ドル円見通し 105円台中盤へ下落、9月3日夜高値以降の安値を更新(20/9/15)

ドル円は9月14日夜に105.51円まで急落した。

ドル円見通し 105円台中盤へ下落、9月3日夜高値以降の安値を更新(20/9/15)

ドル円見通し 105円台中盤へ下落、9月3日夜高値以降の安値を更新

〇ドル円、対ユーロでドル安感強まる中、9/14夜105.51まで一時安値切り下げる
〇NYダウ、ワクチン開発や大型買収関連報道から上昇、株高もドル安サポート
〇FOMC声明発表・議長会見開催の9/17未明にかけて安値試しやすい状況か
〇英国下院、EU離脱協定の一部を反故にする法案の方針を承認、EUとの対立深刻化
〇米政権、ファーウェイに対する新たな輸出禁止措置導入、米中対立激化の市場への影響要注視
〇106円台を回復できないうちはもう一段の安値余地あり、105.51割れからは105.17試しへ向かうとみる
〇106円台回復からはいったん戻しに入ったとみて、106.28前後への上昇を想定

【概況】

ドル円は9月14日夜に105.51円まで急落した。8月28日に安倍首相辞任報道とドル安を背景に105.17円まで急落した後はドル高再燃で9月3日夜高値106.54円まで戻したが、その後はややジリ安の推移となり、9月9日に105.75円まで下げて106円台を割り込んだところからは106円台を回復したものの、9月10日から14日午前にかけては106円台序盤の狭いレンジ内でほぼ横ばいの状況が続いてきた。

ドルストレートでは9月9日夜からユーロが持ち直し、10日夜にはECB理事会後のラガルド総裁会見でユーロ高けん制姿勢が見られなかったとしてユーロが上昇してドルストレートでのドル安感が強まっていたが、ドル円はクロス円での円安効果との相殺でさほど反応していなかった。ユーロドルが10日深夜高値から11日未明安値までいったん反落したものの持ち直しの上昇に入り、14日も11日の戻り高値を上抜いてきたことでドル安感が強まる中でドル円もドル安に押されながら106円を割り込むと徐々に安値を切り下げ、NYダウが週末からの連騰気配となる中でドル安がさらに進むと売りの連鎖反応で23時台には105.51円まで下げた。9月15日午前はやや下げ渋りだが、9月9日安値を割り込んだことで下落圧力が増してきている印象のため、FOMC声明発表・議長会見のある9月17日未明にかけてはまだ安値を試しやすい状況と思われる。

【株高継続でドル安感強まるか、米中対立と新たなブレクジット問題での混乱にも注意】

9月14日のNYダウは前日比327.69ドル高と反発した。NYダウは9月3日に一時千ドル以上を下げて前日比807.77ドルの大幅下落となり、9月8日まで大幅続落し、9日に前日比439.58ドル高と戻したものの9月10日には再び405.89ドル安と下げて9月3日以降の安値を更新した。9月11日は前日比131.06ドル高と下げ渋っていたが、週明けはワクチン開発関連や大型買収関連報道等から買われた。英製薬大手アストラゼネカが英オックスフォード大と共同開発中の新型コロナワクチンの治験を再開したことや、ソフトバンク系列企業の大型買収、米オラクルによる中国系動画投稿アプリ「TikTok」との米国事業提携等が株買いを助長したようだ。
株高は為替市場にとってリスク選好感を強めてドルストレートでのドル安を助長する。しかし米中対立の深刻化や英国がEU離脱協定を反故にする動きを見せていることでの先行き不透明感もあり、簡単にはリスクオン全開へとは進めないのではないかと思う。

英国下院は9月14日に今年1月末に発行済のEU離脱協定の一部を反故にする英政府法案の基本方針を賛成多数で承認した。来週には下院での採決が行われる見通しであり、その後に上院の可決、英女王承認により成立へ進む。EU国際法違反として猛反発しており、両者の対立が深刻だが、英国が離脱後のEUとの自由貿易協定FTAを巡っても折り合わずに対立が深まっていることが先週の英ポンド大幅安の背景となり、為替市場にとっては新たなブレクジット問題として不安定要因となっている。

米トランプ政権は中国通信機器最大手華為技術(ファーウェイ)に対する新たな輸出禁止措置を9月15日に導入する。米国の技術を使って生産した外国製半導体を同社に供給することを事実上禁じる措置で、ファーウエイとの取引関係がある日本や台湾、韓国の企業にも大きな影響が及ぶことが懸念される。ファーウェイに関してはスマートフォン事業からの撤退の噂もある。ファーウェイにスマートフォンの画像センサーを供給するソニー、半導体製造最大手のTSMC(台湾積体電路製造)や韓国サムスン電子等も米当局からの許可を得られなければファーウェイとの取引停止に追い込まれる可能性がある。
米商務省は2019年5月にファーウェイに対する輸出禁止措置を段階的に発動してきたが、9月15日から米国の技術を使って生産した外国製半導体のファーウェイに対する供給を全面的に停止する。中国側の反発は必至であり、11月の米大統領選挙前のトランプ大統領も対中強硬姿勢をアピールしてゆくことが予想されるため、両国が険悪となり株式市場及び為替市場へ大きく影響を与えることも警戒される。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月3日夜と4日夜の両高値をダブルトップとして下落したが、9日夕刻安値で直近のサイクルボトムを付けて戻しに入っていた。しかし9月10日午前高値の後は伸びずにいたために11日朝時点ではすでに弱気サイクル入りしている可能性があるとし、10日午後安値105.96円割れからは弱気サイクル入りとした。
9月14日夜の急落で10日午前安値及び9日安値を割り込んだため、10日午前高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとする。ボトム形成期は14日夕から16日夕にかけての間と想定されるので既に反騰注意期にあるが、106円台回復まで戻せないうちはまだ一段安余地が残る。ただし、FOMCも控えているのでFOMC声明発表前はいったん戻しに入る可能性があると注意する。

60分足の一目均衡表では9月14日夜への下落で遅行スパンが悪化、先行スパンからも転落した。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする、強気転換には先行スパンを上抜き返す必要があるため、先行スパンから転落しているうちは一時的に遅行スパンが好転してもその後の悪化から下げ再開へ進みやすいとみる。

60分足の相対力指数は9月14日深夜への下落時に30ポイントを割り込んだ。その後はやや戻しているものの、強気転換には50ポイントを超える反騰が必要であり50ポイント以下での推移中は一段安警戒とみる。ただし14日深夜安値を割り込む際に指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られればいったん戻しに入るとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、9月14日深夜安値105.51円を下値支持線、106.00円を上値抵抗線とする。
(2)106円台を回復できないうちはもう一段の安値余地ありとし、14日深夜安値割れからは8月28日夜安値105.17円試しへ向かうとみる。FOMC前のため105円台序盤(105.25円から105.00円)にかけてのゾーンは突っ込み警戒とみるが、105.80円以下での推移が続く場合は16日も安値試しへ向かいやすいとみる。またドル安感が強まる材料を伴って下げが加速する場合はFOMCを待たずに105円割れを試す可能性もあると注意する。
(3)106円台回復からはいったん戻しに入ったとみて9月10日午前高値106.28円前後への上昇を想定する。ただし106円台序盤は戻り売りにつかまりやすいとみて、106円台に到達した後に105.75円割れへ崩れる場合は下げ再開を疑う。

【当面の主な予定】

9/15(火)
イスラエルとアラブ首長国連邦、国交正常化調印式(ワシントン)
第75回国連総会開会
未 定 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)1日目
10:30 (豪) 豪準備銀行、金融政策会合議事要旨
10:30 (豪) 4-6月期住宅価格指数 前期比 (1-3月 1.6%、予想 -1.3%)
10:30 (豪) 4-6月期住宅価格指数 前年同期比 (1-3月 7.4%、予想 6.8%)
11:00 (中) 8月 小売売上高 前年同月比 (7月 -1.1%、予想 0.0%)
11:00 (中) 8月 鉱工業生産 前年同月比 (7月 4.8%、予想 5.1%)
15:00 (英) 8月 失業保険申請件数 (7月 9.44万件)
15:00 (英) 8月 失業率 (7月 7.5%)
15:00 (英) 7月 失業率・ILO方式 (6月 3.9%、予想 4.1%)

18:00 (独) 9月 ZEW景況感・期待指数 (8月 71.5、予想 69.5)
21:30 (米) 8月 輸入物価指数 前月比 (7月 0.7%、予想 0.5%)
21:30 (米) 8月 輸出物価指数 前月比 (7月 0.8%、予想 0.4%)
21:30 (米) 9月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (8月 3.7、予想 6.0)
22:15 (米) 8月 鉱工業生産 前月比 (7月 3.0%、予想 1.0%)
22:15 (米) 8月 設備稼働率 (7月 70.6%、予想 71.5%)

9/16(水)
休場、メキシコ、マレーシア
未 定 OECD経済見通し中間報告
未 定 (日) 臨時国会召集/首相指名
未 定 (伯) ブラジル中銀、政策金利発表
未 定 (日) 日銀・金融政策決定会合(1日目)
未 定 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)1日目

07:45 (NZ) 4-6月期経常収支 (1-3月 15.57億NZドル、予想 6.9億NZドル)
08:50 (日) 8月 通関貿易統計・季調済 (7月 -348億円、予想 233億円)
08:50 (日) 8月 通関貿易統計・季調前 (7月 116億円、予想 -200億円)
15:00 (英) 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 0.4%、予想 -0.6%) 
15:00 (英) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 1.0%、予想 0.1%)
15:00 (英) 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 1.8%、予想 0.5%)
15:00 (英) 8月 小売物価指数 前月比 (7月 0.5%、予想 -0.3%)
15:00 (英) 8月 小売物価指数 前年同月比 (7月 1.6%、予想 0.6%)
15:00 (英) 8月 生産者物価コア指数 前年同月比 (7月 0.1%、予想 0.0%)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調済 (6月 171億ユーロ、予想 187億ユーロ)
18:00 (欧) 7月 貿易収支・季調前 (6月 212億ユーロ)

21:30 (米) 8月 小売売上高 前月比 (7月 1.2%、予想 1.0%)
21:30 (米) 8月 小売売上高・除自動車 前月比 (7月 1.9%、予想 0.9%)
23:00 (米) 7月 企業在庫 前月比 (6月 -1.1%、予想 0.2%)
23:00 (米) 9月 NAHB住宅市場指数 (6月 78、予想 78)
27:00 (米) 米連邦公開市場委員会(FOMC)、政策金利発表 (現行 0.00-0.25%、予想 0.00-0.25%)
27:30 (米) パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長定例記者会見
29:00 (米) 7月 対米証券投資・全体 (6月 -679億ドル)
29:00 (米) 7月 対米証券投資・短期債除く (6月 1130億ドル)


注:ポイント要約は編集部

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