ユーロはもみあい継続も下げに注意
〇ユーロドルFOMCのイベント通過後改めてECBの追加緩和に目が向かいユーロ売り
〇ファンダメンタルな要因、四半期末の実需、英国EU離脱協議の思惑、米国大統領選等がここからの材料
〇テクニカルにも今週もユーロドルはもみあい継続という見方が妥当
〇今週は横方向への動きを考え1.1800レベルをサポートに、1.1900レベルをレジスタンスとする流れか
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロは、水曜NY市場までは1.18台後半の狭いレンジでほとんど動かず、FOMCのイベント通過後から改めてECBの追加緩和に目が向かいユーロ売りの動きとなりました。ただ、その動きも翌日東京前場までと短くドル円での円高の動きからドルに追随する動きとなってNY後場にはFOMC前の水準へと戻し、週初と同水準での週末クローズとなりました。
これまではユーロやポンドを中心として欧州通貨が市場の主役となっていましたが、先週は主役をドル円に渡しドル円での円高が目立ついっぽうでユーロドルは一時的に動きはあったものの1.18台半ばから後半をもみあいの中心に方向感がはっきりしない週となりました。主要国の金融政策イベントが一巡し9月下旬となったことで、ここからはファンダメンタルな要因と四半期末の実需、英国の移行期間後の協議に向けての思惑、そして徐々に本格化してきた米国大統領選といったあたりが主要な材料となってきます。
まずファンダメンタルな要因ですが、今週は欧州各国のPMI速報値ならびに各国中銀総裁を含むECB関係者の講演が連日のようにあります。PMIはコンセンサスからどの程度ズレる数字となるかではあるものの、前回発表された数字に比べて今回の数字の方が概して弱めの予想となっている点はやや気になるところです。予想以上に弱い数字となる場合には緩和思惑が強まりユーロ売りの材料となりやすいと考えられます。ECB関係者の講演も含めて注意です。また期末要因は今週よりも来週初となりますので、次回の週報までに何か出てきたら触れることとします。
次にブレグジット移行期間後の協議は当初は難航していましたが、ここに来て英国側の譲歩姿勢が報道されることもあり、これまでのジョンソン首相の強硬に出てEU側から妥協案を引き出すいつものパターンという流れにも見えます。しかし、10月末が期限、実質的にはジョンソン首相が依然示した10月15日までに決まらないと、いよいよ後が無い状況になりますので、決まるまでポンド売りとそれに影響を受けてのユーロ売りとなりやすいでしょう。
米国大統領選は直接的な影響は無さそうですが、9月29日に第1回のTV討論会がありますし、ここに来て以前よりもバイデン前副大統領のリードは少なくなってきているという世論調査を見ていると、今回ばかりはコロナ禍で米国をはじめ世界が混乱している中で現政権の継続に繋がる現職トランプ大統領が差を縮める動きの方が好感される可能性が高いように考えています。
テクニカルにも見ていきましょう。日足チャートです。
今週も先々週からの各ラインをそのまま残してありますが、変化があったのは週半ばに下げた際にサポートライン(ピンク)を一時的に下回ったものの下げきれずに戻したこと、また上側のラインが拡散型のもみあいから水色のラインで示した高値を切り下げるパターンとなってきたことで、高値圏での膠着がいよいよ終盤に近付いてきた印象です。どちらかに明確に抜けるまでは方向感は示せないものの、ユーロをとり囲む材料を考えると依然として下抜けに注意したいところです。ただ、下には先週安値1.1737、6月後半押しと高値との38.2%押し1.1689とあり簡単には抜けそうもありません。
テクニカルにも今週もユーロドルはもみあい継続という見方が妥当に思えます。個人的にはドル円の動きがユーロ円に波及し、その動きがユーロドルにも出ての下げという見方をしたいところですが、今週はまだそうした流れは出にくそうです。今週は横方向への動きを考え1.1800レベルをサポートに、1.1900レベルをレジスタンスとする流れを見ておきます。
今週のコラム
今週はユーロポンドの日足チャートを見ます。
8月下旬にはユーロ売りが目立っていましたが、9月に入りブレグジット移行期間後への不透明感が強まったことでポンド売りが強まり、それまで売っていた向きの買い戻し、さらにはレジスタンスラインを上抜けたことで一時0.93に近づく強い上昇を見せました。
その後は利食いと状況が若干好転してきていることもあり押しが入りましたが、下げた水準は9月安値と高値の半値押し(赤の水平線)でほぼ止められています。状況がはっきりするまでは積極的にポンドを買うことが難しいことには変わりませんが、対ドルよりも対ユーロで、つまりユーロポンドで丁寧に押し目買いで拾っていくストラテジが良さそうなチャートと言えるでしょう。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
9月21日(月)
08:01 英国9月住宅価格
21:45 ラガルドECB総裁講演
23:00 オーストリア中銀総裁講演
9月22日(火)
16:30 英中銀総裁講演
17:00 フランス中銀総裁講演
21:00 パネッタECB理事講演
23:00 ユーロ圏9月消費者信頼感速報値
23:00 レーンECB理事講演
23:30 ムニューシン財務長官、パウエルFRB議長議会証言(下院)
9月23日(水)
15:00 ドイツ10月GFK消費者信頼感
16:15 フランス9月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ9月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏9月製造業・サービス業PMI速報値
17:30 英国9月製造業・サービス業PMI速報値
19:00 スペイン中銀総裁講演
9月24日(木)
15:45 フランス9月企業景況感
16:30 スイス中銀政策金利発表
17:00 ドイツ9月ifo企業景況感
23:00 英中銀総裁講演
**:** EUサミット(〜25日)
9月25日(金)
08:01 英国8月GFK消費者信頼感
16:00 フランス中銀総裁講演
17:45 スペイン中銀総裁講演
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時〜NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
9月14日(月)
ユーロドルは前週のECB理事会前後に出ていたユーロの水準を懸念していないとのECB関係者の発言がユーロ買い材料、英国とEUとのブレグジット移行期間後の協議難航懸念がポンドの上値を抑えユーロ売り材料という構図は週明け後も続きました。ユーロドルはNY市場前場に1.1888レベルの高値をつけましたが、その後はポンドの下げとともにやや押して引けました。
9月15日(火)
ユーロドルは、東京市場では買いが先行し前日高値を上抜け1.1900レベルの高値をつけました。しかし、その後欧州市場に1.1901の高値をつけた後はドル円同様にユーロ円でも円買いの動きとなり、ユーロドルにもユーロ売りが波及。ザラ場のチャートでダブルトップをつけた格好となったこともあって1.1840レベルまで水準を下げ安値圏での引けとなりました。
9月16日(水)
ユーロドルは、欧州市場まではドル円と同様にドル売りの流れとなり一時1.1883レベルの高値をつけました。しかし、前日同様にドル円の動きがユーロ円に波及して全般的に円買いが強まったこと、またNY市場ではEU複数の中銀総裁が追加緩和の可能性を示唆したこともあってFOMC直後にユーロが対ドル、対円で売られ1.1788レベルの安値をつけ、上値の重たいまま引けました。
9月17日(木)
ユーロドルは前日NY市場の流れを継続してユーロ売りが先行、東京昼過ぎには1.1737レベルの安値をつけました。その後はドル円でのドルの動きに追随して急速に買い戻しが入り、海外市場でも一貫してユーロ買いが強まりNY引け間際には1.1853レベルの日中高値をつけ、そのまま高値圏での引けとなりました。
9月18日(金)
ユーロドルは1.1850近辺で終日方向感のはっきりしない展開を続けました。値幅は伴わなかったもののユーロ円の下げで上値の重たいままNY市場入り、実需のユーロ買いで買い戻されという動きは見られましたが、週末前のポジション調整が中心の動きに終始していました。
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