ドル円見通し 米長期債利回り上昇継続で7月31日以降の高値を更新(20/8/14)

ドル円は、13日午後に106.54円までいったん下げた後、14日未明に107.05円まで戻り高値を切り上げている。

ドル円見通し 米長期債利回り上昇継続で7月31日以降の高値を更新(20/8/14)

米長期債利回り上昇継続で7月31日以降の高値を更新

〇ドル円、14日未明107.05まで戻り高値を切り上げ
〇米10年債利回り0.72%、30年債利回り1.43%と13日も続伸
〇8/13発表の新規失業保険申請件数、失業保険受給者数共に前週から減少も市場の反応は限定的
〇米長期債利回り上昇が一巡しドル指数の下落再開ならドル円下落再開の可能性も
〇106.54割れからは弱気サイクル入りで106円前後への下落を想定、106円以下は反発注意
〇107.10超えからは107.60前後への上昇を想定、107.50以上は反落警戒

【概況】

ドル円は7月31日安値104.17円以降の戻り高値を更新している。8月3日深夜高値106.46円まで戻してから8月6日深夜安値105.29円までいったん下げたが、その後はジリ高基調を継続しており、8月12日未明に106.68円を付けて8月3日深夜高値を上抜いたが、12日夜に107.01円を付けて7月23日以来の107円台に到達し、13日午後には106.54円までいったん下げたものの14日未明には107.05円まで戻り高値を切り上げている。

ドル円の上昇の背景は米長期債利回り上昇だが米長期債利回りは13日も続伸した。米10年債利回りは前日比0.04%高の0.72%へ上昇して6月後半以来2か月振りの高水準となり、米30年債利回りも13日に実施された260億ドル規模の入札が低調だったとして前日比0.05%高の1.43%へ上昇した。
8月13日夜に発表された新規失業保険申請件数は8月8日までの1週間で96万3000件となり市場予想の112万件を下回った。前週の118万6000件から減少し、21週ぶりに100万件を下回った。失業保険受給者数は8月1日までの1週間で1548万6000人となり前週から60万4000人減少して市場予想の1589万8000人を下回った。これらの改善は金融市場全般に対してリスク選好材料ではあったが、市場の反応は限定的だった。

【米10年債利回り上昇と同調したドル高円安】

米10年債利回りは8月12日に前日比0.04%上昇の0.68%となり、13日には0.04%高の0.72%へ続伸した。13日の米国株式市場はNYダウが前日比80.12ドル安と小幅下落、ナスダック総合株価指数は30.26ポイント高の小幅上昇でまちまちだった。
全般的な株高基調が株高・債券売りにより長期債利回りを上昇させるというのが基本構造だが、コロナ対策での米連銀による利下げと大規模な量的緩和・資金供給により長期債利回りは低下圧力を受けてきたため、米10年債利回りは6月5日の0.90%から8月4日の0.51%まで低下してきていた。しかし、今週は12日に米10年債が380億ドル、13日に30年債が260億ドルの大量入札予定が組まれていたために債券需給の緩和観測から債券売りとなり利回り上昇を招いた。10年債の入札は堅調だったが30年債は低調だったことで長期債利回り上昇基調が13日も継続したようだ。

アフターコロナの復興期待により株高基調が続けば安全資産としての米国長期債への買い意欲が後退して需給緩和感も加わって債券安・利回り上昇が続く可能性はあるだろう。しかし一時的な需給緩和による米長期債利回りの上昇は容認されても、トレンドとして上昇基調を継続することは米連銀の金融緩和政策とは相いれない。米連銀においてはYCC(イールドカーブコントロール)による長期債利回りの上昇抑圧政策は採られていないが、長期債利回り上昇が続くようだと、米連銀が牽制的な動きに入る可能性もあると思われる。

【7月31日からの二段上げが継続、昨年8月底からの上昇初期に近い動き】

ドル円は7月31日安値104.17円からの上昇が続いている。7月31日は当日の安値から高値まで1.88円の上昇となる下ヒゲ陽線だった。その直前は6日連続で日足陰線だったため、下落一服による一時的な上昇に勢いがついた「化け線」に留まるのか、安値更新を回避して戻り高値切り上げに入る底打ちの「勢力線」となるのか注目されたが、8月3日深夜高値を上抜いて二段上げに入っているため、現状は当面の底を付けて反騰期に入った印象だ。中勢としての3月24日天井からの下落基調はまだ継続してゆく可能性が高いのではないかと思われるが、すでにこの間の上昇幅は2.88円に拡大しており、7月1日への上昇幅の2.10円、4月6日への上昇幅2.46円を超えており、3月24日以降の下落途中における反騰規模としては5月6日安値から6月5日高値までの上昇幅3.86円に次ぐ規模となっている。

下落相場の末期で当日の安値から高値まで2円近い上昇となったのが昨年8月26日の底打ちであり、その時は当日の安値から高値へ1.92円の上昇となる陽線で、それまでの凡そ4か月の下落からの出直りとなったのだが、今回の7月31日からの反騰も当時に近い動きとなってきている。昨年8月底からの上昇は今年2月20日まで継続したが、7月31日からの反騰がそのような上昇規模へ向かうためには7月1日高値108.16円を超えて6月5日高値109.84円へ迫る必要があり、7月31日からの戻り幅の半値以上を解消する下落が発生すれば3月24日からの下落基調を継続して一段安へ進む可能性もまだ残るところだ。

昨年8月底からの上昇期並みの上昇トレンドを形成できるのかどうか、米長期債利回りの上昇基調が続いて3月20日からのドル全面安が集結してドル高基調が本格化して行けるのかという点にかかってくると思う。
メジャー通貨の加重平均であるドル指数は8月6日安値で3月20日からの大幅下落が一服しているが、現状は下げ渋りによりやや戻している程度にとどまっており、8月6日安値割れへの余裕もさほど大きくはない。米長期債利回り上昇が一巡してドル指数の下落が再開するようだとドル円の戻りも一巡し、下落再開に入ってゆく可能性もまだまだ高いのではないかと思われる。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、8月6日深夜安値をサイクルボトムとした強気サイクル入りしていたが、12日未明へ続伸したために12日朝時点では8月10日深夜安値ないしは11日夜安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクルに入っているとした。12日夜へ続伸したために13日朝時点では8月10日深夜安値を直近のサイクルボトムとした強気サイクル入りとして13日夜から17日夜にかけての間への上昇を想定し、106.50円割れからは弱気転換注意とした。
8月13日午後の反落では106.50円割れを回避して戻り高値を切り上げているのでまだ上昇途中とみる。また8月6日深夜安値から5日目となる8月13日午後安値を直近のサイクルボトムとして新たな強気サイクル入りしている可能性も検討されるところだ。弱気転換は13日午後安値割れからとし、その場合は14日夜から18日夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では8月7日夜の上昇で先行スパンを突破し、その後も先行スパンを上抜いた状況を維持している。このため先行スパンからの転落を回避するうちは遅行スパン好転中の高値試し優先とし、遅行スパンが一時的に悪化してもその後に再び好転するところからは上昇再開とする。弱気転換は先行スパンから転落するところからとし、その際は遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は8月12日夜への上昇で70ポイントを超え、13日午後へいったん下げてからの高値更新に際しては指数のピークが切り下がっているため弱気逆行となる可能性がある。13日午後安値割れ回避のうちは65ポイント超えから上昇再開とするが、13日午後安値割れからはいったん安値試しへ向かうとみて30ポイント台への低下を伴う下落を想定する。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、8月13日午後安値106.54円を下値支持線、107.10円を上値抵抗線とする。
(2)106.54円を上回るうちは上昇余地ありとし、107.10円超えからは107.60円前後への上昇を想定する。107.50円以上は反落警戒とするが、106.54円以上での推移なら週明けも高値試しを続ける可能性があると考える。
(3)106.54円割れからは弱気サイクル入りとみて106円前後への下落を想定する。106円以下は反発注意とするが105.54円以下での推移なら週明けも安値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な予定】

8/14(金)
11:00 (中) 7月 小売売上高 前年同月比 (6月 -1.8%、予想 0.1%)
11:00 (中) 7月 鉱工業生産 前年同月比 (6月 4.8%、予想 5.1%)
13:30 (日) 6月 第三次産業活動指数 前月比 (5月 -2.1%、予想 6.4%)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調済 (5月 80億ユーロ、予想 145億ユーロ)
18:00 (欧) 6月 貿易収支・季調前 (5月 94億ユーロ、予想 126億ユーロ)
18:00 (欧) 4-6月期GDP改定値 前期比 (速報 -12.1%、予想 -12.1%)
18:00 (欧) 4-6月期GDP改定値 前年同期比 (速報 -15.0%、予想 -15.0%)

21:30 (米) 7月 小売売上高 前月比 (6月 7.5%、予想 1.9%)
21:30 (米) 7月 小売売上高・除自動車 前月比 (6月 7.3%、予想 1.3%)
21:30 (米) 4-6月期非農業部門労働生産性 速報値 前期比 (1−3月 -0.9%、予想 1.5%)
21:30 (米) 4-6月期単位労働コスト 速報値 前期比年率 (1−3月 5.1%、予想 6.2%)
22:15 (米) 7月 鉱工業生産 前月比 (6月 5.4%、予想 3.0%)
22:15 (米) 7月 設備稼働率 (6月 68.6%、予想 70.3%)
23:00 (米) 6月 企業在庫 前月比 (5月 -2.3%、予想 -1.2%)
23:00 (米) 8月 ミシガン大学消費者信頼感指数 速報値 (7月 72.5、予想 72.0)

8/17(月)
08:50 (日) 4-6月期GDP速報値 前期比 (1-3月 -0.6%、予想 -7.6%)
08:50 (日) 4-6月期GDP速報値 年率換算 (1−3月 -2.2%、予想 -27.0%)
13:30 (日) 6月 設備稼働率 前月比 (5月 -11.6%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産確報値 前月比 (速報 2.7%)
13:30 (日) 6月 鉱工業生産確報値 前年同月比 (速報 -17.7%)
21:30 (米) 8月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (7月 17.2、予想 14.5)
23:00 (米) 8月 NAHB住宅市場指数 (7月 72、予想 74)
29:00 (米) 6月 対米証券投資 (5月 -45億ドル)


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