ドル円見通し 6日連続陰線の後、再び4日連続陰線で安値を更新中(20/5/7)

107円台を維持できずに1日夜安値で106.59円、5日安値で106.48円と底が切り下がり、7日未明には105.98円まで安値を更新してきた。

ドル円見通し 6日連続陰線の後、再び4日連続陰線で安値を更新中(20/5/7)

【概況】

ドル円は4月15日午前安値で4月2日未明安値と同値の106.91円を付けたところでは底割れをいったん回避して4月27日までの間を107円台を中心とした持ち合いを続けてきたが、4月27日に持ち合い下限へ迫り、28日夜には4月15日安値を割り込んで持ち合い下放れとなり、29日夕刻には106.35円まで安値を切り下げた。
5月1日早朝には107.49円まで反発したものの107円台を維持できずに1日夜安値で106.59円、5日安値で106.48円と底が切り下がり、7日未明には105.98円まで安値を更新してきた。
日足では4月22日から4月29日まで6日連続の陰線、4月30日に陽線を入れたが5月1日から6日まで4日連続の陰線となっている。4月6日の戻り高値からは陽線が6本、陰線が16本で連続陰線も多く、3月9日を挟んだV字反騰当時の変動率と比べれば緩やかな下落ではあるが、4月1日と4月15日のダブル底ラインを割り込んでからの続落により、V字反騰の戻り高値である3月24日からの下落は二段下げ型となり、V字反騰幅10.48円に対する半値押し106.47円も割り込んでさらに続落中という状況に入っている。

【米中対立】

トランプ米大統領は4月30日に新型コロナの発生源が中国湖北省武漢市のウイルス研究所だとする説に関して確度の高い証拠を見たと述べた。また報復措置として関税を課す可能性を示唆した。
5月3日にはトランプ大統領は「中国は恐ろしい間違いを犯しそれを隠そうとした」と述べ、ポンペオ米国務長官も新型コロナの発生源は中国湖北省武漢市のウイルス研究所だとする説について「かなりの量の証拠がある」と述べた。英国のウォレス国防相も「中国は新型コロナの感染拡大に関して説明する必要がある」と述べて感染爆発に対する中国への批判姿勢が拡大している。
トランプ米大統領は5月6日に米中貿易協議の「第1段階の合意」による合意事項について、中国側が順守しているか否かを今後1〜2週間で発表できるとし、「中国は貿易合意を維持するかもしれないし、しないかもしれない」と発言した。
コロナウイルスの発生源を巡る米中の対立がコロナショック発生前には和解へ向かった米中貿易戦争問題を再び険悪なものにする可能性もある。

【経済活動再開への期待と実体経済指標の深刻な悪化】

一方で欧州の爆発的な感染者増加ペースはピークを付けて減少傾向に入っている。ドイツのメルケル首相は5月6日に3月中旬から続けてきた経済活動の各種制限を大幅に緩和すると発表し、市民生活の正常化が進む見通しとなった。トランプ米大統領も5日に新型コロナへの対応を統括するホワイトハウスの「タスクフォース」の活動を縮小させる意向とし(編集部注:6日に一転して継続すると明らかにしました)、「米国を元通りに戻さなければならない」と述べて早期の経済再開姿勢を示した。
こうした経済活動再開への動きはリスク選好を読んでいるものの、足元の実体経済指標の悪さは深刻だ。5月1日夜に米サプライ管理協会(ISM)が発表した4月の米製造業景況指数が41.5となり前月の49.1から低下してリーマンショック後の2009年4月以来の低水準となった。ISMの4月非製造業景況指数は41.8となり前月の52.5から低下した。好不況の分岐点とされる50を2009年12月以来初めて割り込み、リーマンショック時の2009年3月の40.1以来の低水準となった。

米連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長はCNBCテレビのインタビューで「典型的なリセッションではない」「感染動向次第で先行きが極めて不透明」「4〜6月期に景気悪化が深刻化して残念ながら失業率は1940年代以来見たこともないような水準に跳ね上がるだろう」と述べたことが市場心理を冷やした。
5月6日に発表された米民間雇用サービス会社オートマティック・データ・プロセッシング(ADP)の4月全米雇用報告では非農業部門民間就業者数が前月比2023万6000人減と歴史的な大幅減少となった。同統計は4月12日時点までの集計のため実体を反映しきれていない。
5月8日には労働省の米雇用統計発表が控えているが、非農業部門就業者数は2100万人減少、失業率は3月の4.4%から16.0%へ跳ね上がる見通し。

【米国債の大量発行の影響】

米国の国債大量発行により債券相場の需給が緩んで債券売り利回りの上昇が見られる。5月6日の米10年債利回りは0.04%上昇で0.70%となった。利回り上昇によりドルが上昇、ユーロやポンドが売られたが、ドル円はクロス円での円高感と米経済指標悪化に対するリスク回避感が優先してドル安円高反応を継続した。
米連邦政府の債務残高は5月6日までに25兆ドルを超えて過去最大を更新した。新型コロナウイルス感染拡大対策によりこの1か月で1兆ドル増えており、今後も増加ペースが続く見込みとなっている。

メジャー通貨の加重平均であるドル指数はコロナショック初期の2月20日から3月9日にかけては急落したが、その後は新興国通貨暴落も含めてドル資金需給ひっ迫となって急騰した。主要国によるドル資金供給協調や大量の国債発行・財政出動によりドル需給ひっ迫がいったん収まって3月27日へ急落したが、以降は騰落を繰り返しながら持ち合いとなっている。ドル円にとっては3月9日からのV字反騰を発生させたドル全面高の影響は緩んでおり、本来的なリスク回避での円高反応が優勢となってきている印象だ。

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

【60分足一目均衡表・サイクル分析】

概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、4月29日安値106.35円でサイクルボトムを付けて5月1日高値107.49円まで戻したが、その後に底割れへと崩れている。4月29日安値は30日安値とのダブルボトムだったために5月7日の日中までの安値を付けて106.50円以上へ戻せば強気サイクル入りとなり7日の日中から8日午前にかけての間へ上昇する可能性があるが、4月29日安値から4日目となる5月5日午前安値で直近のサイクルボトムを付けて既に底割れにより新たな弱気サイクル入りしている可能性がある。その場合はボトム形成期が8日午前から12日午前にかけての間へと延びることが想定される。また106.50円を超えていったん強気サイクル入りしても戻りは短命に終わって新たな底割れからの弱気サイクル入りへ進むことも懸念される。

60分足の一目均衡表では遅行スパンの悪化と先行スパンからの転落状況が続いている。このため遅スパン悪化中は安値試し優先とする。遅行スパン好転からはいったん強気サイクル入りによる上昇再開の可能性を優先するが、再び悪化するところからは下げ再開と一段安警戒と考える。

60分足の相対力指数は30ポイント割れを切り返しているものの40ポイント前後が抵抗となっている。50ポイントを超える上昇ならいったん戻しに入る可能性が高まるが、50ポイント台へ到達できないうちは20ポイント前後への低下を伴う一段安が警戒される。

以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、106.30円前後を上値抵抗とし、下回るうちは一段安警戒とする。
(2)106円以下での推移中は105.50円前後への下落を想定するが、夜間の米経済指標悪化等から売られる場合は105円台序盤へ下値目途を引き下げる。
(3)106.30円超えを強気転換注意とし、106.50円超えからはいったん強気サイクル入りとみて106.80円前後への上昇を想定する。5月1日以降は戻り高値が切り下がってきているので、5日夜高値106.89円を超えずに106.30円を割り込む場合は下げ再開とするが、106.89円を超える場合は107円台序盤へ上値目途が切り上がる可能性も出てくると考える。

【当面の主な予定】

未 定 (中) 4月 貿易収支・米ドル建て (3月 199.0億ドル、予想 63.5億ドル)
未 定 (中) 4月 貿易収支・人民元建て (3月 1394.0億元、予想 395.0億元)
10:30 (豪) 3月 貿易収支 (2月 43.61億豪ドル、予想 68.00億豪ドル)
10:45 (中) 4月 財新サービス業PMI (3月 43.0、予想 50.1)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前月比 (2月 0.3%、予想 -7.5%)
15:00 (独) 3月 鉱工業生産 前年同月比 (2月 -1.2%、予想 -8.9%)
15:00 (英) 英中銀 金利発表 (現行 0.10%、予想 0.10%)
15:00 (英) 英中銀資産買取プログラム規模 (現行 6450億ポンド、予想 6450億ポンド)

18:00 (英) ベイリー英中銀(BOE)総裁、会見
21:30 (米) 1-3月期 非農業部門労働生産性速報値 前期比 (前期 1.2%、予想 -5.5%)
21:30 (米) 1-3月期 単位労働コスト速報値 前期比年率 (前期 0.9%、予想 4.0%)
21:30 (米) 新規失業保険申請件数 (前週 383.9万件、予想 300.0万件)
21:30 (米) 失業保険継続受給者数 (前週 1799.2万人、予想 1990.5万人)
28:00 (米) 3月 消費者信用残高 前月比 (2月 223.3億ドル、予想 150.0億ドル)

5/8(金)
休場、仏、英
08:30 (日) 3月 全世帯家計調査・消費支出 前年同月比 (2月 0.3%、予想 -6.5%)
10:30 (豪) 豪準備銀行四半期金融政策報告
15:00 (独) 3月 貿易収支 (2月 208億ユーロ、予想 198億ユーロ)
15:00 (独) 3月 経常収支 (2月 237億ユーロ)
21:30 (米) 4月 雇用統計・非農業部門就業者数 前月比 (3月 -70.1万人、予想 -2100.0万人)
21:30 (米) 4月 雇用統計・失業率 (3月 4.4%、予想 16.0%)
21:30 (米) 4月 雇用統計・平均時給 前月比 (3月 0.4%、予想 0.4%)
21:30 (米) 4月 雇用統計・平均時給 前年同月比 (3月 3.1%、予想 3.4%)
23:00 (米) 3月 卸売在庫 前月比 (2月 -0.7%)
23:00 (米) 3月 卸売売上高 前月比 (2月 -0.8%)

オーダー/ポジション状況

関連記事

「FX羅針盤」 ご利用上の注意
当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。

ページトップへ戻る