トルコ中銀は連続利上げに踏み切れるか
〇トルコリラ円、21日夕刻に13.44まで上昇するも深夜には円高に圧され13.32まで反落
〇対ドルでは、20日〜21日にかけてドル安感が強まる中続伸して21日深夜に7.78リラまで持ち直す
〇本日、トルコ中銀政策決定会合あり、連続利上げの観測が強まり市場は12%への利上げを予想
〇13.32以上での推移中は上昇余地あり、13.44超えからは13.50前後への上昇を想定
〇13.32割れからは13.25前後の下落を想定
【概況】
トルコリラ円の史上最安値更新を続けてきたが、10月15日夜安値13.21円からは持ち直しの動きに入り、10月21日夕刻には13.44円まで上昇して15日夜以降の高値を更新、10月9日深夜の戻り高値13.48円に迫った。しかし21日の為替市場はドル全面安の様相となり、ドル円が105円を割り込んで104円台序盤へ急落する一方、ドル安により対ドルでトルコリラの反騰が続いて強弱が交錯する状況となる中で21日深夜には円高に圧されて13.32円まで反落した。
21日深夜以降はドル円の急落が一服してやや戻したことでトルコリラ円も下げ一服となり13.30円台後半でしっかりしている。
【ドル全面安で急激な円高圧力】
ドル円は10月21日深夜に104.34円まで急落した。20日からユーロドルが独歩高に入り、21日は英国とEUのFTA協議再開報道からポンド/ドルが急伸、豪中銀の利下げ見通しで下げていた豪ドル米ドルもドル全面安を反映して反騰入りするなどドル安感が急激に強まったが、ドル円も21日夕刻には10月15日朝安値及び105円を割り込んでから売りの連鎖反応となり104円台序盤へ大幅下落となった。10月15日安値を割り込んだことにより、9月21日に104円割れしたところからの戻りは10月8日高値で一巡となり、下落再開に入ってきた印象だ。9月21日安値103.99円を割り込むと先安感も強まって円高が加速しかねず、その際はトルコリラ円にとっても大きな売り圧力となりかねないと注意したい。
【ドル全面安で対ドルでのトルコリラは反発】
トルコの外貨準備高減少、経常収支悪化とコロナ不況の長期化、政策金利が消費者物価上昇率を下回る実質マイナス金利状態、東地中海ガス田探査を巡るギリシャ・EUとの対立、ナゴルノ・カラバフ紛争への介在、NATO加盟国にもかかわらずロシア製ミサイルシステム導入による欧米との対立等、トルコリラ売り要因が目白押しとなる中でトルコリラは対円及び対ドルでの史上最安値更新を続けてきたが、対ドルにおいては10月14日夕刻に7.95リラの最安値を付けた後はナゴルノ紛争などによる売り一服となり、10月22日のトルコ中銀金融政策会合での連続利上げ観測が浮上する中で上昇に転じ、20日から21日にかけてはドル安感が強まる中で続伸して21日深夜には7.78リラまで持ち直してきた。
依然として史上最安値近辺での推移ではあるが、22日のトルコ中銀が連続利上げに踏み切り、ナゴルノ紛争が落ち着くならば、リラ売りもいったん収まる可能性がある。
【トルコ中銀金融政策決定会合、ナゴルノ紛争両国の停戦動向】
10月22日にトルコ中銀の金融政策決定会合がある。先の9月会合では4会合ぶりに利上げに踏み切り、利上げ幅も2.0%と大きかったことで現状維持とみていた市場にとってはサプライズとなってトルコリラはいったん急伸した。しかし直後の9月27日に勃発したナゴルノ紛争から急落に転じ、中銀利上げ前の水準を割り込んで最安値更新へと進んだ。
22日のトルコ中銀金融政策決定会合では、当初は連続利上げには進まずに現状維持に留まるのではないかとの見方が有力だったが、この1週間で連続利上げ観測が強まっており、市場は12%への利上げを予想している。予想以上の利上げ幅になればトルコリラには強気サプライズとなりトルコリラ円も大きく反騰する可能性があるが、予想を裏切る小幅な利上げに留まる場合は一時的な上昇反応があっても早々に失速する可能性があり、現状維持だと弱気サプライズとなって急落商状に陥ることも懸念される。
ナゴルノ紛争を巡ってはアルメニアのサルキシャン大統領がNATOやEUと協議するため21日にブリュッセルに向かった。NATOのストルテンベルグ事務総長やミシェルEU大統領と会談する予定とされる。
ロシアのプーチン大統領とフランスのマクロン大統領は10月20日に電話会談を行い停戦への協力姿勢を示した。また23日にはアルメニアとアゼルバイジャン両国の外相がポンペオ米国務長官とワシントンで会談すると発表されている。紛争終結ないしは紛争拡大阻止へ向けての国際的な圧力も増している状況だ。
ただし、エルドアン大統領は21日に「目と心を我々に向けている同胞全員と共にあり続ける。我々は東地中海で我が国とキプロス島トルコ人の権利をはく奪する者らに屈しなかった。アゼルバイジャンが占領下にある領土を奪還しようとしていることも支持している。我が国民の独立と未来に伸びる手を全て折る」と述べており、東地中海問題及びナゴルノ紛争での強硬姿勢を改めて表明している。
トルコ中銀が市場の予想に応えて連続的な大幅利上げへ進み、ナゴルノ紛争が落ち着くなら、これまで史上最安値を更新し続けてきたトルコリラも大きく持ち直しに入る可能性もあるところだが、両問題で失敗するとさらなるリラ安を招いて通貨危機を発生させかねないという状況でもあるだろう。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月15日夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして22日のトルコ中銀金融政策会合前後への上昇を想定してきたが、21日夕高値からいったん反落したため、21日夕高値を上抜き返す場合は新たな強気サイクル入りとするのを妥当とみて21日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は22日夜にかけてまでの間とするが、政策金利発表から下落基調が続く場合は来週前半への下落継続とし、21日高値を上抜くところからは新たな強気サイクル入りとして26日から28日にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では21日夜の反落では先行スパン転落を回避しているが遅行スパンが悪化している。先行スパン転落を回避するうちは遅行スパン好転から上昇再開の可能性ありとみるが、先行スパン転落からはもう一段安へ進むとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は21日夜の下落時に40ポイントを割り込んだがその後は50ポイント前後での推移に落ち着いている。再び40ポイントを割り込む処からは下げ再開とみて20ポイント台への低下を伴う下落を想定するが、60ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとみる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月21日夜安値13.32円下値支持線、21日夕高値13.44円を上値抵抗線とする。
(2)13.32円以上での推移中は上昇余地ありとして13.44円超えからは13.50円前後への上昇を想定する。政策金利発表から急伸の場合は13.60円前後へ上値目途を引き上げる。また21日夕高値を超えた後も13.40円以上での推移なら23日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.32円割れからは13.25円前後への下落を想定する。政策金利発表から急落商状の場合は13.20円前後へ下値目途を引き下げ、23日への続落を想定する。また13.30円以下での推移なら23日も安値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
10月22日
16:00 10月消費者信頼感指数 (9月 82.0、予想 79.0)
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 10.25%、予想 12.0%)
20:30 週次外貨準備高 (10月9日時点 411.2億ドル)
10月26日
16:00 10月景況感 (9月 105.3)
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