ファンダメンタルズ面での脆弱性がトルコリラの重石に
〇トルコ円は今週前半ドル円につれ安となり15.47まで下落
〇その後財務相の「トルコ経済はV字回復のステージに入った」発言、中銀金利据え置きサプライズに反発
〇週後半にかけて15.71の高値を付けるも反落15.64で越週
〇トルコリラ円、テクニカル、ファンダメンタルとも上値の重さが警戒される
〇来週の予想レンジ15.35ー15.85
今週のレビュー(6/22−6/26)
今週のトルコリラ円相場は、週初15.60円で寄り付いた後、@ナバロ米大統領補佐官による「中国との通商協議は終わった」との発言(後にトランプ米大統領が火消し)や、Aソフトバンクグループによる「米携帯電話大手TモバイルUSの保有株を最大で1.98億株(≒約210億ドル)売却する」との一部報道(保有株売却に伴う巨額円転の思惑)が重石となり(ドル円下落→トルコ円連れ安)、翌6/23に、5/15以来となる安値15.47円まで下落しました。しかし、5/15安値15.44円をバックに下げ渋ると、Bアルバイラク・トルコ財務相による「トルコ経済はV字回復のステージに入った」との発言や、Cトルコ中銀による政策金利据え置きサプライズ(8.25%→8.25%。市場予想は25bpの追加利下げ。インフレ高止まりを背景に10会合連続利下げには至らず)が支援材料となり、週後半にかけて、一時15.71円まで反発しました。もっとも、D新型コロナ第2波リスクの高まりを背景に戻りも鈍く、週末にかけては再び反落。結局15.64近辺での越週となっております。
来週の見通し(6/29−7/3)
トルコリラの対円相場は、6/3に記録した約1ヵ月半ぶり高値16.26円をトップに反落に転じると、6/23に一時15.47円(5/15以来)まで下落しました。この間、一目均衡表転換線や基準線、ボリンジャーミッドバンドを下抜けするなど、テクニカル的に見て、「上値の重さ」を印象づけるチャート形状となっております。
ファンダメンルズ的に見ても、@トルコ経済の先行き不透明感や、A外貨準備急減を受けたリラ安防衛能力への不信感、B対外収支の悪化(4月経常収支は約2年ぶりの赤字幅)、C実質金利のマイナス幅拡大、D経済的な結び付きの強いユーロ圏経済の先行き不透明感(EU新型コロナ復興基金を巡る不確実性)、E中東を巡る地政学的リスク、E米国・ロシア・フランス・NATO同盟国との関係悪化懸念、F世界的な貿易戦争再開リスク、F新型コロナ第2波懸念(米国や中国で広がるパンデミックがトルコへ波及する恐れ)など、トルコリラ売りを想起させる材料は今尚山積みの状態です。
以上の通り、トルコリラ円相場は、テクニカル的にもファンダメンタルズ的にも、「上値の重さ」が警戒されます。新型コロナ第2波リスクへの警戒感や、外貨準備急減を背景とした介入余力への不信感、対外収支の悪化継続(資本流出に波及)、トルコ経済を巡る先行き不透明感が重石になると見られ、当方では引き続き、トルコリラ円相場の軟調推移をメインシナリオとして予想いたします。来週は6/30のトルコ5月貿易収支、7/3のトルコ6月消費者物価指数、トルコ6月生産者物価指数に注目。
来週の予想レンジ(TRYJPY):15.35ー15.85
注:ポイント要約は編集部
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