ドル円、リスク選好ムード継続も上値は重い。米中対立激化が相場の重石
〇海外時間のドル円は107円台前半で方向感に欠ける展開
〇米6月CPIは8年ぶり高水準
〇ユーロドルは株高米長期金利低下のドル売りに一時1.1409まで急伸
〇ドル円、テクニカル、ファンダメンタルズとも上値の重さ警戒される
〇ニューヨーク連銀製造業景気指数、米6月鉱工業生産、ベージュブック注視
〇本日の予想レンジ:106.80ー107.60
海外時間の為替概況
14日(火)の外国為替市場でドル円は方向感に欠ける展開。@欧米株の上昇や、Aリスク選好の円売り圧力(クロス円上昇→ドル円連れ高)を背景に、米国時間朝方にかけて、一時107.43まで上値を伸ばすも、一目均衡表転換線及び基準線に続伸を阻まれると、Bトランプ米大統領の進退を巡る不確実性の高まりや、C米長期金利低下を受けたドル売り圧力、D新型コロナ感染拡大への警戒感、E米中対立激化懸念(中国外務省は台湾のパトリオット地対空ミサイル更新計画の主要受注者となっている米ロッキード・マーチン社を制裁対象にすると表明)が重石となり、本稿執筆時点(日本時間4時45分現在)では、107.23近辺まで押し戻される展開となっております。尚、昨日発表された米6月消費者物価指数(結果+0.6%、予想+0.5%、前回▲0.1%)は約8年ぶり高水準を記録しましたが、市場の反応は限定的となりました。
14日(火)のユーロドル相場は堅調な値動き。@米長期金利低下に伴うドル売り圧力や、A株高・原油高を背景としたリスク選好のドル売り・円売り圧力、B新型コロナ復興基金への期待感(7/17−7/18に予定されているEU首脳会合で協議)、C対スイスでのユーロ買い圧力(スイス国立銀行のジョーダン総裁による「為替介入とマイナス金利は不可欠」との発言→スイスフラン売り介入警戒感→対スイスでユーロ高進行)、D対英ポンドでのユーロ買い圧力(英5月GDPの冴えない結果→英ポンド売り→対英ポンドでユーロ高進行)等が支援材料となり、米国時間には、6/10以来、約1ヵ月ぶり高値となる1.1409まで急伸しました。引けにかけて小反落するも下値は堅く、本稿執筆時点では(日本時間4時45分現在)では、1.1393近辺で推移しております。
ドル円のテクニカル分析
ドル円は、7/1に記録した高値108.17(約3週間ぶり高値)をトップに反落に転じると、7/10には一時106.65(6/24以来の安値)まで下落しました。108円台での滞空時間は極めて短く(108円台での滞在時間は僅か100分程度。200日移動平均線をバックに戻り売り圧力が根強い展開)、テクニカル的にみて、「上値の重さ」を印象付けるチャート形状となっております(強い売りシグナルを表す三役逆転が成立中)。
ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、追加緩和余地の大きな米国=イールドカーブ・コントロール導入の可能性もあり)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中対立激化懸念(中国外務省による米ロッキード・マーチン社を制裁対象にするとの表明)、C世界的な貿易戦争拡大リスク、D朝鮮半島や中東、香港を巡る地政学的リスク、E新型コロナ第2波リスク(フロリダ・アラバマ・ノースカロライナ州で1日当たりの新型コロナ感染による死者数が最多を更新)、F日本経済の先行き不透明感(日本経済の低迷→インフレ鈍化→実質金利上昇→円高への波及経路)など、ドル円相場の下落を想起させる不安材料が山積みの状態です。
以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも「上値の重さ」が警戒されます。欧米株や原油先物価格の動向や、新型コロナ第2波リスクに絡むヘッドラインや、米中対立激化を巡る続報、米主要経済指標の結果(米7月ニューヨーク連銀製造業景気指数や、米6月鉱工業生産、ベージュブックなど)を睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(テクニカル的な弱さに加えて、新型コロナ第2波リスクや米中対立激化が相場の重石)。尚、本日日本時間早朝6時よりトランプ米大統領の記者会見(香港や中国に関する内容との思惑あり)が予定されております。(編集部注:会見で香港に対する優遇措置廃止の大統領令に署名したと表明)
本日の予想レンジ:106.80ー107.60
ドル円日足
オーダー/ポジション状況
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