ドル円見通し 106円台到達、株高と米長期債利回り上昇が押し上げる(20/10/8)

ドル円は10月7日夕刻に106.10円まで上昇、9月14日以来の106円台到達となった。

ドル円見通し 106円台到達、株高と米長期債利回り上昇が押し上げる(20/10/8)

106円台到達、株高と米長期債利回り上昇が押し上げる

〇ドル円、7日夕刻に106.10まで上昇し9/14以来の106円台到達
〇トランプ氏のツイート内容に株式市場は楽観的な反応となるも為替市場はやや慎重な反応にとどまる
〇米10年債利回りは7日に0.79%となり6/5以来の高水準に
〇105.70以上の推移中は一段高余地あり、7日夕高値106.10超えから106円台中盤試しへ
〇105.70割れから続落の場合は弱気転換注意、7日早朝安値105.46試しとする

【概況】

ドル円は10月7日夕刻に106.10円まで上昇、9月14日以来の106円台到達となった。9月21日に104円を割り込んだ処から持ち直しに入り、9月30日には105.80円まで上昇したが105円台中後半では上値の重い状況が続いていた中、10月2日に米大統領のコロナ陽性報道により105円割れまで急落した。この急落が一時的なものにとどまり、その後は大統領軽症説や7日夜の米雇用統計での失業率改善、株高債券安による米長期債利回りの上昇を背景に持ち直し、5日には米大統領退院からの続伸で5日深夜には105.58円まで上昇して30日高値に迫っていた。

10月6日は米大統領が与野党が協議していた追加経済対策に対して民主党が妥協しないとして協議中断を表明したことで株安となり、為替市場ではリスク回避的なドル買い戻しが進んだが、米長期債利回りが緩んだことでドル円におけるリスク回避的円高は7日早朝安値105.46円までの小幅な下落にとどまり、ダウ先物が反発する中で為替市場のリスク回避感も回復し始めてユーロや豪ドル等が上昇、ドル円も株高同調と米長期債利回りの再上昇を背景に騰勢を強め始め、夕刻には106.10円を付けて106円台に到達した。
7日夜はNYダウの大幅上昇がリスク選好感を強めたものの、株高債券安による米長期債利回り上昇もあり、ドルストレートではドル安へ進みきれなかったためにドル円も上値が抑えられたが、米長期債利回り上昇が下支えとなる106円を挟んでの高値圏持ち合いにとどまっての推移となった。

【米大統領に振り回される展開続く】

NYダウは6日に米大統領の与野党協議中断宣言からの売りで前日比375ドル安と大幅下落したが、この日はトランプ米大統領が追加の新型コロナウイルス経済対策の一部を早期に実現すべきとツイートしたことで前日の下落を解消する530.70ドル高と反騰した。米大統領は250億ドル規模の航空会社支援策や1350億ドル規模の中小企業支援策については「議会が直ちに承認すべきだ」とツイートし、1人当たり1200ドルの現金給付についても実施する姿勢を示した。7日夜は大統領が大量にツイートしていたが、大統領選での出遅れを挽回しようと躍起になっているようで、発言内容も前日の全否定的な姿勢から一変するものだが、焦りや治療薬の影響でかなりテンションも上がっている印象のため、今後も態度の豹変やバイデン候補及び野党への強硬姿勢を強める可能性もあり、株式市場はかなり楽観的反応を見せたものの為替市場はやや慎重な反応にとどまったところもあるようだ。

株高の一方で米長期債利回りの上昇が目立った。米10年債利回りは7日に前日比0.05%上昇の0.79%となった。8月28日の0.78%を超えて6月5日の0.95%以来の高水準となっている。米10年債利回りは3月初旬に0.31%まで大幅低下した後は0.7%を挟んだ持ち合い状態での推移となり新たな安値更新を回避しつつも下げ止まりの状況にあるが、8月4日以降は上昇基調が目立ち始めている。
米連銀が物価上昇率が2%を超えても長期間のゼロ金利を維持するとし、前回のFOMCでのメンバー予想においては2023年末までのゼロ金利継続見通しを示したが、3月に拡大した量的緩和規模をさらに拡大する他、YCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)により長期金利を抑え込もうという積極政策へは進まず、米政府による財政的な経済対策が重要として中銀としての手詰まり感を示している中で、大量の国債発行による債券需給のゆるみが長期債利回りの上昇を招き始めている印象だ。市場としては米連銀に一段の緩和的姿勢を催促する意味合いで債券売り・長期債利回り上昇を助長している心理もうかがえる。

ドル円にとっては株高によるリスク選好感からの円安と、米長期債利回り上昇による日米金利差からのドル高圧力が重なればドル高円安へ向かいやすくなる。そうした流れが見えていることで10月2日の一時的急落を消化して一段高に入ったのだろうと思われる。
ただし、米大統領選挙の決着がつくまでは大統領の容体、発言等により急激にリスク回避的な動きへ向かう可能性があり、その際はドル円においても円高へ一挙に走る可能性も抱えている状況と思われる。当面は9月21日安値からのリバウンド継続により戻り高値を慎重に試しつつ、情勢がリスク回避へ向かえば流れも変わるというスタンスで構えたいところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、2日午後へ急落してから急落幅の半値以上を戻したために5日朝時点では2日午後安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとした。またトップ形成期を5日午前から7日午前にかけての間と想定したが、7日早朝へいったん下落してから一段高に入り、前回サイクルトップも30日午前高値からも5日以上を経過しているので、7日早朝安値を直近のサイクルボトムとした新たな強気サイクル入りとする。トップ形成期は8日深夜から13日未明にかけての間とし、弱気転換は7日早朝安値割れからとする。

60分足の一目均衡表では7日午後の上昇で遅行スパンが好転し、7日早朝に先行スパンへ潜り込んだところから再び上抜けてきている。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、新たな高値更新へ進めないと遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは下げ再開を警戒、先行スパン転落からは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先へ切り替える。

60分足のMACDは7日夕刻からの上げ渋りでDクロスしているが、105.70円以上での推移中は次のGクロスから上昇再開とみるが、105.70円割れからは下げ再開注意としてDクロス中の安値試し優先とする。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、105.70円を下値支持線、10月7日夕高値106.10円を上値抵抗線とする。
(2)105.70円以上での推移中は一段高余地ありとし、7日夕高値超えからは106円台中盤(106.35円から106.65円)を試すとみる。106.50円以上は反落注意とするが、105.70円以上での推移なら9日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)105.70円を割り込んでもその後に105.90円を超えるところからは上昇再開とするが、105.70円割れから続落に入る場合は弱気転換注意として7日早朝安値105.46円試しとする。底割れからは弱気サイクル入りとなるため105.25円前後、さらに105円を目指す下落期入りと考える。また105.0円以下での推移が続く場合は9日も安値試しへ向かう可能性があると考える。

【当面の主な予定】

10/8(木)
休場、中国
未 定 (日) 黒田東彦日銀総裁、支店長会議で挨拶
14:00 (日) 日銀地域経済報告[さくらリポート)
14:00 (日) 9月 景気ウオッチャー調査-現状判断DI (8月 43.9、予想 44.9)
15:00 (独) 8月 貿易収支 (7月 192億ユーロ、予想 160億ユーロ)
15:00 (独) 8月 経常収支 (7月 200億ユーロ、予想 162億ユーロ)
16:25 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、パネル討論会参加
20:30 (欧) 欧州中央銀行(ECB)理事会議事要旨
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 83.7万件、予想 82.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1176.7万人、予想 1140.0万人)
27:30 (米) バーキン・リッチモンド連銀総裁、同連銀主催イベントで講演
31:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、バーチャル会合参加

10/9(金)
08:30 (日) 8月 全世帯消費支出 前年同月比 (7月 -7.6%、予想 -6.7%)
15:00 (英) 8月 月次GDP 前月比 (7月 6.6%、予想 4.7%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産指数 前月比 (7月 5.2%、予想 2.6%)
15:00 (英) 8月 鉱工業生産指数 前年同月比 (7月 -7.8%、予想 -4.6%)
15:00 (英) 8月 製造業生産指数 前月比 (7月 6.3%、予想 3.0%)
15:00 (英) 8月 商品貿易収支 (7月 -86.35億ポンド、予想 -91.00億ポンド)
15:00 (英) 8月 貿易収支 (7月 10.74億ポンド、予想 0.00億ポンド)
23:00 (米) 8月 卸売在庫 前月比 (7月 -0.3%、予想 0.5%)
23:00 (米) 8月 卸売売上高 前月比 (7月 4.6%)

注:ポイント要約は編集部

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