対ユーロ、対ドルでのトルコリラ安続く、円高も売り圧力
〇トルコリラ円7/30早朝14.89の安値を付け6月2日高値以降の安値を更新
〇対ドルでのトルコリラ、終値ベースで7/24から4日続落しドル高リラ安が加速
〇対ユーロ、29日に8.26の安値をつけ2018年8月の史上最安値8.23を割り込む
〇14.89割れからは14.70円台前半への下落を想定、14.75以下は反発注意
〇15.15超えからは戻しに入るとみて28日昼高値15.37試しを想定、15.30以上は反落注意
【概況】
トルコリラ円は7月30日早朝に14.89円の安値を付けて6月2日高値以降の安値を更新した。
7月27日深夜から28日未明にかけて一時的に急落して15.10円前後(ベンダーによっては安値で14.94円)へ一時的に急落したところは買い戻されてフラッシュクラッシュ的な動きにとどまっていたが、28日夕刻に15.20円を割り込んでから続落に入り、29日早朝には14.93円まで安値を更新した。29日もジリ安傾向が続いて15.0円を割り込み、米連銀FOMCがゼロ金利及び量的金融緩和政策を現状維持としてドル安感が強まる中でドル円の円高ドル安に押され、また28日未明へのフラッシュクラッシュを引き起こした対ユーロ、対ドルでのリラ安も続いたために安値更新となった。
【対ドル、対ユーロでのトルコリラ下落継続】
対ドルでのトルコリラは6月中旬からは6.85リラを中心とした小幅なレンジに留まる膠着相場が続き、7月3日には6.98リラまで一時的な急落を発生させたもののフラッシュクラッシュ的な動きにとどまって元の6.85リラ中心の膠着相場を再開していたが、7月27日に再びフラッシュクラッシュ的な下落を発生させて6.96リラまで急落した翌日の28日からはフラッシュクラッシュ的な動きに収まらず、終値ベースでのドル高リラ安が加速し始めた。7月29日には安値で7.00リラまで下落して7月3日の急落時安値を割り込み、終値も6.96リラへ前日比0.49%高と下落したが、終値ベースでは7月24日から29日まで4日続落であり、前週末比では凡そ2%のドル高リラ安となっている。
トルコリラ安を招いているのは対ユーロでの大幅下落の進行だが、対ユーロでは29日に8.26リラの安値をつけて2018年8月の史上最安値8.23リラを割り込んだ。対ユーロの日足は7月17日から29日まで9日連続の下落であり、29日は終値ベースで1.04%安となった。週足では6月21日の週から6週連続の下落であり、今週は先週末比ですでに3.01%安と下落が加速している。
7月27日にトルコの東地中海における天然ガス田探査に対してフランスが批判を強めてEUは制裁発動すべきとしたことがユーロ買いリラ売りを助長したとされるが、それ以前からのリラ安の加速であり、外貨準備の脆弱性をついてユーロ買いリラ売りがターゲット化されている印象だ。
外貨準備が減少傾向にある中でトルコ中銀は通貨防衛的に対ドルでの変動を抑制してきたようだが、対ユーロまでは手が回っていない、余裕がない印象もある。7月29日にトルコ中銀総裁はインフレ率が年末には8.9%へ、2021年末には6.2%へ低下するとの物価見通しを示し、外貨準備も十分にあるとの姿勢を示したが、コロナ不況の長期化による景気減速と外貨準備の脆弱性を踏まえて欧州勢がリラ売りへ動き、対ドルでの値動きも膠着状態から抜け出してリラ安が加速し始めた印象だ。
【円高も継続】
ドル円は7月24日の下落で7月10日から23日まで続けていた106.60円台を下値支持線とした持ち合いから転落し、7月30日未明には104.74円まで安値を切り下げている。28日以降は下落角度が緩んでいるものの、5月6日と6月23日の両安値によるダブル底ラインを割り込んでの一段安であり、105円割れに対する突っ込み警戒感もあるものの安値を出し切って反騰入りする姿勢に欠ける動きとなっている。
ドル円は3月序盤にコロナショックによるリスク回避感を背景に3月9日安値101.23円へ急落した後、ドル資金需給ひっ迫で3月24日高値111.71円まで急反発したが、世界的な金融緩和によりドル資金需給が緩和されるとドル安が進み始めたために下落基調に入った。6月5日にいったん戻したものの7月24日の下落で5月6日安値を割り込む一段安となってからは下げ足が早まってきている。このため、トルコリラ円にとっては、対ユーロ及び対ドルでのリラ安進行とドル円における円高圧力が重なる状況にある。
【4か月サイクルにおける下落期、前回のサイクルボトム=5月7日安値に迫る】
トルコリラ円は概ね4か月前後の底打ちサイクルで推移してきた。2018年8月のトルコ通貨危機でつけた同年8月13日安値以降は、2019年1月3日安値、同年5月9日安値、同年8月26日安値、2020年1月6日安値と底打ちし、直近ではコロナショックによる新興国通貨売りを背景とした下落時に付けた5月7日安値でこのサイクルの底を付けている。すでに6月3日高値でこのサイクルにおける戻りが一巡し、現在は次の底形成期となる8月末から9月序盤にかけての間への下落期に入っている印象だ。
15.0円を割り込むところまで下げてきたために、5月7日安値14.61円(ベンダーによっては14.91円)を目指す流れに入っているのではないかと思われる。
【60分足の一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月25日未明安値を前回のサイクルボトムとして底割れからは新たな弱気サイクル入りとしていたが、7月27日に7月25日未明安値を割り込んだために28日朝時点では弱気サイクル入りとして30日未明から8月3日朝にかけての間へ下落を想定した。28日未明のフラッシュクラッシュは除外してその後も安値更新が続いているのでまだ一段安余地ありとみるが、前回ボトムから3日を経過しているので15.15円を超えるところからはいったん強気サイクル入りとみて30日の日中から8月3日午前にかけての間への上昇を想定する。ただしいったん強気サイクル入りした後にこの間の安値を更新するところからは新たな弱気サイクル入りとなる点に注意し、その場合は5月7日安値試しへ向かうと考える。
60分足の一目均衡表では遅行スパンの悪化、先行スパンからの転落状態が続いている。新たな安値更新を回避して戻しに入れば遅行スパンは好転しやすくなるが、強気転換は先行スパン突破からとし、先行スパンを上抜けないうちは遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は7月27日夜以降の安値更新に対して指数のボトムが切り上がり傾向にあるため下げ渋りからいったん戻しに入ってもよい状況と思われるが、50ポイント台が戻りの抵抗となっている。このため40ポイント以上での推移中は上昇余地ありとみるが、30ポイント割れからは下げ再開とみて20ポイント割れを目指すと考える。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月30日早朝安値14.89円を下値支持線、15.15円を上値抵抗線とみる。
(2)15.15円以下での推移中は一段安余地ありとし、14.89円割れからは14.70円台前半への下落を想定する。14.75円以下は反発注意とするが、15円以下での推移なら31日にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)15.15円超えからはいったん戻しに入るとみて28日昼高値15.37円試しを想定する。15.30円以上は反落注意とするが、15.15円以上を維持しての推移なら31日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
7月30日
16:00 7月経済信頼感指数 (6月 73.5、予想 70.8)
7月31日
16:00 第2四半期観光収入 (前期 41.0億ドル、予想 11.0億ドル)
8月4日
16:00 7月消費者物価指数 前年比 (6月 12.62%)
16:00 7月消費者物価指数 前月比 (6月 1.13%)
16:00 7月生産者物価指数 前年比 (6月 6.17%)
16:00 7月生産者物価指数 前月比 (6月 0.69%)
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