ドル円見通し 107円台を維持しているが107.50円超えへ進めず(20/7/15)

ドル円は先週末の7月10日深夜に106.62円まで下落したが、6月23日深夜安値106.06円割れを回避してその後は107円台前半へ戻している。

ドル円見通し 107円台を維持しているが107.50円超えへ進めず(20/7/15)

107円台を維持しているが107.50円超えへ進めず

〇ドル円NYダウの大幅上昇でドル安進行、13日以降の上昇からはやや失速するも107円台前半維持
〇米医薬品企業の新型コロナワクチン治験報道から株高反応となり、感染拡大警戒しつつ復興期待優先
〇トランプ米大統領が香港への優遇措置廃止に関する大統領令に署名。今後米中対立の深刻化懸念
〇本日日銀政策決定会合結果、展望レポート公表、午後黒田総裁会見も
〇107円以上での推移中は上昇余地あるが、107.50前後は戻り売りに注意
〇107円割れから続落に入る場合は、10日深夜安値106.62試しへ向かう可能性

【概況】

ドル円は先週末の7月10日深夜に106.62円まで下落したが、6月23日深夜安値106.06円割れを回避してその後は107円台前半へ戻している。最近は米国株高に際して為替市場がリスクオン優先となってユーロ等が上昇してドル安感が強まり、逆に株安の場合はリスク回避感からユーロが売られてドルが買い戻されてドル高感が強まる動きが見られ、ドル円は株高に同調した円安よりもユーロ等の動向を見ながら動いている印象だ。7月10日への下落時はドル安を反映してドル円も下落し、13日は序盤の株高後にナスダック等が急落してドルが買い戻される中でドル円はやや上昇。14日も序盤は株安が重石となったもののNYダウの大幅上昇でユーロ高ドル安が進んだためにドル円はやや失速となった。株高も勢い付けばドル円も同調した円安へ進むものだが、今のところはドルストレートでのドル高ドル安に対する反応を気にしつつ株高に対しては積極的な円安反応を見せられないという印象だ。

世界の感染拡大は続いており、米国も日々およそ6万人規模の増加で感染者は335万人を超えている。西部カリフォルニア州では屋内活動を再び停止するよう州全土に命じたが、テキサス、フロリダ、カリフォルニア、アリゾナ等の感染拡大は日を追って深刻化している。これらは株式市場の楽観的復興期待へのブレーキとなるが、7月14日は米バイオ医薬品企業モデルナが開発中の新型コロナワクチン候補について最終段階の治験に入るとの報道から株高反応となっており、感染拡大問題を警戒しつつも復興期待が優先されて強気材料に反応しやすいというのが株式市場の心理状態と言えそうだ。
NYダウは前日比556.79ドル高と上昇し、13日に一時500ドルを超える上昇だったところから10.50ドル高まで上昇幅を削った下げ幅を解消した。ナスダック総合株価指数も97.74ポイント高と上昇したが、前日に226.60ポイント安と大幅下落した状況は解消されていない。

米労働省が発表した6月の消費者物価指数は前月比0.6%上昇で5月の0.1%低下から改善して市場予想の0.5%上昇を上回った。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同0.2%上昇で5月の0.1%低下から改善、市場予想の0.1%上昇を上回った。いずれも4カ月ぶりの上昇だった。また前年同月比は全体が0.6%上昇で5月の0.1%上昇を上回り市場予想と一致し、コアは1.2%上昇で5月の1.2%上昇と同じだったが市場予想の1.1%上昇は上回った。物価がやや持ち直していることは復興期待を助長するものの、水準は極めて低いままであり、不況長期化の懸念も継続している。これらに対する市場反応は限定的だった。

【米中対立】

トランプ米大統領は7月14日の会見で香港への優遇措置廃止に関する大統領令に署名したと発表した。大統領は「香港を中国本土と同様に扱う」とし、中国当局者等による香港の自治侵害に対して制裁を科す「香港自治法案」にも署名して成立させた。このため中国側が報復的な対抗措置を取ることで米中対立が深刻化してゆく懸念も出ている。
11月の大統領選挙に対しては新型コロナウイルスの感染源として中国を批判してきたが、香港問題をきっかけとして中国への強硬姿勢を再選へのアピールとして利用する姿勢が見えてきている。6月30日に施行された「香港国家安全維持法」により香港の民主化運動は大幅に抑制され始めているが、米国による香港自治法成立により香港の自治侵害に関わった中国当局者らへの資産凍結及び制裁対象者と取引した金融機関への制裁も可能となっている。

【日銀金融政策決定会合】

7月15日は日銀金融政策決定会合がある。物価情勢の展望(展望リポート)も発表され、午後には黒田東彦総裁の記者会見もある。
日銀はコロナショック対策として今年3月16日に日程を前倒しして緊急会合を開き、ETF等の買い入れ上限を倍増させ、CP・社債の購入も増額した。4月27日の会合では国債買い入れの上限を撤廃し、CP・社債の購入もさらに増額した。5月22日にも臨時会合を開いて中小企業の資金繰り支援策を決定している。6月16日会合は現状維持姿勢となり、今回も市場にとってサプライズとなるような内容は期待されていない。
日銀が現状よりもさらに金融緩和政策を拡大するなら株高円安に寄与することも考えられるが、手詰まり感が強まるようだと却って円高要因になりかねない。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、7月7日午前安値を前回のサイクルボトム、7日夜高値を同サイクルトップとして弱気サイクル入りしていたが、7日午前安値から3日半となる10日深夜安値で直近のサイクルボトムをつけて強気サイクル入りした。今回のトップ形成期は7月7日夜高値を基準とすれば10日夜から14日夜にかけての間と想定されたが、14日夜へ高値を切り上げてサイクルトップ形成期の延長に入っている。前回のサイクルトップ形成が7月6日午前と7日夕のダブルトップにより短縮されたために延長入りしていると思われる。107.50円を超えられずに上値も重い状況のため、107円割れからは弱気サイクル入りとして15日夜から17日深夜にかけての間への下落を想定する。

60分足の一目均衡表では7月13日深夜への上昇で遅行スパンが好転し、先行スパンも上抜いたが、14日夜高値からの上げ渋りにより遅行スパンは悪化しつつある。14日夜高値107.42円超えからは上昇再開として遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、107円割れからは下げ再開とみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。

60分足の相対力指数は7月14日午前高値から夜高値への高値切り上げに対して指数のピークが切り下がる弱気逆行が見られるため、既に下落再開に入っている印象だ。60ポイント超えからは上昇再開とみるが、50ポイント以下での推移中は下向きとして30ポイント前後への下落へ向かいやすいとみる。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、107.00円を下値支持線、107.50円を上値抵抗線とする。
(2)107円以上での推移中は上昇余地ありとみるが、107.50円前後は7月2日から8日までの持ち合いにおける中心値であり、戻り売りにつかまりやすいところとみる。
(3)107円割れから続落に入る場合は弱気サイクル入りとみて7月10日深夜安値106.62円試しへ向かうとみる。また107円以下での推移が続く場合は16日以降も安値試しを続けやすいとみる。

【当面の主な予定】

7/15(水)
休場、トルコ
未 定 (日) 日銀金融政策決定会合、政策金利 (現行 -0.10%)
未 定 (日) 日銀展望レポート
09:30 (豪) 7月 ウエストパック消費者信頼感指数 (6月 93.7)
15:00 (英) 6月 消費者物価指数 前月比 (5月 0.0%、予想 0.0%)
15:00 (英) 6月 消費者物価指数 前年同月比 (5月 0.5%、予想 0.4%)
15:00 (英) 6月 消費者物価コア指数 前年同月比 (5月 1.2%、予想 1.2%)
15:00 (英) 6月 小売物価指数 前月比 (5月 -0.1%、予想 0.2%)
15:00 (英) 6月 小売物価指数 前年同月比 (5月 1.0%、予想 1.1%)
15:00 (英) 6月 生産者物価コア指数 前年同月比 (5月 0.6%、予想 0.5%)
15:30 (日) 黒田東彦日銀総裁、定例記者会見

21:30 (米) 6月 輸入物価指数 前月比 (5月 1.0%、予想 1.0%)
21:30 (米) 6月 輸出物価指数 前月比 (5月 0.5%、予想 0.8%)
21:30 (米) 7月 ニューヨーク連銀製造業景況指数 (6月 -0.2、予想 10.0)
22:15 (米) 6月 鉱工業生産 前月比 (5月 1.4%、予想 4.4%)
22:15 (米) 6月 設備稼働率 (5月 64.8%、予想 67.7%)
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
25:00 (米) ハーカー・フィラデルフィア連銀総裁、オンライン討論会
27:00 (米) 米地区連銀経済報告(ベージュブック)

7/16(木)
07:45 (NZ) 4-6月期消費者物価 前期比 (前期 0.8%、予想 -0.5%)
07:45 (NZ) 4-6月期消費者物価 前年同期比 (前期 2.5%、予想 1.4%)
10:30 (豪) 6月 新規雇用者数 (5月 -22.77万人、予想 10.00万人)
10:30 (豪) 6月 失業率 (5月 7.1%、予想 7.2%)
11:00 (中) 4-6月期GDP 前期比 (前期 -9.8%、予想 9.6%)
11:00 (中) 4-6月期GDP 前年同期比 (前期 -6.8%、予想 2.5%)
11:00 (中) 6月 小売売上高 前年同月比 (5月 -2.8%、予想 0.4%)
11:00 (中) 6月 鉱工業生産 前年同月比 (5月 4.4%、予想 4.8%)
15:00 (英) 6月 失業保険申請件数 (5月 52.89万件)
15:00 (英) 6月 失業率・英国方式 (5月 7.8%)
15:00 (英) 5月 失業率・ILO方式 (4月 3.9%、予想 4.2%)

18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調済 (4月 12億ユーロ、予想 50億ユーロ)
18:00 (欧) 5月 貿易収支・季調前 (4月 29億ユーロ)
20:45 (欧) 欧州中央銀行(ECB)政策金利 (現行 0.00%)
21:30 (欧) ラガルド欧州中央銀行(ECB)総裁、定例記者会見
21:30 (米) 6月 小売売上高 前月比 (5月 17.7%、予想 5.0%)
21:30 (米) 6月 小売売上高・除自動車 前月比 (5月 12.4%、予想 5.2%)
21:30 (米) 7月 フィラデルフィア連銀製造業景況指数 (8月 27.5、予想 20.0)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 131.4万件、予想 125.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1806.2万人、予想 1762.5万人)

23:00 (米) 5月 企業在庫 前月比 (4月 -1.3%、予想 -2.3%)
23:00 (米) 7月 NAHB住宅市場指数 (6月 58、予想 60)
24:00 (米) エバンス・シカゴ連銀総裁、ロッキーマウンテン・エコノミック・サミット
24:10 (米) ウィリアムズ・ニューヨーク連銀総裁、オンラインセミナー
29:00 (米) 5月 対米証券投資・合計 (4月 1253億ドル)
29:00 (米) 5月 対米証券投資・短期除く (4月 -1284億ドル)

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