円高に圧されて続落、FOMCから流れ変わるか試されるところ
〇トルコ円ドル円下落で軟調15.80台に下落
〇トルコリラは対ドルでも5日連続でドル高リラ安、ただしレンジは狭くドル高再開とまでは言えない
〇イスタンブール100株価指数は13営業日の連騰後8日は小反落し、9日も続落、連騰一服か
〇トルコの感染者数は抑制されているが第二はも懸念される状況
〇トルコは外出禁止令を緩和、治療目的での入国・観光を復興ビジネスの一環として始める姿勢
〇トルコ円15.90以下での推移中は一段安警戒、15.80割れからは下げ加速か
〇15.90円超えで強気転換注意、15.95円超えからはいったん強気サイクル入り
【概況】
トルコリラ円は5月7日に14.61円まで下げて史上最安値を更新してから反騰に転じて6月3日未明には16.23円まで大幅続伸した。しかしその後は上値が重くなり、6月5日夜までの間は16.10円を挟んだ持ち合いが続いた。
週明けの6月8日夜にドル円が急落に転じたために16.00円を割り込んで持ち合い下放れとなり、9日朝には15.91円まで続落した。9日もドル円の下落が続く中で終日軟調な展開が続き、9日深夜には15.81円まで安値を切り下げた。10日午前は下げ渋っているが15.80円台に止まっている。
ドル円は6月5日に米雇用統計が予想外の改善となったことで109.84円まで高値を切り上げたが、その背景には6月2日夜からの米10年債利回り上昇によるドル買い円売りの動きがあった。しかし週明けからは一転して米10年債利回りが低下となり、ドル円は揺れ返しの下落へ進んで8日深夜に109円を割り込み、9日には108円も割り込む続落となり、9日深夜には107.61円まで一段安となった。6月2日夜からの上昇幅を解消する下落となった。
米10年債利回りの低下は11日未明に声明文公表と議長会見が予定される米連銀FOMCを意識しての動きと思われる。FOMCから流れが変わってドル円が再上昇へ向かう可能性もあるが、利回り低下がさらに進んでドル円の一段安要因となる可能性もあると注意したい。
対ドルでのトルコリラは5月7日に7.27リラを付けて史上最安値を更新してからは揺れ返しの上昇を続けてきたが、6月3日に6.68リラまで戻したところからは上げ渋りとなり、6月3日当日から9日までは5日連続でドル高リラ安となっている。この5日間のリラ安でも6月2日の高安レンジ内に収まっているためにドル高再開感が強まる状況とまでは言えないが、5月29日安値を割り込む場合はドル高再開感が強まりかねないと注意する。
欧米を中心としたアフターコロナの復興期待による株高が金融市場全般の楽観的な強気を助長し、一時は暴落商状に見舞われていた新興国通貨も反騰期に入っている状況であり、トルコリラも反騰一服ではあるが、5月7日以降のドル安リラ高基調を継続してきた。FOMCから新興国通貨全般がどう動くのかにも左右されるところだ。
トルコのイスタンブール100株価指数は5月15日から6月5日まで13営業日の連騰だったが、8日は前日比0.35%安と14日ぶりに小反落し、9日も0.37%安と続落している。連騰一服と思われる。
【トルコは感染抑止からヘルスツーリズムへ】
6月9日時点の世界における新型コロナウイルス感染者数は731万人を超え、死者も41.2万人を超えた。米国の感染者は204.5万人、ブラジルが74.2万人、ロシアは48.5万人へそれぞれ拡大している。
トルコの感染者数は17万2114人だが増加数は993人で5月30日以降は千人を切った状況を維持している。死者は18人増の4729人となった。5月後半からは落ち着いた状況が続いており、感染者増加がピークだった4月11日の5138人増からは感染拡大が抑止されている印象だ。しかし千人弱の増加ペースがさらに縮小する状況には至っていない。経済活動再開が始まっているが、第二波への懸念もあるところだ。
トルコのエルドアン大統領は6月9日に18歳以下の外出禁止令を解除、65歳以上の外出禁止令を緩和すると発表した。
6月1日からはレストランやカフェの営業、公園やスポーツ施設などの利用が再開されている。7月1日からは映画館や劇場、結婚式場などが再開され、レストランやカフェは午前0時まで営業時間が拡大される。
トルコ政府はヘルスツーリズム(治療観光)のためにトルコに空路で入国できる入国地点にイズミル・アドナン・メンデレス国際空港とアダナ国際空港を含めた。既にイスタンブール空港、イスタンブール・アタチュルク国際空港、イスタンブール・サビハ・ギョクチェン空港、アンカラ・エセンボア国際空港、アンタルヤ国際空港からトルコに入国することができる。また陸路でもカプクレ国境ゲート、サルプ国境ゲート、ハブル国境ゲートが国外からの患者を受け入れる。感染爆発を抑え込み治療実績を上げたことにより、海外からの治療目的での入国・観光を復興ビジネスの一環として始める姿勢だ。回復者数の累計は6月9日時点で14万4598人に達している。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、6月3日未明高値まで急伸した後は持ち合いにつかまり、6月8日夜の急落で持ち合いから転落したために、9日午前時点では持ち合いの中間点にある6月4日夜安値を直近のサイクルボトムとし、持ち合い下放れ前の6月5日深夜高値を同サイクルトップとして弱気サイクルに入りしたと見て6月9日夜から11日夜にかけての間への下落を想定した。9日深夜へ続落した後も安値圏に止まっているのでまだ一段安余地ありとみるが、既に前回ボトムから3日を経過しているので反騰注意期にあるため、15.990円超えを強気転換注意とし、15.95円超えからはいったん強気サイクル入りと仮定して10日夜から12日深夜にかけての間への上昇を想定する。ただしいったん強気サイクル入りした後の反落で安値を更新する場合は新たな弱気サイクル入りにより12日深夜から16日深夜にかけての間への下落へ進む可能性があると注意する。
60分足の一目均衡表では6月8日夜の急落により遅行スパンが悪化し、先行スパンからも大きく転落した。10日午前時点も両スパン揃っての悪化のため、遅行スパン悪化中は安値試し優先と考える。安値更新が続かなければ遅行スパンは好転しやすくなるので遅行スパン好転からはいったん高値試しへ向かうと考えるが、好転が長続きせずに再び悪化するところからは下げ再開から一段安へ進みやすいと注意する。
60分足の相対力指数は8日夜から9日深夜への安値更新に対して指数のボトムが切り上がる強気逆行が見られるため、40ポイント以上での推移中は反騰入りの可能性があるとみるが、再び30ポイントを割り込む場合は下げ再開と一段安警戒とする。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、15.80円を下値支持線、15.90円を上値抵抗線とする。
(2)15.90円以下での推移中は一段安警戒とし、15.80円割れからは15.70円、さらに15.60円台後半への下落を想定する。15.60円台は買い戻しも入りやすいとみるが、FOMC後も続落の場合は先行きで15.60円を割り込む展開も警戒しておく。
(3)15.90円超えを強気転換注意とし、15.95円超えからはいったん強気サイクル入りとみて16円前後試しを想定する。16円以上は反落注意とするが、FOMC後に急伸する場合は16.10円を目指す上昇へ進み始めるのではないかと考える。
【当面の主な経済指標等の予定】
6月10日
16:00 3月失業率 (2月 13.6%、予想 15.1%)
6月12日
16:00 4月経常収支 (3月 −49億2000万ドル)
16:00 4月鉱工業生産 前年比 (3月 -2.0%、予想 -18.2%)
16:00 4月小売売上高 前月比 (3月 -8.1%、予想 -16.9%)
16;00 4月小売売上高 前年比 (3月 -0.2%、予想 -18.6%)
6月19日
16:00 5月自動車生産台数 前年比 (4月 -91.3%、予想 -82.0%)
6月22日
16:00 6月消費者信頼感指数 (5月 59.5、予想 54.0)
6月24日
16:00 6月設備稼働率 (5月 62.6%)
6月25日
20:00 トルコ中銀金融政策会合(TCMB)政策金利 (現行 8.25%、予想 7.25%)
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