トルコリラ円見通し 対ユーロで史上最安値に迫り、対ドルでも大幅下落、リラ安感強まる(20/7/29)

トルコリラ円は、29日早朝に14.93円まで続落して27日のフラッシュクラッシュ的な急落時の安値を割り込んだ。

トルコリラ円見通し 対ユーロで史上最安値に迫り、対ドルでも大幅下落、リラ安感強まる(20/7/29)

トルコリラは対ユーロで史上最安値に迫り、対ドルでも大幅下落、リラ安感強まる

〇トルコリラ円29日早朝14.93まで続落し27日急落時の安値15.10を割り込む
〇円高ドル安による売り圧力と対ドル及び対ユーロでのトルコリラ安が重なる状況
〇外貨準備高減少の中、通貨防衛力の脆弱さが欧州勢によるリラ売りを加速
〇14.93割れからは14.80前後への下落を想定、14.80以下は反発注意
〇15.20超えからは戻しに入るとみて28日昼高値15.37試しを想定、15.30以上は反落注意

【概況】

トルコリラ円は7月27日深夜に15.10リラ前後へ一時的に急落したところでは15.40円手前まで早々に切り返したのだが、28日夕刻から再び下落に転じて15.10ドル台へ下落、29日早朝には14.93円まで続落して27日のフラッシュクラッシュ的な急落時の安値を割り込んだ。
7月28日深夜にドル円が105円割れまで下落したこともあるが、トルコリラが対ユーロ、対ドルで大幅下落したことが影響している。

【対ドル、対ユーロでトルコリラが下落】

対ドルでのトルコリラは6月中旬からは6.85リラを中心とした小幅なレンジに留まる膠着相場が続いてきたが、7月3日には6.98リラまで一時的な急落を発生させ、再び6.85リラ中心の膠着相場に戻っていたが7月27日には再びフラッシュクラッシュを発生させて6.96リラまで急落した。この時も一時的な急落として元の水準へ押し返していたのだが、28日は6.97リラまで下落した後の終値も6.94リラの安値圏にとどまった。膠着相場における一時的な急落という範囲を超えてドル高リラ安が進行し始めた印象だ。28日の下落率は1.19%に達した。

対ユーロでのトルコリラは7月27日に8.185ユーロまで急落して2018年8月のトルコ通貨危機時つけた最安値8.23ユーロに迫り、28日も8.183リラまで上昇している。対ドルでは6.85リラ前後で取引規制等を意識して値動きが抑え込まれていたが、対ユーロでは7月に入ってからのユーロドルにおけるユーロ高ドル安が加速したことに影響されてユーロ高リラ安が加速していた。特に7月27日にはトルコの東地中海における天然ガス田探査に対するフランスの批判が強まってEUとしての制裁発動に言及されたことがユーロ高リラ安を加速させているようだ。対ユーロでは27日が前日比1.03%安、28日も0.91%安で7月17日からは8日間の続落となっている。

トルコ通貨当局は対ドルでのトルコリラ安定を中心目標としてドル売り介入を行っている模様であり今週だけでも20億ドルを使っているとのCNBC報道もある。外貨準備高が減少している中で通貨防衛力の脆弱さがクローズアップされていることも欧州勢によるリラ売りを加速させており、トルコ通貨当局も対ユーロでの通貨防衛には手が回っていないのかもしれない。

【円高加速】

トルコリラ円にとってはドル円における円高ドル安の進行も主要なプレッシャーとなっている。ドル円は7月10日から23日までの間は106.60円台を下値支持線として1円弱の値幅での持ち合いを続けてきたが、ドル安を背景に7月24日に持ち合いから転落し、27日深夜に105.10円へ下落、28日深夜も104.93円まで続落した。29日午前も105円を挟んだ横ばいにとどまっており安値更新への余裕が乏しい。
ドル円は5月6日と6月23日の両安値をダブル底としていたが、7月24日からの一段安でダブル底ラインを割り込んだため円高感が強まっている。6月5日高値から二段下げ型で下落しているが、3月24日高値から5月6日への下落規模と同レベルの下げとすれば下値計算値は104.11円、6月5日への戻り幅の倍返しなら下値計算値は102.12円であり、さらにメジャー通貨におけるドル安が加速する場合は3月9日安値101.23円を目指す可能性も懸念される。

トルコリラとしてはドル円における円高ドル安による売り圧力と、対ドル及び対ユーロでのトルコリラ安が重なる状況となっている。フラッシュクラッシュ的な一時的急落から戻してもその後の下落で急落時の安値を割り込んでゆくような展開も懸念される。

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

【60分足の一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月25日未明安値を直近のサイクルボトムとし、底割れからは新たな弱気サイクル入りとしていたが、7月27日に25日未明安値を割り込んだため、28日朝時点では底割れによる弱気サイクル入りとして30日未明から8月3日朝にかけての間へ下落を想定した。29日早朝へ一段安しているため、15.20円前後までを戻り抵抗としてまだ一段安余地ありとみる。15.20円超えからは強気転換注意とするが、新たな強気サイクル入りは28日昼高値超えからとする。

60分足の一目均衡表では遅行スパンの悪化、先行スパンからの転落状態が続いているため、遅行スパン悪化中は安値試し優先とする。また一時的に遅行スパンが好転しても先行スパンが戻り抵抗帯となりやすいとみて、遅行スパンが再び悪化するところからは下げ再開とみる。

60分足の相対力指数は28日への一段安に対して指数のボトムが切り上がっているものの、50ポイントを超える上昇とならないうちはまだ一段安余地ありとし、30ポイント割れからは下げ再開として20ポイント割れを目指す可能性があると考える。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、7月29日早朝安値14.93円を下値支持線、15.20円を上値抵抗線とみる。
(2)15.20円以下での推移中は一段安余地ありとし、14.93円割れからは14.80円前後への下落を想定する。14.80円以下は反発注意とするが、15円以下での推移なら30日にかけても安値試しを続けやすいとみる。
(3)15.20円超えからはいったん戻しに入るとみて28日昼高値15.37円試しを想定する。15.30円以上は反落注意とするが、15.20円以上を維持しての推移なら30日も高値試しへ向かいやすいとみる。

【当面の主な経済指標等の予定】

7月29日
 16:00 6月貿易収支 (5月 -34.2億ドル、予想 -33.0億ドル)
 16:30 トルコ中銀インフレレポート
 20:00 トルコ中銀MPC議事要旨
7月30日
 16:00 7月経済信頼感指数 (6月 73.5、予想 70.8)
7月31日
 16:00 第2四半期観光収入 (前期 41.0億ドル、予想 11.0億ドル)
8月4日
 16:00 7月消費者物価指数 前年比 (6月 12.62%)
 16:00 7月消費者物価指数 前月比 (6月 1.13%)
 16:00 7月生産者物価指数 前年比 (6月 6.17%)
 16:00 7月生産者物価指数 前月比 (6月 0.69%)

注:ポイント要約は編集部

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