7月10日深夜、15日深夜に続いて22日未明に三度目の106.60円台へ下落
〇ドル円7/21夜からのドル全面安に呼応し107円を割り込み、22日未明に106.66まで下落
〇EU首脳会議総額7500億ユーロ(約92兆円)の復興基金創設で合意 ユーロドルは1年7か月振り高値
〇アフターコロナの復興期待根強く、3月後半からの株高基調は継続
〇107.20超えからは20日午前高値107.51試し、107.40以上は反落警戒
〇106.60を割り込む場合、7/10以降のボックス型持ち合いからの転落とし106円前後試しを想定
【概況】
ドル円は7月21日夜からのドル全面安の流れに呼応して107円を割り込み、22日未明には106.66円まで下落した。7月10日深夜安値106.62円の後は、15日深夜に106.64円まで下げてから20日午前高値107.51円まで戻したもののその後は伸びず、21日夜はユーロやポンド、資源通貨の大幅上昇を背景にドル全面安となり、ドル円においてもドル安感が勝っての下落となった。
7月10日深夜安値を含めてこれで三度目の106.60円台だが、10日深夜から15日深夜、22日未明とわずかに安値は切り上がっている。また戻り高値も7月14日夜107.42円から20日午前107.51円へ若干切り上がったため、現状は106.60円台から107.50円前後までのレンジ内でのボックス型持ち合いで往来している印象だ。レンジの下限まで下げたところからレンジ上限へ戻せば往来相場の継続となり、三度の106.60円台での安値を三点底としてボックス型持ち合いから上放れへ向かう可能性もあるだろうが、持ち合い中の安値である7月10日深夜106.62円を割り込む場合は持ち合いからの転落で一段安入りとなり下げ足が早まる可能性もあるところだ。安値への余裕が乏しい状況のため、ドル全面安がさらに進むようだとドル円における円高感が強まりやすいところと注意される。
【ユーロドルは2018年末以来1年7か月振り高値で3月暴落を解消】
EU首脳会議は7月21日に新型コロナウイルス対策として総額7500億ユーロ(約92兆円)の復興基金創設で合意した。基金の規模及び返済義務のない補助金と返済が必要な融資の比率をめぐって交渉は難航し、7月17日から18日までの2日間での当初予定を大幅に超えて協議は5日間に及んだが、補助金として各国に交付する金額を原案の5000億ユーロから3900億ユーロに減額して合意した。この復興基金創設への期待を背景に上昇してきたユーロは合意発表後にいったんはイベント通過感で利食い先行となってやや売られたものの、スペインやイタリア等の被害が深刻だった地域にとっての復興期待感が強まったとしてユーロ高基調継続として深夜に一段高となった。21日の主要欧州株が上昇し、米国株も上昇したことで欧米の株高基調も継続するとして為替市場でのリスク選好感が一段と強まり、ドルを売って投機通貨を買う動きが助長された。
7月21日のNYダウは前日比159.53ドル高と上昇、ハイテク株中心のナスダック総合株価指数は同86.73ポイント安とマイナスで終了したものの取引時間中に1万939.93ポイントを付けて7月13日高値を上抜いて史上最高値を更新した。世界的な感染拡大が続いていること、米国の経済活動再開も西部や南部の感染拡大により動きが鈍っていることは不安材料ではあるが、主要国の大規模な量的緩和や経済対策を背景としたアフターコロナの復興期待も相当に根強く、3月後半からの株高基調は継続している。
株高は為替市場におけるリスク選好性を高めている。ユーロドルはコロナショックの初期には株安ドル安反応の中で3月9日高値1.1494ドルへと上昇したが株暴落が深刻化して金融市場全般が手仕舞い売りに見舞われてドルの買い戻しが殺到する中で3月23日安値1.0636ドルまで暴落した。しかしその後はG7が協調したドル資金供給を始め、量的緩和によりドルの需給ひっ迫が解消されるとユーロも持ち直しに入った。7月に入ると株高=リスク選好での投機通貨買い=ドル安という反応パターンが形成されてユーロドルは連騰に入っていたが、7月21日高値で3月暴落前の3月9日高値を上抜いた。
ユーロの他、ポンド、豪ドル、NZドルも買われておりドル全面安だが、メジャー通貨に対する加重平均であるドル指数も21日には95.04ポイントへ下落して6月10日安値を割り込む一段安で3月9日安値94.63ポイントに迫っている。ドル需給ひっ迫による3月20日への上昇分はほぼ解消した。
通常なら株高=リスク選好=クロス円での投機通貨買いにより円安というのが基本的な反応だが、現状はそれよりもドル安感が勝っているためにクロス円ではユーロ高円安、豪ドル高円安等で円安となるものの、ドル円ではドルストレートでのドル安が勝って下落するという状況だ。クロス円での円安もあるためにドル安円高の動きも他通貨に比べれば今のところは限定的なものにとどまっているが、ドル全面安が進むなら、ドル円におけるドル安円高もさらに加速してゆく可能性もあると注意すべき局面だ。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月10日深夜と7月15日深夜の両安値をダブルボトムとして強気サイクル入りしたが、7月20日午前高値で直近のサイクルトップを付けて弱気サイクル入りしたと思われる。ボトム形成期は15日深夜安値を基準とすれば現状から22日深夜にかけての間と想定されるが、18日早朝安値を基準とすれば23日早朝から27日朝にかけての間へと延長される可能性もある。このため、107円を超えないか一時的に超えても維持できないうちは一段安余地ありとし、107.20円を超えるところからは強気転換注意として20日午前高値試しを想定する。
60分足の一目均衡表では7月21日夜の下落で遅行スパンが悪化、先行スパンから転落した。新たな安値更新を回避して戻せば22日夜には遅行スパンも好転しやすくなるが、安値更新の場合は遅行スパン好転の機会が先送りされる。このため遅行スパン悪化中は一段安警戒とし、遅行スパン好転からは強気転換注意とし、先行スパンを再び上抜き返すところからは上昇再開という見方をしたい。
60分足の相対力指数は7月22日未明への下落で20ポイント台序盤まで低下した。相場がもう一段安するところで指数のボトムが切り上がる強気逆行が発生する場合は上昇再開の可能性が高まるが、逆行が見られないうちはもう一段安しやすいと考える。上昇再開には50ポイント超えからの続伸が必要と思われる。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、106.60円を下値支持線、107.00円を上値抵抗線とする。
(2)107円以下での推移中は一段安警戒とし、106.60円を割り込む場合は7月10日以降のボックス型持ち合いからの転落として106円前後試し、さらに先行きで105円台中盤を目指す下落へ向かいやすくなるとみる。
(3)107円台回復・維持へ戻す場合はボックス型持ち合いの継続となる可能性が高まるとし、107.20円超えからは20日午前高値107.51円試しとする。107.40円以上は反落警戒とするが、107円以上を維持しての推移なら23日も高値試しへ向かいやすいとみる。
【当面の主な予定】
7/22(水)
17:00 (日) 月例経済報告閣僚会議
22:00 (米) 5月 住宅価格指数 前月比 (4月 0.2%、予想 0.3%)
22:15 (欧) ラガルドECB総裁発言(ワシントンポストライブ参加)
23:00 (米) 6月 中古住宅販売件数・年率換算件数 (5月 391万件、予想 480万件)
23:00 (米) 6月 中古住宅販売件数 前月比 (5月 -9.7%、予想 24.5%)
24:00 (欧) デギンドスECB副総裁副総裁、講演
7/23(木)
休場、日本
未 定 (南) 南アフリカ準備銀行 政策金利 (現行 3.75%、予想 3.50%)
15:00 (独) 8月GFK消費者信頼感 (7月 -9.6、予想 -4.8)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 130.0万件、予想 128.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1733.8万人、予想 1710.0万人)
23:00 (米) 6月 景気先行指数 前月比 (5月 2.8%、予想 2.1%)
23:00 (欧) 7月 消費者信頼感速報 (6月 -14.7、予想 -12.0)
注:ポイント要約は編集部
オーダー/ポジション状況
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