【概況】
トルコリラ円は新型コロナウイルスの感染拡大による新興国通貨安とドル円における円高のぶり返しにより4月2日早朝に15.89円の安値まで下落して3月9日安値16.26円を割り込む一段安となった。その後はドル円で円安ドル高へと持ち直したことで下げ渋りとなっているが、4月6日にドル/トルコリラがこの間の高値を更新するリラ安となっていることで上値が重い状況となっている。
為替市場全般の動きをドル円が反映している時にはトルコリラ円もドル円の動きと同調するものだが、ドル円の動きが鈍い中でドル高リラ安が進む場合はドル/トルコリラの流れで下落するケースもあり、またリスク回避的な円高とリラ安が揃って急落となるケースもある。現状は新興国通貨安の進行でリラ売りが加速しやすいところと思われる。
ドル円は3月30日午前の107.13円と4月2日未明の106.91円の両安値をダブル底として戻しに入り、4月6日には109.37円へ上昇した。3月25日早朝高値111.71円からの下落に対する半値戻しが109.1円でありこれを実現したが、109円台ではやや上値が重くなっている。3月16日へのドル円急落は感染爆発によるリスク回避での円高であり、その後のV反騰はリスク回避のレベルが一段と上がったことでドル全面高が発生したことによる。G7等のドル資金供給や主要国の金融緩和政策が相次いだことでドル買いが一服したためにドル円も上記のダブル底まで下げたのだが、NYダウ等が暴落一服で戻していることでやや円安ドル高へと押し上げられている。
日本も緊急事態宣言を発令する事態に至っているが、前日から日経平均は上昇して4月7日も続伸する等、リスク回避よりも経済対策期待でのリスク選好がやや勝る状況のため、多少の調整安を入れながらもドル円はまだダブル底からの上昇基調を継続しやすい位置にあると思われる。
【ドル/トルコリラは高値更新=ドル高リラ安継続中】
ドル/トルコリラは新興国通貨売りが加速してドルが全面高となる中で3月23日に高値で6.6185リラをつけた後はドル高一服によりいったん反落していたが、新興国通貨安が一段と加速し始めて3月31日には3月23日高値を上抜き、4月6日も6.7920リラまで高値を更新した。3月27日から4月1日へ4連騰、1日おいて4月3日から6日まで3連騰であり、ドル高リラ安感が強まっている。
ジャンク級に格下げされた南アランドは4月6日も対ドルでの史上最安値を更新し、ブラジルレアルも4月3日に対ドルでの史上最安値を更新した後は下げ一服しているものの依然として歴史的な下落基調にある。世界的な投資ポジションの萎縮、現金化の動きのなかで新興国通貨は売られやすく、かつてのアジア通貨危機、中南米通貨危機、トルコにとっても2018年8月へのリラ危機を彷彿とさせる展開にあることを認識しておく必要があるだろう。
ドル高リラ安が進む中でもイスタンブール100株価指数は4月6日に前日比2.81%高と上昇して4月2日からは3連騰となった。NYダウが反騰していることに同調した動きだが、あくまでも暴落一服でのリバウンドの範囲と思われる。NYダウが戻り一巡から再び下げ始める場合はトルコ株式市場も一段安へ進みかねず、株安リラ安が同期して増幅してゆく可能性も警戒しておきたい。
【トルコの感染者数は3万人を超える】
4月7日朝時点の新型コロナウイルスの感染者は世界全体で134万人を超えて死者も7万4千人を超えた。米国の感染者数は36万人を超え死者は前日から1255人増の1万0871人に増加した。スペインとイタリアは新規の感染者増加数が鈍化しているので感染爆発のピークが近いとも言われているが、爆発エリアは当初の中国からイタリア、欧州全域と米国へ転戦し、今は中南米やトルコを含む新興国へ転戦している印象だ。
トルコは3月31日から新規感染者は日々2千人を超えてきたが、4月7日朝時点では感染総数は3万0217人、死者649人に増加している。感染増加数はまだピークが見えず、これからさらに拡大することも懸念される。
トルコは国境封鎖、国際線と国内線を全面運航停止とし、4月3日からは15日間の主要30都市移動制限をおこなっている。4月5日には外出制限のない市民へ週5枚のマスク配布を行い始めた。トルコ紙報道ではまだ医療崩壊的な状況には陥っておらず、スペインへの医療支援等が報じられている。また世界的な経済活動停滞のなかにあっても1-3月期の果物や野菜の輸出が増えたとも報じられている。しかし感染爆発が進めばトルコ経済が一挙に停滞に陥る可能性もあるだろう。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月31日午前安値を直近のサイクルボトム、31日夜高値を同サイクルトップとした弱気サイクル入りとして4月3日朝から7日午前にかけての間への下下落を想定してきたが、4月2日早朝へ一段安してからは新たな安値更新を回避して3日午前に16.20円をいったん超えたため、4月6日午前時点では4月2日早朝安値を直近のサイクルボトムとした。また4月7日夜にかけての間への上昇余地ありとしたが、4月2日早朝安値割れからは底割れによる新たな弱気サイクル入りとした。
4月6日夕刻への上昇では4月3西午前高値を上抜けなかったため、既に3日午前高値と6日夕高値によりダブルトップを形成して下落期に入っている可能性がある。両高値の中間にある4月4日未明安値16.01円を割り込まない内は上昇余地ありとするが、4日未明安値を割り込むところからは弱気サイクル入りとして7日の日中から9日朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では16.10円を挟んだ揉み合いとなっているために遅行スパン及び先行スパンは実線と交錯して方向感に乏しい。このため4月4日未明安値を割り込むところからは遅行スパン悪化中の安値試し優先とし、16.20円超えからは上昇継続の可能性ありとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とする。
60分足の相対力指数は16.10円を挟んだ揉み合いが続いているので50ポイントを挟んでの小動きに止まっている。60ポイント超えからは上昇再開感が強まると思われるが、40ポイント割れからは下げ再開を疑って20ポイント台前半への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す
中勢レベルでは3月9日安値を割り込んだことで2018年8月底15.52円試し、さらに底割れへ進みやすい状況とみるが、短期的には4月2日早朝安値を目先の底として戻しても良いところにある。
(1)当初、4月4日未明安値16.01円を下値支持線、16.20円を上値抵抗線とする。
(2)4月4日未明安値を割り込まない内は上昇余地ありとし、16.20円超えからは上昇再開とみて4月3日午前高値16.26円試しと考える。さらに高値更新なら16.40円前後試しへ上値目処を引き上げるが、16.30円以上は反落警戒とする。
(3)4月4日未明安値を割り込むところからは弱気サイクル入りとみて4月2日未明安値15.89円試しへ向かうとみる。2日未明安値を割り込む場合は2018年8月底15.52円を目指す流れと考える。15.60円以下は反発注意とするが、新興国通貨売りが加速する場合は2018年8月底を割り込む可能性もあると注意する。
【当面の主な経済指標等の予定】
4月10日
16:00 1月失業率 (12月 13.7%)
4月13日
16:00 2月経常収支 (1月 −18.0億ドル)
16:00 2月鉱工業生産 前年比 (1月 7.9%)
16:00 2月小売売上高 前年比 (1月 9.6%)
16:00 2月小売売上高 前月比 (1月 -0.8%
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トルコリラ円レポート月曜版(2020年4月6日)
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