トルコリラ円見通し 史上最安値を更新、対ドル及び対ユーロでも安値更新続く(20/9/15)

対ドル及び対ユーロでのトルコリラ安が重なって14.10円を割り込み、9月15日未明には14.06円まで下げて8月10日付けた安値14.07円を割り込み史上最安値を更新した。

トルコリラ円見通し 史上最安値を更新、対ドル及び対ユーロでも安値更新続く(20/9/15)

トルコリラ円見通し 史上最安値を更新、対ドル及び対ユーロでも安値更新続く

〇トルコリラ円、9/15未明に14.06まで下げ、史上最安値更新
〇対ドル、9/14終値ベースで史上最安値を更新、対ユーロでは取引時間中の最安値を更新
〇米ムーディーズによるトルコ格下げ背景にリラ売加速、トルコ政府・中銀の通貨防衛に注目
〇鉱工業生産・小売売上高ともに回復するも伸びは鈍化、急激な回復感落ち着く
〇14.15以下での推移中は一段安余地あり、14.06割れからは14.00割れを目指すとみる
〇14.15超えからはいったん強気サイクル入り14.20前後試しとするが、14.20以上は反落警戒

【概況】

トルコリラ円(BID)は9月11日におけるムーディーズによる格下げ報道から下落感が強まっていたが、14日夜にかけてはドル円において円高ドル安が進んだことと格下げによる対ドル及び対ユーロでのトルコリラ安が重なって14.10円を割り込み、9月15日未明には14.06円まで下げて8月10日付けた安値14.07円を割り込み史上最安値を更新した。既にトルコリラ円(ASK)では8月10日安値14.32円を8月18日に14.25円で割り込み、その後も史上最安値更新が続いてきたが、14日は14.08円まで最安値を更新した。

【対ドルでは終値ベースで史上最安値を更新、対ユーロでは取引時間中の最安値を更新】

トルコリラは対ドルで9月14日安値で7.5013リラを付けて9月10日安値7.5015リラに迫り、終値ベースでは9月9日の7.484リラを9月14日終値7.488リラで割り込み史上最安値を更新した。対ドルでの日足は9月7日から9日まで3日続落、10日に下げ一服後に11日から14日まで再び3日続落となった。
トルコリラは対ユーロでは9月14日安値で8.910リラを付けて史上最安値を更新、終値ベースでも最安値更新となっている。9月10日夜へユーロドルが上昇し、いったん反落したものの11日未明からユーロ高ドル安が再燃したことで対ドルに先行する形で対ユーロでの最安値更新となったようだ。

下落の背景はムーディーズによる9月11日のトルコ格下げによる先行き不透明感を背景としたリラ売りだ。米格付け大手のムーディーズは9月11日にトルコの格付けを「B1」から「B2」に引き下げ、格付け見通しも「ネガティブ」を維持した。信用リスクが増す中で有効な手だてを講じることができておらずその姿勢もみられないと格下げの根拠を指摘している。
8月21日時点でフィッチ・レーティングスはトルコの信用格付けを投資適格級から3段階下の「BBマイナス」で据え置おいたものの、トルコの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げている。格付け会社による格下げは欧米投資家のトルコ投資意欲を後退させ、リラ安をさらに助長しかねないものであり、トルコ政府及び中銀がしっかりと通貨防衛への姿勢を示せるのかどうか、今後は試されると思われる。
トルコ中銀の次回金融政策決定会合は9月24日であり、8月までの3会合は連続で政策金利を据え置いてきたが、9月3日に発表された8月の消費者物価上昇率は前年比11.77%で政策金利の8.25%を大幅に上回る実質マイナス金利状態が続いている。

【格下げでもトルコ株式市場は堅調、鉱工業生産、小売売上高共に前年比プラス圏】

9月14日に発表されたトルコの7月鉱工業生産は前年比4.4%増となり6月の0.4%増から改善したが、前月比は8.4%増となり6月の17.8%増からは大幅に鈍化した。3月後半からのコロナショック不況により4月には前月比30.2%減まで落ち込んだが、最小限のなロックダウンにとどめて経済活動も継続したことで5月には18.3%増、6月も17.8%増と大きく回復してきた。前年比でプラス圏まで持ち直したことで伸びも緩くなったといえるが、急激な回復感はやや落ち着いたといえる。

トルコリラ円見通し 史上最安値を更新、対ドル及び対ユーロでも安値更新続く

7月の小売売上高は前年比11.9%増となり6月の0.4%増から大幅に改善したが、前月比は9.5%増にとどまって6月の18.0%増からは伸びが鈍化した。小売もコロナ不況により4月には前月比23.0%減まで落ち込んだが、その後は5月の6.5%増、6月に18.0%増と持ち直してきた。前年比では4月に20.4%減まで落ち込んでから6月にプラス圏に届き7月も11.9%増と改善してきた。前月比はやや低下したものの、7月からの経済活動再開の本格化により回復感が強まったという印象だ。
しかし、コロナ不況による貧困層、非正規雇用の悪化はかなり深刻なようで、コロナ不況が長引いて一時的な回復に留まるようなら、今後は11月にも予定されているレイオフの禁止解除等により雇用のさらなる悪化や消費の落ち込み等も懸念されるところだ。エルドアン政権による景気・雇用対策が継続できるのかどうかも試される。

トルコのイスタンブール100株価指数は格下げ報道にもかかわらず、9月11日に前日比0.33%高と上昇、週明けも14日も0.42%高と上昇した。円安で日経平均が上昇するように、トルコ株も格下げショックよりもトルコリラ安による通貨インフレ効果で押し上げられている印象だが、さらに通貨安が深刻化してくると株安リラ安が連鎖反応を招きかねないと注意したい。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月9日午後安値をサイクルボトムとして上昇していたが、10日夜高値で直近のサイクルトップを付けて弱気サイクル入りした。ボトム形成期は14日午後から16日午後にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、15日未明へ一段安した後も下げ渋りにとどまっているのでもう一段安へ進みかねないと注意する。14.15円超えからはいったん強気サイクル入りとして15日夜から17日夜にかけての間への上昇と14.20円台序盤試しを想定するが、戻りは短命の可能性もあるのでその後に14.10円を割り込むところからは下げ再開とみる。

60分足の一目均衡表では9月11日夜の下落から遅行スパンが悪化し、先行スパンからも転落した。その後も両スパン揃っての悪化が続いているおで、遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみるが、先行スパンがぶ厚い抵抗帯となるため先行スパンを上抜き返せないうちは遅行スパンが再び悪化するところから下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は9月15日未明に30ポイント割れまで低下してから戻しているが50ポイント台には届いていないので35ポイント割れからは下げ再開と一段安警戒と考える。15日未明安値を割り込む際に指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られれば反騰入りの可能性が高まると注意する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月15日未明安値14.06円を下値支持線、14.15円を上値抵抗線とする。
(2)14.15円以下での推移中は一段安余地ありとし、14.06円割れからは14.00円割れを目指すとみる。14.00円を割り込む水準は突っ込み警戒圏とみるが、14.15円以下での推移が続くうちは16日午前にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)14.15円超えからはいったん強気サイクル入りとみて14.20円前後試しとするが、14.20円以上は反落警戒とし、その後に14.15円割れへ失速するところからは下げ再開注意とみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

9月17日
 20:30 週次外貨準備高 9/11時点 (9/4時点 448.8億ドル)
9月21日
 23:30 8月中央政府債務残高 (7月 172.1億ドル)
9月22日
 16:00 9月消費者信頼感指数 (8月 59.6)
9月23日
 19:30 8月自動車生産台数 前年比 (7月 -11.8%)
9月24日
 16:00 9月製造業景況感 (8月 106.2)
 16:00 9月設備稼働率 (8月 73.3)
 20:00 トルコ中銀 政策金利発表 (現行 8.25%)
 20:30 週次外貨準備高 9/18時点
9月25日
 17:00 8月観光客数 前年比 (7月 -85.9%)   

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