106円を再び割り込む、先週末からのドル全面安一服による反騰も勢い付かず
〇ドル円、レバノン大爆発事故や米10年債利回り低下を背景に5日未明105.61まで失速
〇ゴールド、スポット市場で2000ドルの大台を超えて史上最高値を更新
〇米10年債利回り0.51%、30年債利回り1.19%と長期債利回り低下でドル売り円買い材料に
〇8/4ナスダック総合株価指数38.37ポイント高と終値ベースの史上最高値を2日連続で更新
〇105.50割れからは105円前後試しを想定、105円以下は買い戻し注意
〇106円超えから続伸に入る場合は強気転換注意とし、3日深夜高値106.46試しを想定
【概況】
ドル円は7月31日午前安値で104.17円まで下落してきたところから反騰に転じ、8月3日午前に106.42円、3日深夜には106.46円まで戻して安値からは2円を超える上昇となったのだが、3日深夜以降は伸びず、4日は106円を挟んだ横ばいにとどまり、深夜からはレバノンの大爆発事故等によるリスク回避感の高まりや米10年債利回りの低下を背景としてドルが弱含む中で5日未明には105.61円まで失速した。
7月31日安値で104.17円まで大幅下落してきたのは7月後半からのドル全面安を背景としたもので、ユーロ高がドル安をけん引してきたのだが、ユーロドルは7月31日に1.1907ドルまで上昇して2018年5月以来の高値水準となったものの、3月中旬のコロナショック暴落前の高値を超えて1.20ドルに迫る中で高値警戒感も出て下落した。このためユーロ高を中心としたドル全面安により下落してきたドル円も買い戻しの動きに入り、104円割れを見込んでいた売り方が狼狽的に買い戻しを余儀なくされたことで反騰に勢いがついたという状況だった。しかし、世界的な金融緩和が3月のドル資金需給ひっ迫状態を解消し、金余りによる過剰流動性が投機通貨買いを助長してきたことでユーロ、ポンド、豪ドル等も上昇してドルストレートでのドル全面安が進んできた流れは大きく変化していない。ドル円も106円台まで戻したものの、さらにドル高円安を加速させる推進力にかけたことでいったん仕切り直し的な下落に入った印象であり、そのきっかけにレバノンの爆発事件も寄与したようだ。
【レバノンの大爆発事故、ゴールドと米長期債は買われ、株式市場は平静】
中東レバノンの首都ベイルートの港湾地区で8月4日、複数回にわたり大規模な爆発が発生した。港湾倉庫で保管されていた爆発物に引火したとみられ、地元メディアは少なくとも73人が死亡し負傷者は3700人を超える大惨事となったと報じている。がれきに埋もれている人等もいて犠牲者はまだ増えそうだ。レバノンでの大爆発事件となればテロへの懸念も沸くところだが、今のところはレバノンと対立関係にあるイスラエルが爆発事件への関与を早々に否定しており、ただの事故なのかテロの関与があったものなのかは不明だ。爆発事件を背景に安全資産買いされるゴールドはスポット市場で2000ドルの大台を超えて史上最高値を更新し、米国債券市場もリスク回避感から債券買いとなり、米10年債利回りは前日比0.05%低下の0.51%まで下げて5か月振りの低水準となった。30年債利回りも0.04%低下の1.19%となるなど長期債利回り低下が目立ったことはドル円にとってはドル売り円買い材料となった。
しかし株式市場は平静であり、8月4日のNYダウは164.07ドル高、ナスダック総合株価指数は38.37ポイント高と上昇して終値ベースの史上最高値を2日連続で更新するなど総じて堅調だった。為替市場もドル円で円高へ向いたが、ユーロドルは8月4日夜の反落では3日深夜安値割れを回避したものの1.170ドル台を中心とした持ち合い程度にとどまり、英ポンドも4日夜に3日夜安値を割り込んでから戻しているもののまだ勢い付かないなど、大きな反応は見せていない。株高原油高により豪ドルは3日深夜安値からの反騰を続けている。総じてややドル安であり米長期債利回り低下によりドル安が進んでもよい状況ではある。
8月4日夜に発表された6月の米製造業新規受注は前月比6.2%増となり5月の8.0%増からは伸びが鈍化したが市場予想の5.0%を上回った。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月28日午後高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしていたが、27日深夜安値から3日半となる31日午前安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰に転じた。今回の高値形成期は28日午後高値を基準として31日午後から8月4日午後にかけての間と想定されていたが、8月5日未明へ下落しているため、8月3日深夜高値を直近のサイクルトップとして弱気サイクル入りしたと思われる。今度のボトム形成期は8月5日午前から7日昼にかけての間と想定されるのですでに反騰注意期に入っているが、106円以下での推移中は一段安余地ありとみる。106円超えからは強気転換注意とするが新たな強気サイクル入りは3日深夜高値超えからとし、その場合は6日夜から10日深夜にかけての間への上昇を想定する。
60分足の一目均衡表では8月4日深夜からの下落により遅行スパンが悪化して先行スパンに潜り込んでいる。このため遅行スパン悪化中は安値試し優先とし、先行スパンから転落する場合は下げが加速しやすいと注意する。ただし106円を超えて続伸に入ると先行スパンを上抜き返してくるため上昇再開の可能性を優先して遅行スパン好転中の高値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は8月3日午前高値から3日深夜高値への一段高に際して指数のピークが切り下がる弱気逆行が発生していたために戻り一巡から下落再開へ進みやすいところと指摘したが、8月5日未明には30ポイント台までいったん下げている。50ポイントを回復してさらに続伸するような展開へ進めないうちは一段安余地ありとし、35ポイント割れからは20ポイント台後半への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
7月31日からの反騰が一時的なものに留まるのか、昨年8月26日底から上昇に転じたような強気転換の開始となるのか、もう少し見定める必要がある。週末の米雇用統計にかけての展開で決まってくるのだろうと思われる。
(1)当初、105.00円を下値支持線、106円を上値抵抗線とする。
(2)106円以下での推移中は一段安余地ありとし、105.50円割れからは105円前後試しを想定する。105円以下は買い戻しも入りやすいとみるが、105円割れをスルーで続落に入る場合は104円台中盤へ下値目途を引き下げる。また106円以下での推移なら6日午前にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)106円前後は戻りにつかまりやすいとみるが、106円超えから続伸に入る場合は強気転換注意として3日深夜高値106.46円試しを想定する。106.46円前後はダブルトップ型の戻り天井を付けやすいとみるが、高値更新から続伸に入る場合は107円を目指す上昇期入りとして7月31日安値からの反騰基調がさらに継続しやすくなると考える。
【当面の主な予定】
8/5(水)
10:45 (中) 7月 財新サービス業PMI (6月 58.4、予想 58.0)
16:50 (仏) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 57.8、予想 57.8)
16:55 (独) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 56.7、予想 56.7)
17:00 (欧) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 55.1、予想 55.1)
17:30 (英) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 56.6、予想 56.6)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前月比 (5月 17.8%、予想 5.9%)
18:00 (欧) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 -5.1%、予想 -0.5%)
21:00 (米) 黒田日銀総裁、イエレン前FRB議長、ウィズ・コロナ時代の中央銀行をテーマに講演(ライブ配信)
21:15 (米) 7月 ADP 非農業部門雇用者数 前月比 (6月 +236.9万人、予想 120.0万人)
21:30 (米) 6月 貿易収支 (5月 -546億ドル、予想 -503億ドル)
22:45 (米) 7月 サービス業PMI改定値 (速報 49.6、予想 49.6)
23:00 (米) 7月 ISM非製造業景況指数 (6月 57.1、予想 55.0)
30:00 (米) メスター・クリーブランド連銀総裁、バーチャル講演
8/6(木)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前月比 (5月 10.4%、予想 9.7%)
15:00 (独) 6月 製造業新規受注 前年同月比 (5月 -29.3%、予想 -18.2%)
15:00 (英) イングランド銀行(英中銀)金利発表 (現行 0.10%、予想 0.10%)
15:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 7450億ポンド、予想 7450億ポンド)
15:00 (英) 英中銀金融政策委員会(MPC)議事要旨
15:00 (英) ベイリー英中銀総裁、会見
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 143.4万件、予想 143.4万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1701.8万人、予想 1694.0万人)
23:00 (米) カプラン・ダラス連銀総裁、バーチャル講演
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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