リスクオン全面化で急伸、108円台後半へ一段高
〇昨晩欧州復興期待による欧州円の円安、米株上昇によるリスクオンで、ドル円は108円台後半に
〇米国のデモ拡大も、経済活動が停滞しているエリアでの騒乱で影響少との整理で米株上昇
〇米中貿易に関連しては昨晩米農務省が米国産大豆13.2万トンが中国に売却されたと発表
〇ドル円108.50以上での推移中は上昇余地あり109.00を超えて勢い付く場合は109.50が目先の上値目処
〇108.50割れから続落に入る場合は弱気サイクル入りか
【概況】
ドル円は5月6日(7日未明)安値105.98円から5月19日夜高値108.07円まで上昇した後は新たな高値更新へ進めずに107円台中後半での持ち合いを続けてきたが、5月28日に中国全人代が香港への規制を強める国家安全法の香港への適用を決め、欧米が激しく批判し始めたことでリスク回避感が強まって29日午後には107.05円まで急落した。107円台中後半での持ち合い中の安値であった5月22日安値107.29円を割り込んだため、持ち合い下放れからさらに円高ドル安へ加速しかねない状況に陥ったが、トランプ大統領による中国制裁に関する会見内容がさほど厳しいものではなかったとして30日未明には107.89円まで戻した。
週末時点では108円に届かなかったことと、米中問題を引きずり、白人警官による黒人拘束死事件をきっかけとした全米の抗議デモに対するリスク回避感もあって1日夕方には107.37円まで再び押し込まれていた
6月2日は107.50円以上を概ね維持しつつ、手がかり難の状況で推移していたが、2日夜の米国市場開始から欧州復興期待でユーロやポンドが上昇、NYダウも上昇となり為替市場と株式市場がリスク選好となる中でクロス円は全般に円安へ走りだし、ドル円もドルストレートでのドル高よりもクロス円での円安が勝る形で上昇に転じ、108円を超えると買いの連鎖反応が発生して3日早朝には108.77円まで急伸した。3日朝も108.80円を超えて続伸している。
6月2日は特に主要な米経済指標の発表もなかった。
米ミネソタ州で黒人男性が白人警官に押さえ付けられて死亡する事件が起きた事に対する抗議デモが全米に拡大して一部が暴徒化し、トランプ大統領が軍の出動を示唆する等緊張が高まっていることや、デモの密集が新たな感染拡大を発生させるのではないかとの懸念もあるが、経済活動が停滞しているエリアでの騒乱のために全体的な経済活動再開への影響はまだ限定的としてNYダウはアフターコロナの復興期待を優先して前日比267.63ドル高と上昇した。
前日には中国が米国による制裁に対抗して米国産大豆・豚肉の購入を停止するとの報道が米中関係悪化としてリスク回避材料とされたが、2日に米農務省が米国産大豆13万2000トンが中国に売却されたと発表し、中国側が大豆等の輸入を停止していないとの見方が強まったためにリスクオンへ傾斜するきっかけの一つとなったのではないかとみられている。
【月末月初安値からの反騰期】
日足では5月29日安値からの反騰で5月19日高値を上抜き、5月6日安値からの上昇継続となった。
昨年8月26日底以降、主要な安値は同年10月3日、11月1日、12月9日、今年1月8日、1月31日、3月9日、4月1日、5月6日につけており、概ね月末月初が底となってきた。今回も5月29日安値でこのサイクルの底をつけて上昇に入っている印象だ。
1か月周期の底打ちは2セットで2か月サイクルを形成しており、3月9日安値から3日目となる5月6日安値で底打ちしている印象だ。サイクルの高値は3月24日高値から2か月後程度を目安とするが、ピークは前後にずれることも多い。次の安値形成期が6月末から7月序盤と仮定すれば、6月中盤にかけては高値を試す時間的な余地もあるのではないかと思われる。
3月24日高値から5月6日への下落幅は5.73円であり、半値戻しが108.85円で昨晩からの上昇でほぼ到達している。この上は3分の2戻しとすれば109.80円であり、110円に迫るような上昇となる可能性も出てくる。
日足レベルの弱気転換は5月29日安値107.05円を割り込むところからとし、その際は6月末から7月序盤が当初の安値形成期となり、さらにもう1か月後の7月末から8月序盤にかけての間が2か月サイクルでの安値形成期となるのではないかとイメージされる。
【60分足一目均衡表、サイクル分析】
概ね3日から5日周期に短期的な高値・安値形成サイクルでは、5月29日午後へ急落してからほぼイッテコイまで戻したため、6月2日朝時点では直近のサイクルボトムを5月29日午後安値とした。また底割れ回避の内は27日夜高値を基準として6月3日夜にかけての間への上昇余地があるとした。6月2日深夜からの急伸により高値更新中でありまだ上昇余地のあるところと思うが、急騰に対する反動安も警戒されるので、108.50円割れからは弱気サイクル入りの可能性を優先して108円台序盤への下落を想定する。108.50円以下での推移が続き始める場合はボトム形成期を3日午後から5日夕刻にかけての間と想定する。
60分足の一目均衡表では2日夜の急伸で遅行スパンが好転し、先行スパンを大きく超えた状況となっている。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とするが、高値更新がストップすると遅行スパンは悪化しやすくなると注意し、遅行スパン悪化からは安値試し優先とする。その際は先行スパンが下値支持帯となりやすいと思われる。
60分足の相対力指数は2日深夜の急騰で80ポイントを超えた。その後の高値更新においては指数のピークが切り上がっていないので弱気逆行を形成する可能性があるので、70ポイント割れから続落に入る場合はいったんピークをつけて下落に入るとみて50ポイント台への低下を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、108.50円を下値支持線、109.00円上値抵抗線とする。
(2)108.50円以上での推移中は上昇余地ありとする。109円前後は反落警戒とするが、109円を超えて勢い付く場合は109.50円前後まで目先の上値目処を引き上げ、先行きは109.80円から110円を目指す可能性も出てくると注意する。
(3)108.50円割れから続落に入る場合は弱気サイクル入りと見て108.25円から108.00円にかけての間への下落を想定する。108円手前では買い戻しも入りやすいとみるが、108.50円以下での推移なら4日も安値試しへ進みやすいと考える。
【当面の主な予定】
6/3(水)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前期比 (前期 0.5%、予想 -0.4%)
10:30 (豪) 1-3月期 GDP 前年同期比 (前期 2.2%、予想 1.4%)
10:30 (豪) 4月 住宅建設許可件数 前月比 (3月 -4.0%、予想 -10.7%)
10:30 (豪) 4月 住宅建設許可件数 前年同月比 (3月 0.2%)
10:45 (中) 5月 財新サービス業PMI (4月 44.4、予想 47.3)
14:45 (ス) 1-3月期 GDP 前期比 (前期 0.3%、予想 -2.1%)
14:45 (ス) 1-3月期 GDP 前年同期比 (前期 1.5%、予想 -0.9%)
16:55 (独) 5月 失業者数 前月比 (4月 37.30万人、予想 20.00万人)
16:55 (独) 5月 失業率 (4月 5.8%、予想 6.2%)
16:55 (独) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 31.4、予想 31.4)
17:00 (欧) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 28.7、予想 28.7)
17:30 (英) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 27.8、予想 28.0)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前月比 (3月 -1.5%、予想 -1.8%)
18:00 (欧) 4月 生産者物価指数 前年同月比 (3月 -2.8%、予想 -4.2%)
18:00 (欧) 4月 失業率 (3月 7.4%、予想 8.2%)
21:15 (米) 5月 ADP非農業部門就業者数 前月比 (4月 -2023.6万人、予想 -900.0万人)
22:45 (米) 5月 サービス業PMI改定値 (速報 36.9、予想 37.3)
23:00 (加) カナダ銀行 政策金利 (現行 0.25%、予想 0.25%)
23:00 (米) 5月 ISM非製造業景況指数 (4月 41.8、予想 44.0)
23:00 (米) 4月 製造業新規受注 前月比 (3月 -10.3%、予想 -14.0%)
6/4(木)
10:30 (豪) 4月 貿易収支 (3月 106.02億豪ドル、予想 75.00億豪ドル)
10:30 (豪) 4月 小売売上高 前月比 (3月 8.5%、予想 -17.9%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前月比 (3月 -11.2%、予想 -15.0%)
18:00 (欧) 4月 小売売上高 前年同月比 (3月 -9.2%、予想 -20.7%)
20:45 (欧) 欧州中銀(ECB)政策金利 (現行 0.00%、予想 0.00%)
21:30 (欧) ラガルド欧州中銀(ECB)総裁、定例記者会見
21:30 (米) 4月 貿易収支 (3月 -444億ドル、予想 -491億ドル)
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性改定値 前期比 (速報 -2.5%、予想 -2.5%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 212.3万件、予想 180.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 2105.2万人、予想 1903.9万人)
オーダー/ポジション状況
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