トルコリラ円見通し 対ドルでのトルコリラ安基調続き、対円でも軟調さから抜け出せず(20/8/17)

対ドル及び対ユーロでのトルコリラ安が再開したことで下落基調となり、先週末の15日早朝には14.37円まで安値を切り下げてきた。

トルコリラ円見通し 対ドルでのトルコリラ安基調続き、対円でも軟調さから抜け出せず(20/8/17)

トルコリラ円見通し 対ドルでのトルコリラ安基調続き、対円でも軟調さから抜け出せず

〇トルコリラ円、対ドル・対ユーロでのトルコリラ安再開により下落基調、8/15に14.37まで安値切下げ
〇対ドル、対ユーロともに8/14にトルコリラ最安値更新、下落基調続く
〇8/20トルコ中銀金融政策決定会合、政策金利の行方に注目
〇トルコ投資家・富裕層による自己防衛目的のゴールド買いが活発化、トルコリラ安助長か
〇トルコ小売売上高・鉱工業生産は改善、観光収入は回復見込めず
〇14.50超えから14.70前後を目指す上昇を想定、14.70以上は反落注意
〇14.37を割り込む場合は新たな弱気サイクル入り、14.07を目指す下落を想定、14.10以下は反騰注意

【概況】

トルコリラ円は対ドル及び対ユーロでのトルコリラ大幅下落により8月10日朝に14.07円の安値を付けて史上最安値を更新した。いったん対ドルでのトルコリラ安が落ち着きを見せかけたこととドル円の上昇により8月12日夕刻には14.79円まで戻したのだが、その後は107円に到達した後のドル円の上値が重く、対ドル及び対ユーロでのトルコリラ安が再開したことで下落基調となり、先週末の15日早朝には14.37円まで安値を切り下げてきた。

【対ドルでのトルコリラ安続く、バザールではゴールド買いも】

対ドルでのトルコリラはトルコ通貨当局による規制や介入等により6月中旬から6.85リラを中心とした狭いレンジでの小動きに抑制されていたが、7月に入ってからは対ユーロでのトルコリラ安が加速する中で抑制が効かなくなって下落に転じ、8月6日に7.32リラを付けてそれまでの史上最安値だった5月7日安値7.27リラを割り込んで最安値を更新、8月7日には7.37リラまでさらに安値を切り下げた。その後は新たな安値更新を回避していたものの、終値ベースでは8月5日から10日まで4日間の大幅続落となり、11日にいったん1.78%高の反発を入れたものの、12日から14日までは3日間の続落となり、8月14日には7.38リラを付けて最安値を更新し、終値も7.36リラで最安値となった。
週間べースでは7月26日の週に前週比1.78%安、8月2日の週に4.60%安、8月9日の週で1.03%安と3週連続の下落となっている。

対ユーロでのトルコリラは8月7日安値で8.72リラまで史上最安値を更新し、11日に1.75%高といったん戻したものの12日から14日までは3日間の続落となり、14日には8.75リラまで最安値を更新、終値ベースでも8.72リラで最安値更新となった。
週間ベースでは6月21日の週から9週連続の下落であり、月間ベースでは7月が前月比6.69%安、8月も14日時点で6.29%安と暴落的な下落が続いている状況だ。

トルコリラの対ドル及び対ユーロでの史上最安値更新はトルコの外貨準備高の減少による通貨防衛力の大幅低下への懸念、インフレ見通しの悪化により実質マイナス金利状態に陥った状況が長引いているために本来の高金利通貨としての魅力が削がれていることが主因となっている。
今のところ通貨当局に極端なリラ防衛政策の発動は見られないが、8月20日にはトルコ中銀の金融政策決定会合があり、政策金利は現状の8.25%から8.75%へ利上げるのではないかとの観測もある。ここで通貨防衛的な利上げが見送られる場合は悲観売りが加速しかねないと注目したい。

トルコ国民はドル買い金買いで自己防衛を図っている。アラブ・ニュースの報道では、トルコの投資家・富裕層が自己防衛的に金(ゴールド)買いに動いていると報じている。トルコは伝統的に金指向が強く、金相場の世界では中国とトルコの金需要動向が常に注目されるぐらいだが、何度も繰り返されるリラ安に対してドルやユーロへの換金と共にバザールでの金・金製品買いが活発化しているという。これもトルコリラ安をかえって助長するものとなっている。

【ドル円は107円到達後に上値が重くなる】

ドル円は8月14日未明に107.05円へ上昇して7月31日安値104.17円以降の高値を更新したが、その後は失速して14日深夜には106.42円まで下落した。8月12日に107.01円を付け、14日未明もわずかに高値を切り上げたのだが、107円台では上値が重くなった。

8月14日未明への上昇は米財務省による大量の国債入札で債券需給が緩和するとの見方を背景とした長期債売りが主要因であり、米財務省は8月11日に3年債を480億ドル、12日に10年債を380億ドル、13日に30年債を260億ドルぞれぞれ過去最大規模の入札を行った。この大量入札を控えて米10年債利回りは8月4日の0.51%から8月13日には0.72%まで上昇し、7月に加速したドル全面安にブレーキがかかり、ドル円も日米金利差を意識して上昇した。しかし米連銀による大規模な量的金融緩和の中での米財務省による大量国債発行であり、長期金利上昇局面では低水準に抑え込もうという動きも出てくると思われるため、大量入札を通過した後に再び米長期債利回りが低下し始めればドル円には下落圧力となり、トルコリラ円も上値が抑えられる要因となってくると思われる。

【トルコ小売売上高・鉱工業生産は改善、あとは観光収入の回復待ちだが】

8月14日に発表されたトルコの6月鉱工業生産は前月比で17.6%上昇となった。4月にマイナス30.2%まで落ち込んだが5月に18.0%上昇と回復したのに続いて改善した。前年同月比では0.1%上昇となり、4月のマイナス31.3%、5月のマイナス19.4%から前年並みに持ち直した。5月まで続いた週末のロックダウンの他は経済活動を継続し、6月からはロックダウンも行っていないために感染拡大を抑制しつつ持ち直しに入っている印象だ。
8月14日に発表された6月の小売売上高は前月比16.5%上昇となった。4月にマイナス22.1%まで急降下したが5月に5.9%上昇と持ち直し、6月も大きく改善した。前年同月比はマイナス0.8%で回復しきれていないものの、4月のマイナス20.4%、5月のマイナス17.3%からは大きく持ち直した。

トルコリラ円見通し 対ドルでのトルコリラ安基調続き、対円でも軟調さから抜け出せず

8月14日に発表された6月の経常収支は29億3000万ドルの赤字で、5月の37.6億ドル及び4月の50.87億ドルの赤字からはやや改善している。トルコは基本的には経常赤字国であり、2017年以降で黒字だったのは2018年8月から11月、2019年7月から11月までに限られる。この間は観光大国として欧州、ロシア等からの観光客収入が増えるためにファイナンスされてきたのだが、今年は7月から観光客の入国を解禁しているもののまだ出足は悪く、平年の様な観光収入を得られなければ経常赤字の拡大につながり、トルコリラ安への圧力も強まるものと思われる。4月と5月の観光客数は前年同月比でいずれもマイナス90%を超える急減ぶりとなっている。8月24日には7月の統計発表があるが、市場予想ではマイナス68%程度と見込まれている。

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月10日朝安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして10日夜から12日午後にかけての間への上昇を想定していたが、12日夕刻高値からの下落が続いていたために13日午前時点では12日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとしてきた。ボトム形成期は13日朝から17日朝にかけての間と想定されるので既に反騰警戒期とし、14.50円超えからはいったん強気サイクル入りとみて17日午後から19日夕刻にかけての間への上昇を想定する。ただし戻り一巡後には再び下落基調に向かいやすいとみて、いったん強気サイクル入りしてもその後に底割れするところからは新たな弱気サイクル入りとして20日早朝から24日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8月12日夕高値からの下落で遅行スパンが悪化し、14日朝には先行スパンから転落した。17日午前も両スパンそろっての悪化が続いているので、遅行スパン悪化中はまだ一段安余地ありとするが、遅行スパン好転からはいったん戻しに入るとみて高値試し優先とする。ただし、遅行スパンが再び悪化するところからは下げ再開、一段安へ向かいやすくなるとみる。また遅行スパンが好転できずに安値更新が続くような展開に入る場合は下げも加速してゆきやすいと注意する。

60分足の相対力指数は8月15日早朝への下落で20ポイント台へ低下したがその後に40ポイント台へ戻している。50ポイントを超えても50ポイント以上に定着できないうちは40ポイント割れから下げ再開に入りやすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す
(1)当初、8月15日早朝安値14.37円を下値支持線、14.50円を上値抵抗線とする。
(2)14.37円を割り込まないうちは14.50円超えから14.70円前後を目指す上昇を想定する。14.70円以上は反落注意とするが、14.50円以上での推移なら18日も高値試しへ向かいやすいとみる。
(3)8月15日早朝安値を割り込む場合は新たな弱気サイクル入りとみて8月10日朝安値14.07円を目指す下落を想定する。14.10円以下は反騰注意とするが、15日早朝安値を割り込んだ水準での推移が続くうちは安値試しを続けやすく、先行きは14円試しへ向かうとみる。

※ トルコリラ円は概ね4か月周期の底打ちサイクルで推移してきた。2018年の通貨危機による8月13日安値の後、2019年1月3日安値、5月9日安値、8月26日安値、今年1月6日安値、5月7日安値とこのサイクルの底を付けてきたが、現状は6月3日高値で戻りが一巡して次の底形成期期となる8月末から9月前半にかけての間へ向けて安値を試している最中と思われる。すでに過去最安値を更新しているところであり、新たな通貨危機を警戒させる様相も見られているため、2018年8月通貨危機時の様な急落商状や、今年5月7日にかけて11週連続で週足が陰線となって下落した時の終盤のような下げになる可能性も警戒すべきと思われる。先行きとしては14円を割り込めば13円以下を目指す可能性も出てくるところと注意したい。

【当面の主な経済指標等の予定】

8月20日
16:00 7月自動車生産 前年比 (6月 -5.4%)
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 8.25%、予想 8.75%)
20:30 週次、外貨準備高
8月21日
16:00 8月消費者信頼感 (7月 60.9)
8月24日
17:00 7月観光客数 前年比 (6月 -96.0%、予想 -68.0%)
8月25日
16:00 8月製造業景況感 (7月 100.7)  
16:00 8月設備稼働率 (7月 70.7%)
8月27日
20:00 トルコ中銀金融政策会合議事要旨公開
20:30 週次外貨準備 8月21日時点
8月28日
16:00 8月経済信頼感指数 (7月 82.2)
8月31日
16:00 4−6月GDP 前年比 (1−3月 4.5%、予想 -8.9%)
16:00 4−6月GDP 前期比 (1−3月 0.6%、予想 -5.2%)
16:00 7月貿易収支 (6月 -28.5億ドル)

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