トルコリラ円見通し トルコ中銀は連続利上げせず、弱気サプライズで利上げ催促の最安値更新(20/10/23)

利上げ見送りを受けてトルコリラ円は13.08円まで急落して史上最安値を更新した。

トルコリラ円見通し トルコ中銀は連続利上げせず、弱気サプライズで利上げ催促の最安値更新(20/10/23)

トルコ中銀は連続利上げせず、弱気サプライズで利上げ催促の最安値更新

〇トルコリラ円、10/22金融政策会合後13.08まで急落、史上最安値更新
〇トルコリラ、対ドルでも7.97リラ台へ急落して史上最安値を更新
〇10/22トルコ中銀政策決定会合、市場の予想に反し利上げ見送り、弱気サプライズでリラ急落
〇13.30以下での推移中は一段安警戒とし、13.08割れからは13.00、12.90を段階的に試すとみる
〇13.25超えからは13.30手前への上昇を想定するが、13.25以上は反落警戒圏とする

【概況】

トルコ中銀は10月22日の金融政策会合で主要政策金利の週間レポレートを現行の10.25%に据え置いた。利上げ見送りを受けてトルコリラ円は13.08円まで急落して史上最安値を更新した。急落一服でその後は13.10円台後半を中心として揉み合いとなっているが、売り材料一巡による買い戻しというよりも下げ一服にとどまっている印象だ。
対ドルでは発表前の7.77リラ台から7.97リラ台へ急落して史上最安値を更新した。急落一服で発表直後の安値をその後は更新していないものの7.90リラ台の安値圏に留まっている。

【トルコ中銀、利上げせず、その他リラ安要因も継続】

トルコ中銀は9月24日の前回会合で政策金利を2.0%引き上げた。リラ安が進行する中でもエルドアン政権が利上げを拒むであろうとの見方から市場は現状維持を想定していたために予想外の大幅利上げを強気サプライズとしてトルコリラ円は直前の13.60円近辺の水準から13.93円へ急伸、翌日の25日には14.01円まで高値を更新した。しかし9月27日のナゴルノ紛争ぼっ発により28日には13.28円まで急落して史上最安値を更新、中銀の利上げによる上昇を一挙に解消してしまった。その後もナゴルノ紛争長期化、ロシア製ミサイルシステムの実射実験、東地中海ガス田探査を巡るEU・ギリシャとの対立等、地政学的リスクの増大でリラ安基調が継続してきたため、今回の中銀会合では2会合連続の利上げによりリラ防衛姿勢を示すのではないかと市場は予想していた。
しかし中銀は利上げを見送った。中銀は声明で「世界経済の回復をめぐり不確実な状況が続いている」としたが、トルコ国内のインフレ進行に対しては前会合での利上げにより「かなりの金融引き締めを実現した」として現状維持を決定したとした。

トルコリラ安の背景は、トルコの外貨準備高減少、経常収支悪化とコロナ不況の長期化、政策金利が消費者物価上昇率を下回る実質マイナス金利状態、東地中海ガス田探査を巡るギリシャ・EUとの対立、ナゴルノ・カラバフ紛争への介在、NATO加盟国にもかかわらずロシア製ミサイルシステム導入による欧米との対立等である。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大は続き、欧州の第二波、米国の第三波の拡大によりトルコ経済への打撃も大きく、特に観光収入の激減が続いている。トルコ国内の感染者数も1日の増加数が2千人を超える規模まで増加しており第二波へ入っている印象が強まっている。コロナ不況からの回復が遅れれば外貨準備不足はさらに深刻化して欧米投資家のリラ放れ、国内投資家のリラからハードカレンシーへの逃避が進む。
ギリシャ沖ガス田探査問題も一度はギリシャとの協議による緊張緩和の兆しもあったがここにきて再び緊張感が増している。

ナゴルノ紛争についてはロシアの仲介によりこれまで二度の停戦合意がなされたもののいずれも停戦合意発表直後から戦闘が続いており解決の目途がつかないが、22日も激しい戦闘が発生している。23日にはポンペオ米国務長官がアゼルバイジャン、アルメニア両国の外相と会談する予定とされているので米政府による仲介が功を奏する可能性もあるが、アゼルバイジャンを兄弟民族として支援するトルコの強硬姿勢は変わらないと思われ、アゼルバイジャンの石油や天然ガスのパイプラインへの攻撃などによる紛争規模のエスカレートも懸念される。
こうした状況の中で中銀が利上げを見送ったため、市場は一層の利上げ催促的なリラ売りへ動くことになるのだろう。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、10月15日夜安値を直近のサイクルボトムとして上昇してきたが、21日午後高値13.44円と22日の中銀政策金利発表前の高値13.42円をダブルトップとして下落期に入った印象だ。22日夜安値の後は下げ渋りの持ち合いとなっているので、安値更新を回避した動きが続けば、22日夜安値が直近のサイクルボトムとなる可能性があるが、底割れすれば新たな下落期入りとして27日夜から29日夜にかけての間へ続落しやすくなると思われる。強気転換には13.30円を超える反騰が必要と思われる。

60分足の一目均衡表では22日夜の急落で先行スパンから転落した。このため強気転換は先行スパンを上抜き返すところからとし、転落状態が続くうちは遅行スパンが一時的に好転してもその後の悪化から下げ再開へ進むと考える。

60分足の相対力指数は22日夜の急落で20ポイント台前半まで急降下した。その後も30ポイント台での横ばい程度にとどまっているのでまだ一段安余地ありとみる。上昇再開には50ポイントに到達する反騰が必要と思われる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、10月22日夜安値13.08円を下値支持線、13.30円を上値抵抗線とする。
(2)13.30円以下での推移中は一段安警戒とし、22日夜安値割れからは13.00円、12.90円を段階的に試すとみる。12.90円以下は反騰注意とするが、13.25円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)13.25円超えからは13.30円手前への上昇を想定するが、13.25円以上は反落警戒圏としてその後の13.20円割れからは下げ再開とみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

10月26日
 16:00 10月景況感 (9月 105.3)



注:ポイント要約は編集部

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