来週の為替相場見通し:『リスク回避の円買いvs資産現金化のドル買い』(6/27朝)

ドル円は、6/23に記録した約1カ月半ぶり安値106.07をボトムに反発に転じると、今週後半(6/25)にかけて一時107.46まで反発しました。

来週の為替相場見通し:『リスク回避の円買いvs資産現金化のドル買い』(6/27朝)

『リスク回避の円買いvs資産現金化のドル買い』

〇ドル円は今週火曜にかけソフトバンクグループによる大量の米株売りの思惑等で106.07まで下落
〇その後米国での感染拡大、米欧貿易戦争懸念IMF成長予想下方修正に資産現金化需要が高まる
〇週末にかけリスク回避の円買いと資産現金化需要のドル買いの綱引きで107円台前半で方向感失う
〇ユーロドルもリスク選好後退に1.1227まで値を崩して越週
〇ドル円はテクニカル、ファンダメンタルズともに下落リスクが警戒される
〇来週はリスク回避の円買い強まるか、予想レンジ105.50ー108.50
〇ユーロドルも下落リスク警戒来週の予想レンジ1.1050−1.1350

今週のレビュー(6/22−6/26)

<ドル円相場>
今週のドル円相場は、週初106.90で寄り付いた後、@ナバロ米大統領補佐官による「中国との通商協議は終わった」との発言(後にトランプ米大統領が火消し)や、A米経済指標の冴えない結果(米6月製造業PMI、米6月サービス業PMIが予想比下振れ)、Bソフトバンクグループによる「米携帯電話大手TモバイルUSの保有株を最大で1.98億株(≒約210億ドル)売却する」との一部報道(保有株売却に伴う巨額円転の思惑)が重石となり、翌6/23には、一時5/7以来となる安値106.07まで下落しました。

しかし、節目106.00をバックに下げ渋ると、C新型コロナ第2波リスクの高まり(米国の多くの州で感染拡大の報告。ニューヨーク州やコネティカット州、ニュージャージ州などでは感染率の高い州からの訪問者に対して14日間の隔離を要求。米国における1日の感染者数が4月下旬以降で最多を記録)や、D米大統領選挙を巡る不透明感(民主党候補のバイデン元副大統領への支持率がトランプ米大統領の支持率を大きく引き離す展開)、E世界的な貿易戦争再開リスク(トランプ米大統領は欧州連合と英国からの輸入品31億ドルに関税を課すことを検討)、F国際通貨基金(IMF)による2020年成長予測の大幅下方修正(4月時点のマイナス3.0%からマイナス4.3%へ下方修正)、G上記CーFを背景とした資産現金化需要の高まり(米株下落→リスクアセット売り→資産現金化需要→ドル買い)が支援材料となり、週後半にかけては、約1週間ぶり高値となる107.46まで上昇しました。その後は、リスク回避の円買いと、資産現金化需要のドル買いに挟まれ方向感を見出しづらく、結局107.19での越週となっております。

<ユーロドル相場>
今週のユーロドル相場は、週初1.1185で寄り付いた後、早々に安値1.1168まで下落しました。しかし、先週末金曜日(6/19)安値1.1168をバックに下げ渋ると、@トランプ米大統領が新型コロナ対策として国民への現金給付第2弾を支持すると表明したことや、Aユーロ圏経済指標の力強い結果(ユーロ圏消費者信頼感指数に加えて、ドイツやフランス・ユーロ圏の製造業PMIおよびサービス業PMIが軒並み市場予想を上回る好結果)、Bドイツ連銀バイトマン総裁による「パンデミック緊急購入プログラムは一時的な危機対応で恒久的に利回りが低いと思い込むべきではない」との発言、Cオランダのルッテ首相と、フランスのマクロン大統領が復興基金について会談を行うとの一部報道(新型コロナ復興基金への期待感が再浮上)、D冴えない米経済指標を受けたドル売り圧力が支援材料となり、翌6/23には、約1週間ぶり高値となる1.1350まで急伸しました。

もっとも、6/13高値1.1353をバックに伸び悩むと、週後半にかけて再び反落。E新型コロナ第2波リスクの高まりや、F世界的な貿易戦争再開リスク、G国際通貨基金(IMF)による2020年成長予測の下方修正、H欧米株の急落を背景とした資産現金化需要の高まり(ドル買い)、HECBによる「ユーロ圏以外の中銀にユーロの流動性を供給する(EUREP)」との発表(ユーロ売り)、I米独関係悪化懸念(ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプラインを巡る米国の制裁措置に対して、ドイツが対抗措置を検討しているとの一部報道)が重石となり、結局1.1227まで値を崩しての越週となっております。

来週の見通し(6/29−7/3)

<ドル円相場>
ドル円は、6/23に記録した約1カ月半ぶり安値106.07をボトムに反発に転じると、今週後半(6/25)にかけて一時107.46まで反発しました。しかし、ここから上のゾーンには、ボリンジャーミッドバンド(107.58)や6/16高値(107.64)、一目均衡表基準線(107.96)や200日移動平均線(108.40)など主要レジスタンスポイントが複数並んでおり、更なる上昇は容易では無いと考えられます(テクニカル的にみて「上値の重さ」を意識させるチャート形状。

ファンダメンタルズ的に見ても、@日米金融政策余力の違い(追加緩和余地の乏しい日本と、追加緩和余地の大きな米国=イールドカーブ・コントロール導入の可能性もあり)や、A米国ファンダメンタルズの先行き不透明感、B米中対立激化懸念、C世界的な貿易戦争再開リスク(米大統領選挙への不確実性が増しつつあり、トランプ米政権による強硬外交が強まる恐れあり)、D朝鮮半島や中東、中印、香港、メキシコを巡る地政学的リスク、E新型コロナの第2波リスク(世界的な新型コロナ感染拡大リスク)、F日本経済の先行き不透明感(インフレ鈍化→実質金利上昇→円高)、G全米各地で続く人種差別抗議デモなど、ドル円相場の下落を想起させる材料が引き続き沢山残っている状況です

以上の通り、ドル円は、テクニカル的にも、ファンダメンタルズ的にも、「下落リスク」が警戒されます。世界的な外出規制の緩和や各国中銀による景気対策は既に織り込み済みであり、ここから先は、新型コロナ第2波リスク到来に伴うリスクオフ(リスクオンの巻き戻し)に注意が必要でしょう。欧米株や米長期金利の動向や、新型コロナ第2波リスクを巡るヘッドライン、日米主要経済指標の結果(7/1の日銀短観や米ISM製造業景況指数、7/2の米雇用統計など。日銀短観については投資計画の数字に要注目)、世界的な貿易戦争に係るヘッドラインを睨みながらも、当方では引き続き、ドル円相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(今週は資産現金化需要の高まりを背景にドル買いが先行するも、来週は株安→クロス円下落に伴うドル円連れ安を想定。資産現金化のドル買い以上に、リスク回避の円買いが強まる展開)。

来週の予想レンジ(USDJPY):105.50ー108.50

<ユーロドル相場>

ユーロドル相場は、6/10に記録した約3ヵ月ぶり高値1.1423をトップに反落に転じると、6/22にかけて、一時1.1168まで急落しました。この間、一目均衡表転換線やボリンジャーミッドバンドを下抜けした他、約2週間に亘り継続したバンドウォーク(ボリンジャーバンド上限に沿って上昇を続ける状態=強い上昇トレンドを示唆)も終了するなど、テクニカル的にみて、やや「上値の重さ」を印象付けるチャート形状となっております(6/24に一時1.1350まで反発する場面も見られましたが、週後半にかけて再び値を崩す展開)。

ファンダメンタルズ的に見ても、@ユーロ圏経済及び物価の先行き不透明感や、Aドイツ連邦憲法裁判所がECBの公的部門証券買い取りプログラムの一部が違憲であるとの見解を示していること、B英合意なき離脱リスクの再燃リスク、B米中対立激化懸念、C世界的な貿易戦争再開リスク(米大統領選挙への不確実性が増しつつあり、トランプ米政権による強硬外交が強まる恐れあり)、D朝鮮半島や中東、中印、香港、メキシコを巡る地政学的リスク、E新型コロナの第2波リスク(世界的な新型コロナ感染拡大リスク)、F新型コロナ復興基金を巡るユーロ圏各国の隔たり、GECBによるEUREP(ユーロ圏以外の中銀にユーロの流動性を供給)など、ユーロドルの上値を抑制する材料は今尚沢山残っている状況です。

以上の通り、ユーロドル相場は、テクニカル的にもファンダメンタルズ的にも「下落リスク」が警戒されます。欧米株や米長期金利の動向や、新型コロナ第2波リスクを巡るヘッドライン(米国や中国で広がるパンデミックが欧州圏に波及するリスク)、ユーロ圏の主要イベント(6/29に開催されるメルケル独首相とマクロン仏大統領による新型コロナ復興基金に関する会談など)を睨みながらも、当方では引き続き、ユーロドル相場の下落をメインシナリオとして予想いたします(メルケル氏とマクロン氏の会談結果次第で一時的に反発する可能性はあるものの、新型コロナ第2波リスクを背景としたリスク回避ムードは続くと見られ、ユーロドルの上値余地は乏しいと判断)。

来週の予想レンジ(EURUSD):1.1050−1.1350

注:ポイント要約は編集部

『リスク回避の円買いvs資産現金化のドル買い』

ドル円日足

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