トルコリラ円見通し 3月9日安値を割り込んで一段安入り、4か月サイクルの下落継続
【概況】
トルコリラ円は1月17日高値18.82円を起点に下落に転じ、2月25日には1月6日安値を割り込んで一段安に入った。新型コロナウイルスの感染拡大による世界景気後退懸念が強まる中で新興国通貨安が進んでドル高リラ安となり、3月9日までは急激な円高も発生したために3月9日には16.26円まで大幅続落となった。
3月9日からは金融市場全般のポジション圧縮と手元流動性確保のドル買いによりドル全面高となる中でドル円がV字反騰に入ったためにトルコリラ円は下げ渋りに入り、ドル高リラ安が緩んだことで3月25日には17.44円までいったんは戻した。しかし、3月24日からはドル円における円高がぶり返し、3月30日からは新興国通貨安が一段と進む中でドル高リラ安が加速したために3月9日安値を割り込んで一段安となり、4月2日には15.89円まで安値を切り下げた。週末にかけては下げ渋ったが、3月9日安値を割り込んだことのインパクトは大きい。
【過去の通貨危機を超える深刻さ】
新型コロナウイルスの感染拡大がパンデミック宣言に至り、欧米から中南米、中東へと拡大する中で世界連鎖株安となり、NYダウは2月12日天井から3月23日安値まで凡そ40%の下落率となる暴落に見舞われた。欧米株の暴落は世界連鎖株安へ波及し、トルコのイスタンブール100株価指数も1月22日天井124536.63からの3月17日安値81936.40まで凡そ35%の暴落となった。その後はダウもイスタンブール100指数も新たな安値更新を回避しているが暴落一服に過ぎず、世界経済情勢は一段と深刻化している。
ドル/トルコリラは新興国通貨売りが加速してドルが全面高となる中で3月23日に高値で6.6185リラをつけた後はドル高一服によりいったん反落していたが、ドル高新興国通貨安が一段と加速し始めて3月31日には6.625リラへ上昇して3月23日高値を上抜く一段高となった。4月3日には6.7517リラまで高値を切り上げており、2018年8月のトルコリラ危機における高値7.2349リラへ迫っている。
4月3日は南アランドが対ドルで4日連続の史上最安値更新、ブラジルレアルも3日連続で史上最安値を更新した。IMFは4月3日時点で新興国から900億ドルがすでに流出しており、90か国以上から支援要請があったとしている。トルコはまだ支援要請国となっていないものの、今回のコロナショックはかつてのアジア通貨危機や中南米通貨危機のレベルを超える可能性も懸念される。
従来の通貨危機は新興国への過剰投資によるバブル発生と崩壊であり、ショック的な不況入りを国際的な救済融資で乗り越え、その後にはより高度な経済成長で乗り越えてきたものだった。またリーマンショックは欧米の資産バブル崩壊による金融市場の動揺であり世界的な金融緩和と破綻企業救済により新たな世界経済の発展をもたらした。しかし、今度のコロナショックは全世界的な感染被害と経済停滞であり世界同時不況入りである。欧米の投資マネーに余裕はなく、不況入りの根源である感染爆発の終息とリセッションからの脱出というシナリオが描けない状況がしばらく続くとすれば、過去に経験したアジアや中南米でのエリア的な通貨危機を超える深刻さとなる可能性もあると警戒すべきだろう。
【トルコの感染拡大続く、感染者数は世界9位に】
4月6日朝時点の新型コロナウイルスの感染者は世界全体で127万人を超えて死者も6万9千人を超えた。米国の感染者数は30万人を超え死者は前日から1159人増の9610人に急増している。スペインとイタリアを中心とした欧州の感染爆発に加え、米国はNY州で医療崩壊的な惨状となっているが、ブラジルでも感染者が1万人を超えており、新興国への拡大も深刻化している。
トルコは3月31日から新規感染者は日々2千人を超えてきたが、4月6日朝時点では感染総数は2万7069人、死者574人に増加している。国別の感染者数では9番目に多い感染国となっている。トルコは国境封鎖、国際線と国内線を全面運航停止とし、4月3日からは15日間の主要30都市移動制限を行っている。
3月11日に初の感染者が確認されるまでトルコは相対的には平穏で感染爆発危機からはやや距離があったが免れることはできなかった。ドイツも積極的な検査により感染者数が急増しても死者数は抑えられていたが、そのドイツも死者が1500人を超えてきている。日本も同様の展開をたどっているのかもしれないが、トルコよりも衛生・医療レベルが低い新興国での感染爆発は今後もさらに深刻化してゆくとすれば、新興国投資マネーの逆流だけでなく、新興国の経済成長基盤を損なうような混乱に陥りかねないと危惧される。
【4か月サイクルの底割れと週足のボリンジャーバンド膨張】
トルコリラ円は2018年のトルコ通貨危機による同年8月底以降、概ね4か月周期の底打ちサイクルで推移してきた。2019年1月3日底以降は同年5月9日、同年8月26日、2020年1月6日と底打ちしてきたが、今年2月後半に1月6日安値を割り込んだことにより、現状は1月17日高値をサイクルトップとした下落局面に入っている。今回のボトム形成期は5月序盤から長引く場合は5月後半にかけての間と想定される。
3月9日安値からいったん戻して新たな底割れとなっているが、3月9日から3月25日への反発はあくまでも中間反騰であり、その戻りが一巡してサイクルボトム形成へ進み始めたと考えられる。
2019年1月から2020年1月までは18円前後を底として反発しつつ戻り高値を切り下げてきたが、今回の下落で18円前後の下値支持線を割り込む一段安となったため、チャート上の下値目途は2018年8月底の15.52円まで切り下がっている印象だ。しかし南アランドやブラジルレアルの史上最安値更新という新興国通貨安情勢を踏まえれば、トルコリラが対ドルでの史上最安値を更新し、トルコリラ円も2018年8月底を割り込んで史上最安値を試す可能性が高まってきているのではないかと懸念される。
週足のボリンジャーバンドでは、2月末への急落からバンドの膨張が顕著となった。直前の9か月はここ数年の中では小動きの横ばい相場であり、小康状態から大きな変動期に入っていることを示唆する。状況的には2017年1月から30円台序盤での持ち合いを数か月消化して一段安に入ったところにも近い印象だ。週足レベルのボリンジャーバンド膨張はまだ始まったばかりでもあり、今後も中長期的な膨張の継続と安値試しを続けやすい状況に入ってきているのではないかと懸念される。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、3月31日午前安値を直近のサイクルボトム、31日夜高値を同サイクルトップとした新たな弱気サイクル入りとして4月3日朝から7日午前にかけての間への下悪を想定してきた。4月2日早朝へ一段安してからは新たな安値更新を回避して3日午前に16.20円をいったん超えたため、4月2日早朝安値で短縮されたサイクルボトムをつけたと思われる。このため、新たな底割れ回避の内は4月7日夜にかけての間への上昇余地ありとするが、4月2日早朝安値割れからは底割れによる新たな弱気サイクル入りとして次のボトム形成期となる4月7日早朝から9日早朝にかけての間への下落を想定する。
60分足の一目均衡表では4月4日早朝への反落で遅行スパンが悪化し先行スパンからも転落してたが、4月6日午前の反発で先行スパンを再び上抜きつつある。4月3日午前高値を上抜くところからは戻り高値をさらに試すとみて遅行スパン好転中の高値試し優先とするが、両スパン揃っての悪化が続き始める場合は弱気転換注意とし、4月2日早朝安値割れからは新たな弱気サイクル入りとみて遅行スパン悪化中の安値試し優先とする。
60分足の相対力指数は4月2日未明に20ポイント割れまで低下してから戻し、50ポイントを挟んで前後10ポイント強の範囲で推移している。40ポイントを上回る内は上昇余地ありとするが、40ポイント割れからは下げ再開を疑い、30ポイント割れからは20ポイント台前半への下落を想定する。
以上を踏まえて当面のポイントを示す
中勢レベルでは3月9日安値を割り込んだことで2018年8月底15.52円試し、さらに底割れへ進みやすい状況とみるが、短期的には4月2日早朝安値を目先の底として戻しても良いところにある。
(1)当初、4月2日早朝安値15.89円を下値支持線、4月3日午前高値16.26円を上値抵抗線とする。
(2)16円を上回るか一時的に割り込んでも回復する内は上昇余地ありとし、3日午前高値を上抜く場合は16.40円台前半を試すとみる。16.45円以上は反落注意とするが、16円以上での推移なら7日午前にかけても高値を試す余地ありと考える。
(3)16円割れからは下げ再開を警戒して4月2日早朝安値15.89円試しを想定する底割れからは2018年8月底15.52円を目指す下落を想定する。15.60円以下は反発注意とするが、新興国通貨売りが加速する場合は2018年8月底を割り込む可能性もあると注意する。またその際は15円試しへ下値目処が切り下がってゆく可能性があると考える。
【当面の主な経済指標等の予定】
4月10日
16:00 1月失業率 (12月 13.7%)
4月13日
16:00 2月経常収支 (1月 −18.0億ドル)
16:00 2月鉱工業生産 前年比 (1月 7.9%)
16:00 2月小売売上高 前年比 (1月 9.6%)
16:00 2月小売売上高 前月比 (1月 -0.8%)
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