ドル円見通し 米国株反騰、リスク選好感回復でドル円も戻す(20/9/10)

ドル円においても円安が勝って9日深夜には106.27円まで戻した。10日朝も106円台序盤でしっかりしている。

ドル円見通し 米国株反騰、リスク選好感回復でドル円も戻す(20/9/10)

米国株反騰、リスク選好感回復でドル円も戻す

〇ドル円、9日深夜に106.27まで戻し10日朝も106円台序盤を継続
〇英アストラゼネカ社の新型コロナワクチン治験再開報道を受け9日NYダウ、ナスダック総合指数大幅上昇
〇ドル円はリスク選好の円売りと長期金利の上昇がサポートし、106円台を回復した形
〇106円以上は一時的に割り込んでも上昇余地あり、106.38超えからは106.54試しへ
〇106円割れから続落なら下落再開を警戒し105.75試し、割れから続落の場合は弱気サイクル入りへ

【概況】

ドル円は8月28日の安倍首相辞任報道からの急落でつけた安値105.17円から戻してきたが、9月3日夜高値106.54円と4日夜高値106.49円がダブルトップとなって上値が重くなり、米国株式市場が大幅続落する中でリスク回避感が強まって8日夜に106円を割り込む下落となり、9日午後には105.75円まで安値を切り下げた。106円割れに対する突っ込み警戒感からやや戻し、米国株の大幅下落が一服とりNYダウが反騰に入るとドルストレートでは9月1日から下落してきたユーロやポンドが買い戻され、クロス円でもリスク選好感が回復したとして円安へ向かい、ドル円においても円安が勝って9日深夜には106.27円まで戻した。10日朝も106円台序盤でしっかりしている。

レーバーデー明けの9月8日にNYダウは前日比632.42ドル安と大幅下落となり、ハイテク株中心のナスダック総合指数も465.45ポイント安でいずれも3日続落となった。株安による債券買いで米10年債利回りが前日比0.04%低下の0.68%となり、株安リスクと共に日米金利差縮小によるドル売り圧力からドル円は8日夜に106円割れへと失速した。9月1日からはユーロドルが高値警戒感から下落に転じ始め、7日から8日にかけてはEU離脱協定を英国が反故にする動きを見せているとして英ポンドが急落となり、株安と共にリスク回避感を強めたことでドルストレートではドルの買い戻しが進んでドル高となり、クロス円ではリスク回避による円高が進んだ。
9月9日朝以降はダウ先物がしっかりし始めたことでリスク回避感が緩んでドル高が一服に入り、クロス円は午前から午後にかけて下げ止まりに入り、ユーロドルも20時台まで続落したもののNYダウ反騰開始から上昇に転じた。

9月9日のNYダウは前日比439.58ドル高となり一時は700ドルを超える上昇幅となった。同じく大幅続落していたナスダック総合指数も293.87ポイント高と反騰した。連日の下落による値頃感からの買い戻しに加え、前日の大幅下落要因となった新型コロナウイルスのワクチン開発を巡っても、英アストラゼネカ社がいったん中断した治験を来週にも再開すると英FT紙が報道したことで安心感が戻った。
為替市場では総じてリスク選好感が戻ってドルストレートではドル安が進んだが、株高による債券売りと大量入札の影響で米10年債利回りは前日比0.02%上昇の0.70%となり、30年債利回りも0.04%上昇の1.46%となったことでユーロ等の反騰もやや抑えられた。しかしドル円にとっては米長期債利回り上昇がプラスに働いたために106円台序盤への反騰要因となった。

【米国株安、3月暴落の再現を回避できるか】

NYダウは9月3日に前日比807.77ドル安、4日に159.42ドル安、8日に632.42ドル安となり、3日間で1599.61ドル安の大幅下落となったが、9日は439.58ドル高と反騰した。9月3日高値で2万9199.35ドルを付けてコロナショック前の史上最高値である2月12日高値2万9568.57ドルに迫ったことで高値警戒感を呼び、米国での感染者が再び拡大の兆候を示していることやワクチン治験中止報道、トランプ大統領が7日の会見で中国に対するデカップリングに言及するなどして米中対立の深刻化したこと等が下落要因とされ、9月3日からの急落度合いは3月のコロナショック暴落時の初期に近いレベルとなり市場を不安に陥れた。
9日の反騰でひとまず下げ一服となった印象だが、9月3日からの3日連続陰線における3本目の陰線レンジを若干超えた程度であり、3日間の下落幅の半値以上を解消する動きには至っていない。

9月8日の米国における新型コロナウイルスの感染者増加数は2万8561人増となり、7月24日のピーク時につけた7万8615人増からは大幅に減少している。4月後半までを第一波とすれば、7月後半で第二波のピークを超えて落ち着き始めている印象がある。感染拡大が収まれば経済復興期待により米連銀の金融緩和スタンスに対しても現状からさらに飛躍的な量的緩和政策へと進まずにゼロ金利状態を維持しつつ様子見に入る可能性も考えられる。逆に感染増加が目立ち始めれば米連銀もさらに手を打つ必要に迫られる。物価上昇率が落ち着いた状況の中で長期金利も下げづらくなっていることと大量の国債入札が続いていることでの債券需給緩和感が米10年債利回りを低下しづらくさせているが、ドル円にとっては米長期債利回りが上昇ないし高止まりならドル高円安要因となり、米長期債利回り低下傾向が再び顕著になればドル安円高を助長する大きな要因になる。

株式市場は3日間の大幅続落後に一服したが、その3日間の急落度合いが3月暴落の開始当初に近い勢いだったこともあり、1日の反騰ではまだ下げ渋りにとどまってもう一段安へ向かう可能性を残す。その際に株安債券高で長期債利回りが低下するならドル円も下落再開へ向かい、米国株が3日間の下落の半値以上を戻して続伸し始めれば株高債券安で長期債利回り上昇となり、リスク選好の円安も重なってドル円は上昇しやすくなる。いずれへ進むのか、来週の米FOMCの結果をみるまでは決め手に欠くかもしれず、当面のドル円は106円を挟んで前後50銭強のレンジでの推移を続けて方向性を見定める動きに留まるのではないかと思う。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、9月3日夜と4日夜の両高値をダブルトップとして下落した。ボトム形成期は4日未明安値を基準として9日未明から11日未明にかけての間と想定したが、9日午後安値からの反騰で106円台序盤へ戻したため、9日午後安値を直近のサイクルボトムとして強気サイクル入りしたと思われる。トップ形成期は4日夜高値を基準として9日夜から11日夜にかけての間と想定されるので既に反落注意期にあるが、前回がダブルトップによりトップ形成期が短縮されたので今回は週明けへ長引く可能性があると注意する。106円台を維持するか一時的に割り込んでも回復するうちは上向きとし、106円割れから続落に入る場合は弱気転換注意とする。新たな弱気サイクル入りは9日午後安値割れからとし、その際は14日午後から16日午後にかけての間への下落と105円台序盤試しを想定する。

60分足の一目均衡表では9月8日夜の下落で遅行スパンが悪化し、先行スパンから転落したが、9日午後安値からの反騰で遅行スパンが好転して先行スパンも上抜き返した。このため遅行スパン好転中は高試し優先とするが、先行スパン転落からは下げ再開を警戒して遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8日深夜から9日午後への一段安に際して指数のボトムが若干切り上がる強気逆行を見せて反騰入りした。このため50ポイントを割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとし、45ポイント割れから続落に入る場合は下げ再開を警戒する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、106.00円を下値支持線、9月3日夜高値106.54円を上値抵抗線とする。
(2)106円以上での推移か一時的に割り込んでも切り返すうちは上昇余地ありとし、8日夜高値106.38円超えからは3日夜高値106.54円試しとする。106.50円以上は反落注意とするが、106円台を維持しての推移なら11日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)106円割れから続落の場合は下落再開を警戒して9日午後安値105.75円試しとする。9日午後安割手前では買い戻しも入りやすいとみるが、105.75円割れから続落に入る場合は新たな弱気サイクル入りとなるために11日以降へ105円台序盤を目指す流れと考える。

【当面の主な予定】

9/10(木)
20:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、定例記者会見
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前月比 (7月 0.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 生産者物価指数 前年同月比 (7月 -0.4%、予想 -0.3%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前月比 (7月 0.5%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 生産者物価コア指数 前年同月比 (7月 0.3%、予想 0.3%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 88.1万件、予想 84.6万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1325.4万人、1292.5万人)
23:00 (米) 7月 卸売在庫 前月比 (6月 -1.4%、予想 -0.1%)
23:00 (米) 7月 卸売売上高 前月比 (6月 8.8%、予想 2.8%)

9/11(金)
08:50 (日) 8月 企業物価指数 前月比 (7月 0.6%、予想 0.2%)
08:50 (日) 8月 企業物価指数 前年同月比 (7月 -0.9%、予想 -0.5%)
08:50 (日) 7-9月期 大企業全産業業況判断指数・BSI (4−6月期 -47.6)
08:50 (日) 7-9月期 大企業製造業業況判断指数・BSI (4−6月期 -52.3)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前月比 (速報 -0.1%、予想 -0.1%)
15:00 (独) 8月 消費者物価指数改定値 前年同月比 (速報 0.0%、予想 0.0%)

15:00 (英) 7月 月次GDP 前月比 (6月 8.7%、予想 6.8%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前月比 (6月 9.3%、予想 4.2%)
15:00 (英) 7月 鉱工業生産指数 前年同月比 (6月 -12.5%、予想 -8.7%)
15:00 (英) 7月 貿易収支・物品 (6月 -51.16億ポンド、予想 -67.00億ポンド)
15:00 (英) 7月 貿易収支・合計 (6月 53.36億ポンド、予想 30.50億ポンド)
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前月比 (7月 0.6%、予想 0.3%)
21:30 (米) 8月 消費者物価指数 前年同月比 (7月 1.0%、予想 1.2%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前月比 (7月 0.6%、予想 0.2%)
21:30 (米) 8月 消費者物価コア指数 前年同月比 (7月 1.6%、予想 1.6%)
27:00 (米) 8月 月次財政収支 (7月 -630億ドル)

注:ポイント要約は編集部

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る