トルコリラ円見通し 8月26日夕刻への戻りは続かず14.30円割れへ余裕乏しい(20/8/27)

26日午前は14.30円台中心の小幅なレンジでの推移が続き、夕刻には14.47円まで上昇するも長続きせず、夜はドル円における円高の進行に圧迫されて14.30円台へ失速した。

トルコリラ円見通し 8月26日夕刻への戻りは続かず14.30円割れへ余裕乏しい(20/8/27)

8月26日夕刻への戻りは続かず14.30円割れへ余裕乏しい

〇トルコ円、26日夕刻14.47へ上昇するも、その後ドル円の円高進行に圧迫され14.30台へ失速
〇本日夜のパウエル米連銀総裁の講演内容により円高が進むとトルコ円で大きな売り圧力となる可能性
〇トルコリラ対ドル、対ユーロともに最安値に近い水準で推移続く
〇トルコ新型コロナ感染第二波か、感染数増加基調へ入り経済への影響を懸念
〇14.30以上で上昇再開余地あり、14.40超えから26日夕高値14.47試しも14.50以上は反落警戒
〇14.30割れは弱気転換注意、24日朝安値14.28割れから一段安へ、14.10前後の下落を想定

【概況】

トルコリラ円は8月19日朝安値14.21円から8月21日夜高値14.65円まで戻したところから反落し、8月24日朝には14.28円の安値を付けたが26日午前にかけては新たな安値更新を回避して14.30円台中心の小幅なレンジでの推移が続いていた。
8月26日午前には対ドルでトルコリラが史上最安値を更新する場面もあったがドル円が円安基調を維持していたために強弱相殺となり、対ドルでのトルコリラ安が一服する中で8月26日夕刻には14.47円まで上昇する場面があったものの長続きせず、夜はドル円における円高の進行に圧迫されて14.30円台へ失速した。

【ドル円の下落再開】

ドル円は8月19日安値105.08円から反騰に転じて8月25日深夜には106.57円まで高値を切り上げてきたが、26日午前は106.55円にとどまって新たな高値更新へ進めずに上値が重くなり、深夜からは米長期債利回り低下によるメジャー通貨におけるドル安感が強まる中で失速して106円を割り込み、27日午前には105.70円台まで続落している。
8月14日にかけてのドル円上昇は米国の長期債大量入札による債券需給の緩みを背景とした米長期債利回り上昇であり、大量入札が峠を越えたとして8月19日までは米長期債利回り低下により円高ドル安となった。8月20日未明のFOMC議事録においてYCC(イールドカーブコントロール=長短金利操作)への消極姿勢が示されたことで106円台を回復し、今週は2年債や5年債及び7年債の大型入札により再び米長期債利回りが上昇したことでドル円も戻してきた。

米連銀による利下げと大規模な量的金融緩和は長期金利を低下させてきたが、短期的には大量入札による需給緩和で長期債利回り上昇となるケースもあり得る。また米連銀がYCCに対して消極姿勢を続ける場合も長期債利回りが下方へ抑制されずに上昇する可能性は残る。このため、27日夜のパウエル米連銀総裁のジャクソンホール講演内容が焦点となっており、金融緩和拡大姿勢を積極的に示すかどうか、インフレや長期金利見通しへの言及がどうなるのか注目される。議長講演から円高が進むようだとトルコリラ円には大きな売り圧力となりかねないところだ。

【対ドルで最安値を更新、対ユーロでの軟調さも続く】

トルコリラは対ドルにおいて8月26日午前に7.418リラの高値を付けて8月18日の7.40リラを上抜いて史上最安値を更新した。その後は突っ込み警戒感から小反発しているものの7.30リラ台序盤では抵抗感もあって最安値に近い水準での推移が続いている。
対ユーロでは8月18日に8.82リラの史上最安値を付けてから21日に一時8.46リラまで反騰したが、その後は再び下落に転じて8月26日午前には8.77リラまで続落して最安値に迫った。最安値更新はひとまず回避したが8.63リラまで反発した後は再び下落しており、対ドル同様に史上最安値に近い水準での推移となっている。

対ドル及び対ユーロにおいて8月に史上最安値を更新したのは、トルコ中銀が利上げを見送る中で消費者物価上昇率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態が発生していること、トルコの外貨準備高の減少により通貨防衛のための介入力が低下してリラ安を抑えられなくなったことが背景だが、トルコの東地中海におけるガス田探査を巡って領有権を主張するギリシャとの軍事的な緊張感が高まったこともリラ安要因となってきている。

【東地中海での地政学的リスク】

8月21日にトルコは黒海における天然ガス田発見を発表したが、発表直後にはトルコの将来における大きな収益源となることを期待されてリラ買いが発生する場面もあったが、東地中海でのガス田を巡るギリシャとの対立に関して強硬姿勢を取りやすくなったとして黒海ガス田に絡んだリラ買いは後退した。

東地中海の海底の天然ガス資源を巡ってはNATO加盟国同士のトルコとギリシャが対立してきた。トルコが海軍を随伴して探査活動を強硬擦る中でギリシャはフランスと共に軍艦を派遣してけん制に入り、8月12日にはギリシャとトルコの艦艇が接触衝突する事件も発生している。ギリシャは8月24日にクレタ島南方で米海軍との合同軍事演習を実施したが、トルコはこれに対抗して8月25日にはイタリア海軍との軍事演習を行った。ドイツは両国の仲介へ動いているが効果は見られず、米国はトルコを批判する声明を発表しているがトルコはこれに反発を強めている。NATO同士の権益衝突であり、フランスがギリシャに、イタリアがトルコに加勢する動きとなって情勢は混とんとしている。大規模な軍事衝突は回避されると思われるが、偶発的な衝突による緊張拡大の可能性は日々強まっているようだ。

【トルコの感染拡大第二波?】

トルコにおける新型コロナウイルスの新規感染者数は日々千人を下回る水準まで抑制されてきたが、8月25日は1502人の増加となって6月半ば以来の最多となった。トルコ政府は全ての政府機関に対してテレワークやシフト制など柔軟な勤務体制の実施を許可し、首都アンカラを含む14州において婚約披露パーティーや結婚前夜の祝福イベント等を禁止すると発表した。

トルコの感染者累計は8月26日時点で26万2507人、死者は6183人となっている。4月11日に5138人増となって第一波のピークとなったがその後は漸減が続き6月2日には786人増まで抑制された。ロックダウン解除後の6月15日に1592人増までいったん増えたが8月3日までは千人を切る状況で抑制が効いていた。7月からは経済活動への規制さらに緩み海外からの観光客受け入れも始まったが、経済活動再開による感染の再増加は避けられず千人を超えて徐々に増加基調に入っている。
トルコにとっては真夏の観光シーズンにおける観光収入が極めて重要だが今年は感染の影響で激減しており、復調の兆しが見えない。トルコ国内での感染増が顕著になるようだと復調している国内の鉱工業生産や小売等への影響も懸念され始めると思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月8月21日夜高値をサイクルトップとして弱気サイクル入りしたが、24日朝安値の後は14.30円台でほぼ横ばいの状況が続いたため、26日午前時点では24日朝安値を直近のサイクルボトムとし、トップ形成期を26日夜から28日夜にかけての間として24日朝安値を割り込むところからは新たな弱気サイクル入りとした。26日夕刻へ戻り高値をいったん切り上げたものの失速しているので、26日夕高値で直近のサイクルトップを付けたと仮定する。24日朝安値を割り込まないうちは27日から28日にかけて上昇がぶり返す可能性もあるが、26日夕高値を超えないうちは一段安警戒とする。

60分足の一目均衡表では8月26日夕刻への上昇で遅行スパンがいったん好転したがその後の失速で再び悪化した。26日夕刻の上昇では先行スパン上限を試したが突破できずに失速している。このため26日夕高値を超えないうちは一段安警戒として遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、26日夕高値超えからは上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8月26日夕刻に70ポイントへ到達してから夜には40ポイントまで失速した。55ポイント超えからは上昇再開の可能性ありとするが、60ポイント前後は戻り売りにつかまりやすいとみて、40ポイント割れからは一段安へ向かいやすくなるとみる。

以上を踏まえて今週のポイントを示す。
(1)当初、8月24日朝安値14.28円を下値支持線、26日夕高値14.47円を上値抵抗線とする。
(2)14.30円以上での推移中は上昇再開余地ありとし、14.40円超えからは26日夕高値試しとし、高値更新の場合は14.50円台前半試しとするが、14.50円以上は反落警戒とみる。
(3)14.30円割れからは弱気転換注意とし、24日朝安値割れからは一段安へ向かうとみて14.10円前後への下落を想定する。14.10円前後は買い戻しも入りやすいところとみるが、対ドル等での下落が厳しくなる場合は14.00円台前半へ下値目途を引き下げる。また14.30円以下での推移なら28日も安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

8月27日
 20:00 トルコ中銀金融政策会合議事要旨公開
 20:30 週次外貨準備 8月21日時点 (8月14日時点 453.8億ドル)
8月28日
 16:00 8月経済信頼感指数 (7月 82.2、予想 79.0)
8月31日
 16:00 4−6月GDP 前年比 (1−3月 4.5%、予想 -12.9%)
 16:00 4−6月GDP 前期比 (1−3月 0.6%、予想 -8.2%)
 16:00 7月貿易収支 (6月 -28.5億ドル)
9月1日
 16:00 8月イスタンブール製造業PMI (7月 56.9)
9月3日
 16:00 8月消費者物価 前年比 (7月 11.76%)
 16:00 8月消費者物価 前月比 (7月 0.58%)
 16:00 8月生産者物価 前年比 (7月 8.33%)

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