トルコリラ円見通し ドル円は続伸するも対ドルでのトルコリラ安再燃で軟調(20/8/14)

トルコリラ円は、新たな安値更新を回避しているものの14.60円前後が戻り抵抗となって上値の重い状況が続いている。

トルコリラ円見通し ドル円は続伸するも対ドルでのトルコリラ安再燃で軟調(20/8/14)

ドル円は続伸するも対ドルでのトルコリラ安再燃で軟調

〇トルコリラ円、14.60前後が戻り抵抗となって上値の重い状況
〇対ドル、対ユーロともにトルコリラ終値ベースで最安値更新、下落基調続く
〇ゴールドマン・サックス向こう3か月間のドルトルコリラ見通し平均値を7.75に引き上げ
〇8/20トルコ中銀金融政策決定会合で、現状の8.25%据え置きならリラ安の加速要因に
〇東地中海海域におけるギリシャトルコ対立、トルコを巡る新たな火種、地政学的リスクに
〇14.65超えからは強気転換注意、12日夕刻高値14.79を超えず14.50を割り込めば下げ再開
〇11日安値14.35割れからは8/10安値14.07試しへ、14.10以下は反発注意

【概況】

トルコリラ円は8月12日夕刻高値からの軟調推移が続いている。対ドル及び対ユーロでのトルコリラ大幅下落によりトルコリラ円は8月6日夜に14.32円の安値を付けて5月7日安値14.61円を割り込んで対円での史上最安値を更新した。その後は対ドル及び対ユーロでのトルコリラ安が一服し、ドル円が米長期債利回り上昇を背景に上昇したことで12日夕刻には14.79円まで戻したのだが、ドル円が8月14日未明へ続伸したのに対して対ドル及び対ユーロでのトルコリラ安が再燃したためにトルコリラ円は上値が抑えられて13日朝には14.47円へ下落した。13日朝以降は新たな安値更新を回避しているものの14.60円前後が戻り抵抗となって上値の重い状況が続いている。

【対ドルでのトルコリラ下落基調続く】

対ドルでのトルコリラは8月13日に前日比0.24%安と続落した。8月6日に7.32リラを付けてそれまでの史上最安値だった5月7日安値7.27リラを割り込み、8月7日には7.37リラまで最安値更新した。終値ベースでは8月5日から10日まで4日間の大幅続落となり、11日は1.78%高と反発して急落がいったん収まりかけたが、12日は前日比1.75%安と反落して13日も続落となった。8月7日に付けた安値7.37リラを割り込んではいないが、13日は安値で7.359リラまで下落しており新たな安値更新への余裕が乏しくなっている。また終値ベースでは8月7日の7.29リラに対して8月10日には7.33リラまで最安値を更新し、13日も7.345リラへ続落している。

対ユーロでのトルコリラは8月13日に前日比0.53%安と下落した。8月5日から10日まで4日間の続落となり8月7日安値で8.72リラまで史上最安値を更新した。11日には1.75%高と反発したが12日に2.12%安と反落し、13日も続落となり安値で8.71リラを付けて8月7日安値更新への余裕が乏しくなっている。終値ベースでは8月7日の安値を10日に割り込み、13日も8.67リラまで最安値を更新している。

トルコリラの対ドル及び対ユーロでの史上最安値更新はトルコの外貨準備高の減少による通貨防衛力の大幅低下への懸念、インフレ見通しの悪化により実質マイナス金利状態に陥っている状況を打開できないこと、トルコ国内勢においても自国通貨安を嫌って外貨預金へシフトしていることが背景とされる。
金融大手のゴールドマン・サックスは最新のレポートで向こう3か月間のドル/トルコリラ見通しの平均値を7.75リラに引き上げてさらに史上最安値更新が続く可能性を示唆している。
トルコ通貨当局による取引規制が6月中旬からはドル/トルコリラを6.85リラを中心とした小動きに抑制してきたが、7月に入ってからは制御できなくなっている。ドル/トルコリラに先行してユーロ/トルコリラが大幅上昇に入ったことでドル/トルコリラもドル高リラ安へ一挙に進んだ状況にある。

8月13日に発表された8月7日時点のトルコ外貨準備高は465.9憶ドルで7月31日時点の466.7億ドルから減少しているが、6月初旬に556億ドルあった水準からは大幅な減少となっている。14日には6月経常収支、8月20日にはトルコ中銀の金融政策決定会合があり、政策金利は現状の8.25%から8.75%へ利上げるのではないかとの観測もあるが、国内の景気対策もあり据え置かれる場合はリラ安の加速要因となりかねないところだ。

【ドル円は上昇基調】

ドル円は8月14日未明に107.05円へ上昇して7月31日安値104.17円以降の高値を更新している。7月末にかけてのドル安円高は米連銀による金融緩和を背景としたドル資金需給緩和と為替市場でのリスク選好感が強まる中でのドル全面安が背景だったが、今週の米長期債大量入札を控えて米10年債利回り等が上昇に転じたことでドル安にブレーキがかかったことがドル円の反騰の背景となっている。12日の米10年債360億ドル入札は堅調だったが13日の米30年債260億ドルの入札は低調だったとして13日は10年債利回り及び30年債利回りの上昇が続いたためにドル円も戻り高値を切り上げた。

ドル円にとっては米長期債利回り上昇が続けば現在の上昇基調を継続してゆく可能性があるが、大量入札による利回り上昇に一服感が出れば上昇力を失いかねない。今のところは対ドル及び対ユーロでのトルコリラ安に対してドル円が上昇していることがトルコリラを下支えしている構図だが、リラ安が一段と加速する中でドル円の上昇がストップするとトルコリラ円は二重の売り圧力にさらされかねないと注意したい。

【東地中海情勢】

ギリシャとトルコがそれぞれ権益を主張する東地中海海域において、トルコが海底資源探査を強行しているために緊張が高まっている。ギリシャは主権侵害としてトルコの即時撤退を求めているが、トルコは探査船に複数の軍艦を同行させて探査を続けている。トルコによればこの資源探査は8月10日から23日までの予定で行われる。探査対象の海域はトルコの南沖、キプロス島西側にあるが、ギリシャ領カステロリゾ島もあるためにギリシャが大陸棚主権を主張して対立している。
欧州もこの問題を重視しており、フランスのマクロン大統領は8月13日に東地中海での軍事プレゼンスを一時的に強化するとツイートしてトルコを牽制し、仏空軍戦闘機2機を13日にギリシャのクレタ島へ派遣すると発表した。

一方、トルコのエルドアン大統領は、「地中海で緊張状態を高めているのはトルコではない。トルコと北キプロス・トルコ共和国をなきものとしようとするギリシャとギリシャ系の頭である。いかなる国にも我々の権利を侵害させない」と表明して強硬姿勢を示している。トルコを巡る新たな火種、地政学的リスクとして注目しておきたい。

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月10日朝安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして10日夜から12日午後にかけての間への上昇を想定していたが、12日夕刻高値からの下落が続いていたために13日午前時点では12日夕高値を直近のサイクルトップとした弱気サイクル入りとして14日朝から18日朝にかけての間への下落を想定した。13日から14日早朝にかけては横ばい程度の動きにとどまっているのでまだ一段安余地ありとみる。強気転換は12日夕高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では8月12日夕高値からの下落で遅行スパンが悪化し、14日朝には先行スパンから転落している。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。強気転換は両スパンが揃って好転するところからとし、その際は12日夕高値試しを想定する。

60分足の相対力指数は8月12日夕刻以降のややジリ安の推移により50ポイントを挟んだ小動きにとどまっている。上昇再開には60ポイントを超える必要があり、40ポイント割れからは下落継続として30ポイント割れを目指す流れとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す
(1)当初、8月11日朝安値14.35円を下値支持線、8月12日夕刻高値14.79円を上値抵抗線とする。
(2)14.65円以下での推移中は一段安余地ありとし、11日朝安値14.35円割れからは8月10日朝安値14.07円試しへ向かうとみる。14.10円以下は反発注意とするが、14.50円以下での推移なら週明けも安値試しを続けやすいとみる。
(3)14.65円超えからは強気転換注意とするが、12日夕刻高値を超えずに14.50円を割り込むところからは下げ再開とする。強気転換は12日夕高値超えからとするが、その場合は15.00円試しへ向かう流れと考える。

【当面の主な経済指標等の予定】

8月14日
 16:00 6月経常収支 (5月 −37.60億ドル、予想 34.00億ドル)
 16:00 6月鉱工業生産 前年比 (5月 -19.9%、予想 -12.7%) 
 16:00 6月小売売上高 前月比 (5月 3.8%、予想 -7.4%)
 16:00 6月小売売上高 前年比 (5月 -16.7%、予想 -9.7%)
8月20日
 16:00 7月自動車生産 前年比 (6月 -5.4%)
 20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 8.25%、予想 8.75%)
 20:30 週次、外貨準備高
8月21日
 16:00 8月消費者信頼感 (7月 60.9)
 17:00 7月観光客数 前年比 (6月 -96.0%)

注:ポイント要約は編集部

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