トルコリラ円見通し 対ユーロ対ドルでのリラ安一服、ドル円の急反発で戻すが底打ちには時期尚早か(20/8/3)

8月1日未明には15.20円まで反発した。

トルコリラ円見通し 対ユーロ対ドルでのリラ安一服、ドル円の急反発で戻すが底打ちには時期尚早か(20/8/3)

対ユーロ対ドルでのリラ安一服、ドル円の急反発で戻すが底打ちには時期尚早か

〇トルコリラ円、7/31夜にかけてトルコリラ安が一服、ドル円の反騰もあり8/1には15.20まで反発
〇トルコリラ円、コロナショック騒動発生以降ドル円の動きと同調した推移、今後もその傾向続く可能性
〇対ユーロ、7/31安値から反騰に転じ、11日ぶりに日足は陽線、対ユーロでの下げ一服
〇対ドル、ドル高リラ安が一服で先週を終えたものの、通貨当局の規制及び介入の効果薄れた印象
〇トルコ中銀、インフレ見通しを上方修正、当面の利下げは見送られる可能性
〇15.20を超える場合は15.30台後半を目指すとみる。15円以上での推移なら7/4も高値試しの可能性
〇15円割れからは下げ再開を警戒、14.89割れからは14.60円台への下落を想定

【概況】

トルコリラ円は7月30日早朝に14.89円の安値を付けて6月2日高値以降の安値を更新した。対ユーロ及び対ドルでトルコリラの下落が加速したこと、メジャー通貨におけるドル全面安のなかでドル円も104円台序盤まで円高が進行したことがトルコリラ円の下落背景だったが、31日に14.90円まで下げたものの新たな安値更新には至らず、31日夜にかけては対ユーロ及び対ドルでのトルコリラ安が一服したことと、ドル円の反騰が重なったために8月1日未明には15.20円まで反発した。
トルコリラ円の日足は7月23日から30日までの間を6日連続の陰線で下落して今年5月7日安値14.61円まで下落した時以来の15円割れとなったが、週末夜への反発により5月7日安値割れをひとまず回避して下げが一服した印象だ。しかし、6月2日以降の下落基調を覆すほどの勢いとまでは言えないため、本格的に戻しに入るには日足での陽線連続で15.50円を超えるような反騰が必要と思われる。

【ドル円の下落一服】

今年2月後半からのコロナショック騒動発生以降、トルコリラ円はドル円の動きと同調した推移が続いている。トルコリラ円はコロナショックによる新興国通貨売りが一服したことで5月7日安値から6月2日高値まで戻したが、これはドル円が5月6日安値105.98円から6月5日高値109.84円まで戻したところと同調したものだった。その後はドル円が下落基調に入ったためにトルコリラ円も下落基調に転じ、7月中旬まではドル円が下げ一服で持ち合っていたためにトルコリラ円も小動きだったが、7月23日からドル円の下落が加速するとトルコリラ円も連日の下落となり、ドル円が7月31日に104.17円まで下げる過程でトルコリラ円も7月30日へ安値を切り下げてきた。

7月31日のドル円反騰は、前日までのドル全面安を牽引してきたユーロが下落したことでドル安にブレーキがかかったことがきっかけだった。7月30日に米4−6月期GDPが年率でマイナス32.9%となったが、7月31日夕刻にはユーロ圏の4−6月期GDPがマイナス40.3%まで悪化したことでユーロが反落したことが影響した印象だ。
ドル円は円高感よりもメジャー通貨におけるドル全面安を背景として下落してきたが、7月31日序盤は日本における感染拡大を嫌気した株安にも影響されていたものの、104円台序盤に対する突っ込み警戒感とユーロの反落が買い戻しのきっかとなって106円台をいったんつけるところまで反騰した。日足としては直前3日間の下落分を解消する大きな陽線であり、安値から2円近い反騰となる陽線としては昨年8月26日の底打ち時にも近いため、さらに戻りを試して行く可能性もあるところだが、下落途中での狼狽的な買い戻しが連鎖反応して一時的に大きく戻した程度にとどまる可能性もある。

今週末の米雇用統計へ向けて重要経済指標の発表も相次ぐことや世界的及び日米の感染拡大状況によっては早々に円高ドル安再開となる可能性もあるところと思われる。トルコリラ円にとっては、ドル円が105円以上での推移なら売り圧力も鈍く106円台中盤へ上昇するなら押し上げ要因になると思われるが、ドル円が105円割れへ失速するようならトルコリラ円も下落再開へ向かいやすくなると注意したい。

【対ユーロと対ドルでのトルコリラ下落一服】

7月後半のトルコリラ円下落には円高と共に対ユーロ及び対ドルでのトルコリラ下落が大きく影響した。
トルコリラは対ユーロで7月29日に8.26リラの安値をつけて2018年8月の史上最安値8.23リラを割り込み、7月31日には8.30リラまで続落した。日足では7月17日から7月30日まで10日連続の陰線で下落したが、31日は安値から反騰に転じて11日ぶりに日足は陽線となり対ユーロでの下げ一服となった。

対ユーロでのトルコリラ安はトルコの外貨準備の脆弱性とトルコのインフレ率が政策金利を上回る実質マイナス金利状態に陥っている中で、トルコ中銀等によるトルコリラ安の変動抑制政策が対ドルでは一定の効果を発揮して6.85リラを中心とした小動きに収めることに成功していたものの、対ユーロでは制御しきれず、ユーロが対ドルでも大幅に上昇する中でユーロ買いトルコリラ売りも加速した結果といえる。また7月27日にフランスがトルコの東地中海におけるガス田採掘強硬に対してEUとして制裁を課すべきだとしたことや、英フィナンシャルタイムズ紙等によるリラ安への言及等も影響したと思われる。
ユーロドルが7月30日深夜高値から反落しているが、7月以降のユーロ高ドル安基調を継続する中での小調整に留まるならユーロ高ドル安にとどまらず、ユーロ高トルコリラ安をさらに加速させかねないと注意したい。週足では6月21日の週から6週連続のユーロ高リラ安であり、7月12日からの週は前週比1.04%、7月19日からの週は1.83%、7月26日からの週は2.88%のユーロ高リラ安となっている。

トルコリラは対ドルにおいて6月中旬以降は6.85リラを中心値としてわずかなレンジに収まる横ばいで規制的な動きが続いてきたが、7月3日にトルコ消費者物価が予想を超える上昇となったために実質マイナス金利感が強まって6.98リラまで一時的に急落した。その時は早々に元の6.85リラを中心としたレンジに収まってフラッシュクラッシュ的な動きとされたが、7月27日にはユーロ高リラ安進行に触発されて6.96リラへ一時的に上昇、28日から30日まではフラッシュクラッシュには収まらずに終値ベースでのドル高リラ安が進行して7.0リラ台へ一段安となった。31日は7.01リラへ安値を更新してから反落したためにドル高リラ安は一服した格好で先週を終えているが、徐々に通貨当局による規制及び対ドルでのトルコリラ防衛的な介入でもブレーキが利かなくなってきている印象だ。先々週まではわずかな値動きだったところ、先週の週足は前週比1.80%のドル高リラ安だった。

【消費者物価、外貨準備高に注目】

7月3日に発表されたトルコの6月消費者物価上昇率は年率で12.62%上昇となる5月の11.39%上昇から加速した。物価上昇を受けてトルコ中銀は7月23日の金融政策決定会合(TCMB)において政策金利の週間レポレートを8.25%へ据え置いた。政策金利を物価上昇率が上回る実質的なマイナス金利となったため、景気対策としての利下げを継続すると通貨安が加速しかねないと懸念しての判断と思われる。
トルコ中銀は7月29日のインフレレポートにおいて2020年末のインフレ見通しを4月の前回予想時の7.4%から8.9%へ修正した。予想レンジは6.9%から10.9%とされた。このインフレ見通しにより、当面の利下げは見送られてゆくのだろうと思われる。8月4日には7月のトルコ消費者物価の発表があるが、前回の12.62%から若干の低下となっても、トルコ中銀のインフレ見通しを下方修正させるようなものにならなければ8月20日の次回中銀会合でも利下げは見送られるのだろうと思われる。

週次で発表されている外貨準備についても注視しておきたい。7月24日時点のトルコ外貨準備高は509.3億ドルで前週の492.3億ドルから若干持ち直したが、かなりの低水準にとどまっている。今週は8月7日に7月31日時点の数字が発表されるが、外貨準備が落ちるようだと対ユーロ、対ドルでのトルコリラ売りが進む可能性もあると注意したい。

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月25日未明安値を前回のサイクルボトムとし、底割れによる弱気サイクル入りとして30日未明から8月3日朝にかけての間へ下落を想定してきた。31日午前時点では30日早朝安値を直近のサイクルボトムとしたが、31日にほぼ同値まで下げてから深夜へ反騰しているので、30日早朝と31日朝の両安値をダブル底とする。トップ形成期は30日午後の戻り高値を基準として8月4日午後から6日午後にかけての間と想定されるが、戻りは短命の可能性もあるので15.0円割れからは弱気転換注意とし、30日早朝安値14.89円割れからは弱気サイクル入りとして8月5日朝から7日朝にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では7月31日深夜への反騰で遅行スパンが好転し、先行スパンも上抜いた。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、高値更新が続かないと8月3日夜にかけては遅行スパンが悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは下げ再開とし、先行スパン転落からは下げが加速しやすいと警戒する。

60分足の相対力指数は30日早朝安値と31日朝安値がほぼフラットだったのに対して指数のボトムが切り上がる強気逆行となり、31日深夜には70ポイント台に到達したが、その後の反落で60ポイントを割り込んでいる。50ポイント以上での推移中は上昇余地ありとするが、31日深夜高値を上抜く場合に指数のピークが切り下がる場合は弱気逆行による下げ再開を警戒し、50ポイント割れからは下げ再開と考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、15.00円を下値支持線、31日深夜高値15.20円を上値抵抗線とみる。
(2)15円以上での推移中は上昇余地ありとし、15.20円を超える場合は15.30円台後半を目指すとみる。15.35円以上葉反落注意とするが、15円以上での推移なら4日も高値試しを続ける可能性があると考える。
りやすいとみる。
(3)15円割れからは下げ再開を警戒し、30日安値14.89円割れからはダブル底ラインを割り込んでの一段安となるために14.60円台への下落を想定する。14.70円前後はいったん買い戻しも入りやすいとみるが、対ユーロ及び対ドルでのトルコリラ安が進み、ドル円も下落再開となる場合はトルコリラ円の下落も厳しくなる可能性があると注意する。

【当面の主な経済指標等の予定】

8月4日
 16:00 7月消費者物価指数 前年比 (6月 12.62%、予想 12.0%)
 16:00 7月消費者物価指数 前月比 (6月 1.13%、予想 0.8%)
 16:00 7月生産者物価指数 前年比 (6月 6.17%、予想 8.3%)
 16:00 7月生産者物価指数 前月比 (6月 0.69%、予想 1.0%)
 16:00 7月イスタンブール製造業PMI (6月 53.9、予想 53.2)
8月7日
 20.30 外貨準備高、7月31日時点 (前週 509.3億ドル)
8月10日
 16:00 5月失業率 (4月 12.8%、予想 16.3%)
8月13日
 20:30 外貨準備 8月7日時点
8月14日
 16:00 6月経常収支 (5月 −37.60億ドル)
 16:00 6月鉱工業生産 前年比 (5月 -19.9%) 
 16:00 6月小売売上高 前月比 (5月 3.8%)
 16:00 6月小売売上高 前年比 (5月 -16.7%)

注:ポイント要約は編集部

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