回復せず、リラ安を通じて正常化を促す動きが続くのではないかと思われる。暫くはリラが一段と下落するリスクを抱えた状況が続くと思われる。

【ナゴルノ紛争、東地中海問題】

ポンぺオ米国務長官は10月23日にアゼルバイジャンとアルメニア両国の外相と個別に会談した。アルメニアのムナツァカニャン外相は記者団に対して会談は非常に良好だったとし、停戦に向けた取り組みは続けられると述べた。トランプ大統領も「良好な進展」があったと述べたが大統領自身が両国外相と会談したかどうかは不明だ。
ナゴルノ・カラバフ周辺での戦闘は続いており、ロシアのプーチン大統領はこの紛争で既に5000人が死亡した恐れがあると述べている。

トルコのエルドアン大統領は10月23日にロシア製地対空ミサイル「S400」の試射を実施したことを公式に認めた。トルコは10月16日にS400の試射を行ったがその後は試射を公式に認める発言等はなかったのだが、23日にエルドアン大統領は「試射が実施された。米国の姿勢をトルコは全く意に介さない」「米国はロシア製の兵器であることを特に懸念しているようだがトルコはこれまでと同様に我が道を歩み続けると決意している」と述べた。
トルコはまた、21日にギリシャと権益を争う東地中海での探査活動を延長する方針を示しており、探査活動は当初の10月22日までの予定から10月27日まで延長された。
トルコのエルドアン政権による地政学的緊張を高める姿勢は変わらない。

【当面のポイント】

【当面のポイント】

トルコ中銀による利上げ見送りでリラ安基調が早急に改善する見込みは大きく後退した印象だ。すでに毎週のような史上最安値更新であり、相当程度の売られ過ぎ状態にあるともいえるので、きっかけを得れば大きな反騰へ向かう可能性は抱えているが、そうした期待にエルドアン政権もトルコ中銀も応えていない。
(1)当面、13.20円台を上値抵抗ゾーンとし、13.30円を超える反騰に入れないうちは一段安警戒とみる。
(2)最安値更新からは13.00円、12.90円を段階的に試す可能性があるとみる。
(3)反騰入りへのきっかけがあるとすれば、米大統領選挙当日前に株式市場及び為替市場がリスクオン全開となってドル全面安が発生し、株高に同調してドル円も円安へ向かう状況となってトルコリラ円もいったん持ち直しに入るという可能性があるだろうが、米大統領選挙前は市場全般が慎重姿勢になり弱気材料に反応しやすくなるとすれば状況好転も難しいと思う。また欧米の感染拡大の影響もトルコリラにとってはネガティブ要素になると思われる。

【当面の主な経済指標等の予定】

10月26日
 16:00 10月景況感 (9月 105.3、予想 102.0)
 16:00 10月設備稼働率 (9月 74.6%、予想 74.4%) 
10月28日
 16:00 10月経済信頼感 (9月 88.5、予想 85.1)
 16:30 トルコ中銀インフレレポート
 20:00 トルコ中銀MPC(金融政策決定会合)議事要旨

10月30日
 16:00 9月貿易収支 (8月 -62.8億ドル、予想 -43.0億ドル)
 16:00 7-9月期観光収入 (4-6月 41.0億ドル、予想 34.0億ドル)
 17:00 9月観光客数 前年比 (8月 -71.23%、予想 -48.8%)
11月2日
 16:00 10月イスタンブール製造業景況指数 (9月 52.8)
11月3日
 16:00 10月消費者物価上昇率 前年比 (9月 11.75%)
 16:00 10月消費者物価上昇率 前月比 (9月 0.97%)
 16:00 10月生産者物価上昇率 前年比 (9月 14.33%)
 16:00 10月生産者物価上昇率 前月比 (9月 2.65%)

注:ポイント要約は編集部

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