トルコリラ円見通し 黒海ガス田発見によるリラ高効果は限定的、対ドルでの下落感再燃(20/8/25)

週明けの24日朝には14.28円まで下落、その後は14.30円台でほぼ横ばいの推移にとどまっている。

トルコリラ円見通し 黒海ガス田発見によるリラ高効果は限定的、対ドルでの下落感再燃(20/8/25)

トルコリラ円見通し 黒海ガス田発見によるリラ高効果は限定的、対ドルでの下落感再燃

〇トルコ円、8/24朝14.28へ下落、その後14.30台でほぼ横ばいの推移にとどまる
〇トルコ観光客数の激減状況変わらず、重要な財政ファイナンスである夏場の観光収入も期待薄
〇黒海ガス田発見問題、期待は膨らむものの地政学的リスクの高まりへの懸念も
〇トルコリラ、対ドル対ユーロでも8/21リラ安一服となったものの再び下落、リラ先安感続いている印象
〇14.46以下での推移中はもう一段安余地ありとし、14.28割れからは14.10前後への下落を想定
〇14.40超えを強気転換注意とし、14.46超えからはいったん戻しに入るとみて14.55前後への上昇を想定

【概況】

トルコリラ円はドル円における円高と対ドル等でのトルコリラ安を背景に8月19日午前安値14.21円まで下落したが、リラ安一服による買い戻しと黒海でのガス田発見報道等から持ち直し、19日夜には円安と対ドルでのリラ反発から14.61円まで戻した。
8月20日にトルコ中銀が金融政策決定会合において政策金利を現状維持として利上げを見送ったことで発表直後に14.32円まで下落したが、売り一巡から再び買い戻されて黒海ガス田発見報道等を背景に21日夜には14.65円まで戻り高値を切り上げた。しかし、ガス田発見報道による買い一巡後は再びリラの先安感が強まって失速し、週明けの24日朝には14.28円まで下落、その後は14.30円台でほぼ横ばいの推移にとどまっている。

【トルコの観光客数は回復せず】

トルコ文化観光省が発表した7月の海外からの観光客数は93万2927人にとどまり前年同月比はマイナス85.9%となった。新型コロナウイルス感染拡大による世界的な経済活動停滞と渡航規制によりトルコの観光客数は3月に前年比マイナス67.8%へ落ち込んだ後、4月と5月がマイナス99%とほぼゼロに近い状況となり、6月は21万4768人でマイナス95.9%となっていた。市場予想ではマイナス78%程度へ若干の改善が見られるのではないかとの期待もあったのだが、引き続き激減した状況が続いていることが示された。

トルコリラ円見通し 黒海ガス田発見によるリラ高効果は限定的、対ドルでの下落感再燃

トルコの観光最盛期は7月であり、毎年年末年始がボトムとなっている。6月から8月が稼ぎ時であり、恒常的な経常赤字国としては夏場の観光収入が重要な財政ファイナンスとなるところだが今年は期待できない状況だ。トルコは7月から入国規制を緩和しているものの出足は鈍い。
8月24日に発表された自動車生産統計でも前年比はマイナス11.8%となり6月のマイナス5.4%から悪化、予想ではプラス圏に回復するのではないかとの見方もあったが裏切られた格好だ。

【黒海ガス田発見問題、続報】

トルコのエルドアン大統領が8月19日時点でエネルギー業界へ吉報をもたらすような含みある発言をし、8月20日には「明日(8月21日)に吉報を明らかにする」と述べたことでトルコ中銀が利上げを見送ったことでのリラ売りがいったんストップした。8月21日にエルドアン大統領は「黒海で推定3200億立方メートル規模の天然ガス田を発見した」と発表したが、採掘・供給開始には数年かかるとの現実的な受け止めからから発表後のリラ買いが一巡するとリラ売りが再燃している。
3200億立方メートルというガス田規模は世界37位にあたるとされるが、供給開始までの開発投資には数十億ドル規模、期間も3年から5年、長引けば7年以上かかるとの見方もある。すぐにトルコの収入増となるわけではないが、トルコにとってはロシアからの天然ガス輸入等に関して先行きの交渉能力を各段に高める効果はある。

国際エネルギー機関IEAのファーティヒ・ビロル事務局長は、トルコ通信社の取材に対して、「トルコ経済にとって極めて重要なターニングポイントになった」とし、「今回発見されたガス田は巨大ガス田に入る」「この発見はノルウェーが北海で2010年からこれまで発見してきたガス田の埋蔵量の合計に等しい」と述べた。また「我々の計算によると発見された天然ガスの潜在的経済価値は現在の価格の動向を基にして800億ドル(約8兆5000億円)レベル」とも述べた。
コロナ不況を乗り越えた後には天然ガス生産国としてのトルコの世界的なエネルギー分野での地位向上につながるとの期待は膨らむ。ただ、黒海ガス田とは別のギリシャ領域と隣接する東地中海のガス田採掘調査問題では国際的な対立を招いており、トルコが黒海ガス田発見により東地中海問題に対しても強硬姿勢を強めて地政学的リスクが高まることも心配される。

【対ドルでのトルコリラは急落一服するもまだ一段安懸念残る】

トルコリラは対ドルにおいて8月18日には7.40リラまで史上最安値を更新したが、20日のトルコ中銀による利上げ見送りを材料消化して黒海ガス田発見報道もあったことで21日には7.18リラまで反騰した。7月からのリラ安一服となったのだが、週明けの24日は前日比0.69%安と下落し、終値も7.37リラ台となり、史上最安値更新への余裕も乏しくなってきた。
対ユーロでは8月18日に8.82リラの史上最安値まで大幅下落してから21日には一時8.46リラまで反騰したが、その後は再び下落しており、24日は8.73リラの安園を付けて18日安値に迫ってきている。
トルコ中銀は8月20日の金融政策決定会合で政策金利の週間レポレートを現行の8.25%に据え置く一方で、オーバーナイトの貸出金利を11.25%の窓口として実質的な引き締めを行っている。しかし外貨準備高の減少傾向が続くとみてのリラ先安感は続いている印象だ。対ドル及び対ユーロで早々に史上最安値更新へ向かうのか、上昇一服となるのか、しばらく見定めが必要なところだ。

ドル円は8月19日に105.08円まで下落してから20日午前に106.21円まで戻したが、その後は105円台後半を中心とした持ち合いにとどまって方向感に乏しい。8月27日にはパウエル米連銀議長のジャクソンホール公演や米4−6月期GDP改定値の発表等もあるために様子見に入っている印象だ。8月20日午前高値106.21円を超えてくればドル高円安感が強まってトルコリラ円には上昇要因となりえるところだが、逆に議長講演等からドル安円高感が強まるとトルコリラ円には大きな売り圧力となりかねないところだ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月19日午前安値をサイクルボトムとして反騰入りしたが、20日夜へ反落してから21日夜には19日夜高値を上抜き、その後に20日夜安値を割り込む展開となったために24日朝時点では8月21日夜高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとした。またボトム形成期は24日朝から26日午前にかけての間と想定されるので、14.50円以下での推移中はまだ一段安余地ありとした。
8月24日午後の上昇では14.50円に届かずその後は14.30円台での持ち合いとなっているのでまだ一段安余地が残るが、前回サイクルボトムから4日目に入っているので14.40円超えを強気転換注意とし、24日午後高値14.46円超えからは強気サイクル入りとして26日夜から28日夜にかけての間への上昇を想定する。ただしいったん強気サイクル入りしてもその後の下落で8月21日以降の安値を更新するところからは新たな弱気サイクル入りとなる点に注意する。

60分足の一目均衡表では8月21日朝安値以降の下げ渋りで遅行スパンは実線と交錯しているが、先行スパンから転落した状況は続いている。このため先行スパンを上抜き返せないうちは一段安余地ありとし、14.30円割れからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。強気転換は先行スパン突破からとする。

60分足の相対力指数は8月24日朝安値以降の下げ渋りでややジリ高の推移となっているが50ポイントに届かずにいる。50ポイント超えから続伸に入れば60ポイント台前半への上昇を想定するが、40ポイント割れからは下げ再開とみる。

以上を踏まえて今週のポイントを示す。
(1)当初、8月24日朝安値14.28円を下値支持線、24日午後高値14.46円を上値抵抗線とする。
(2)14.46円以下での推移中はもう一段安余地ありとし、24日朝安値割れからは14.10円前後への下落を想定する。14.10円前後は買い戻しも入りやすいところとみるが、対ドル等での下落が厳しくなる場合は14.00円台前半へ下値目途を引き下げる。また14.30円以下での推移なら26日も安値試しへ向かいやすいとみる。
(3)14.40円超えを強気転換注意とし、24日午後高値14.46円超えからはいったん戻しに入るとみて14.55円前後への上昇を想定する。14.55円以上は反落注意とするが、14.40円以上での推移なら26日も高値試しへ向かう可能性があるとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

8月25日
16:00 8月製造業景況感 (7月 100.7、予想 98.0)  
16:00 8月設備稼働率 (7月 70.7%、予想 70.5%)
8月27日
20:00 トルコ中銀金融政策会合議事要旨公開
20:30 週次外貨準備 8月21日時点 (8月14日時点 453.8億ドル)
8月28日
16:00 8月経済信頼感指数 (7月 82.2、予想 79.0)
8月31日
16:00 4−6月GDP 前年比 (1−3月 4.5%、予想 -12.9%)
16:00 4−6月GDP 前期比 (1−3月 0.6%、予想 -8.2%)
16:00 7月貿易収支 (6月 -28.5億ドル)
9月1日
16:00 8月イスタンブール製造業PMI (7月 56.9)
9月3日
16:00 8月消費者物価 前年比 (7月 11.76%)
16:00 8月消費者物価 前月比 (7月 0.58%)
16:00 8月生産者物価 前年比 (7月 8.33%)


注:ポイント要約は編集部

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