悪夢(2016年6月24日)
早朝は「残留派」優位、離脱派「盟主」ファラージ党首は一時敗北宣言
現実感のない展開でした。
日本時間の朝6時にEU離脱の国民投票が締め切られると、調査会社YouGovがスカイニュースのために実施した、投票を終了した人に対する世論調査の結果を52:48で「残留」優位と発表、前々週の女性下院議員殺害以降一貫して「残留派」の優勢が伝えられていたこと、ブックメーカーのオッズが9割近い確率での「残留」を示していたこともあり、為替市場は早くも「残留」の最後の織り込みにかかり、ドル円は106.84、ポンドドルは1.5018まで上昇しました。
しかもご丁寧にも「離脱派」の盟主極右政党英国独立党のナイジェル・ファラージ党首が「残留派が競り勝ちそう」と事実上の敗北宣言。「われわれは戦闘には負けたが戦争には負けていない」とドゴールの名言まで持ち出す残す念の入れようでした。
サンダーランド地区開票結果から「異変」の兆候
しかし、8時前にオピニウムが行った世論調査が発表され「残留」「離脱」の逆転が伝えられると、為替は上げ幅を戻し、更に開票結果が報告され始めるとサンダーランド地区をはじめとする「離脱派」が優位の地域の得票差が当初の予想を上回る一方で「残留派」優位の地域での得票差が当初予想に及ばない情勢が明らかになってきて、ドル円、ポンドドルが急落、一時103円まで下落しました。その後しばらくは「残留」「離脱」が一進一退を繰り返す中で105円前後での様子見となりました。
ロンドン各地区の「残留派」不発で「離脱」決定的に
そして、10時を回るころに一部で「残留」支持と見られていた地域で「離脱派」が逆転するケースが出てきて「残留派」の情勢悪化が決定的となり再度為替は下値試し。
更に最後の望みとされたロンドンを中心とする人口が多く「残留派」が強いと考えられていた南部都市部での得票差での挽回がほぼ不可能と判明、11時過ぎにITVニュースが75%の確率で離脱派勝利と分析。11:30ごろからドル円、ポンド、株に一気にパニック的な売りが発生しました。
ドル円は99円丁度近辺までつけましたが、介入と見られる動きに(後に介入ではなかったことが確認されています)短時間で102円台まで値を戻す値動きの荒い展開となり、一方ポンドの対ドルでの下落はその後も止まらず一時安値1.3229まで下落したため、双方の影響を受けたポンド円は一日を経ずして高値160.18から安値133.31まで実に26円強の値幅となりました。
日経平均暴落、ファラージ党首改めて勝利宣言
日経平均も朝方はプラス圏で推移したものの、開票とともに同じく下落の道を辿り、一時1,300円を越える暴落となり、結局安値圏かつ15,000円割れの14,952円で終了しています。日経平均の下落率は-7.92%。下げ幅は1,286円でした。
午後に麻生財務相が記者会見を行いましたが、為替介入等の具体的なコメントはありませんでした。
朝方敗北宣言を行い「名言」を残した英国独立党ファラージ党首は改めて勝利宣言を行い「英国独立に向けた夜明けは近い」「6月23日は独立記念日にしよう」などと述べ、そのシュールさを際立たせていました。一方でキャメロン首相は辞意を表明しました。
金融市場、世界経済への悪影響、地政学リスク、英国分裂
可能性は認識しつつも、最後は「残留」で決着をメインシナリオとしていた市場にとって英国のEU離脱の現実は最悪の事態となりました。世界の大きな枠組みを変える出来事だけに影響の範囲が短期間では特定しにくく、今後の金融市場にも長く影響を残しそうです。
新興国経済の不調、米国経済の失速懸念と今年前半上昇力を欠いていた世界経済にとってはありがたくない痛手と考えざるを得ませんし、欧州の政治的な秩序の瓦解の始まりと捉えた場合には、地政学的リスクの高まりも心配されるところです。
また英国国内の問題としても62%と明確にEU残留の意思を示したスコットランドの独立の動きの再燃が当初より懸念されていて、今後英国自体にも分裂の危機が訪れるとの指摘もあります。
最大のとばっちりは日本?
何よりも、有事の円買いが働いたために他の地域に比べて株価の下げ幅の大きい日本はとばっちりを受けたとしか言いようがなく、かといって急落局面の介入は許容されても立ち位置の違う他国との協調介入など望むべくもなく、ましてや押し上げ介入など許されるとも思えず、現状の105円以下の為替レートの定着も懸念されるところです。100円割れは介入警戒感が強く、短期間での100円割れはないものの今後の他市場動向次第で時間をかけての円高はあり得ると思われます。今後の財務省、日銀の政策対応が注目されます。
英国株は下げ幅縮小
欧州株は軒並み下落していますが、英FT指数は一旦8%超下落の後下げ幅を急速に縮小しています。
(それにしてもずっと高いオッズで離脱の巨額のベットを受け続けたブックメーカーはリスクヘッジ出来ているのでしょうか?)
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