【概況】
トルコリラ円は年末から年明け、さらにその後の展開も概ねドル円と同調している。12月2日高値から年明けへの下落はドル円もトルコリラ円も同じだが、年末への下落局面では対ドルでのリラ安が進んだことや概ね4か月周期の底打ちサイクルによる下落圧力によりドル円よりもトルコリラ円の下落感が大きかった。
ドル円はイラン情勢の緊張緩和による上昇で1月17日には12月2日高値を上抜いて一段高したが、トルコリラ円は年末への下落が厳しかったためにドル円と同調した1月17日への上昇では12月2日高値には届かなかった。そこへ中国武漢発の新型コロナウイルス感染拡大報道によるリスク回避の動きが発生したために、ドル円もトルコリラ円もそろって下落に転じている。
トルコリラ円は1月17日高値18.82円から下落し始めて1月23日深夜には18.36円まで安値を切り下げてきたが、1月24日夕刻に18.47円までやや戻したものの深夜からの円高に押されて1月25日未明には18.35円まで安値を更新した。1月27日早朝は18.26円まで一段安で開始している。
ドル/トルコリラでは11月からのドル高リラ安が一服して1月16日まではドル安リラ高となっていたが、その後はリスク回避感を背景としたリラ安が再燃して1月22日まで上昇(ドル高リラ安)した。その後は新たな高値更新へ進めずにいたが1月27日朝には高値を更新している。
金融市場全般がリスク回避的な動きになると新興国通貨としてのトルコリラもポジション調整的に売られやすくなるが、そこへクロス円全般における円高が重なって来ている。
イスタンブール100株価指数も1月22日から24日へ3日間の続落となっている。株安が連鎖し始めると新興国株も売られやすくなる。
1月25日未明にトルコ東部で大きな地震が発生しているためイスタンブール株価及びトルコリラへの影響も懸念される。
【トルコ地震】
日本時間の1月25日未明、トルコ東部のエラズー県を震源とするマグニチュード6.7の地震が発生した。トルコ政府によると1月26日時点では35人が死亡し、1607人以上が負傷したという。倒壊した建物からの救出等の映像も報じられているが、今後はさらに被害が拡大するものと思われる。
トルコでは1999年にイズミット地震が発生している。これはトルコ北西部地震とかトルコ・コジャエリ地震等とも呼ばれているが、1999年8月17日にトルコ北西部で発生したマグニチュード7.6の地震で、1万7000人余の死者が発生し、凡そ60万人が家を失ったとされるが、実際の被害はトルコ政府発表の倍以上とも言われる。当時は現在の新トルコリラではなく旧通貨としてのトルコリラだったために大規模地震によるトルコリラへの影響を判断する事例とはならないが、旧トルコリラの大暴落時代の最中であった。イズミット地震と今回の地震とは震源は異なるものの、今後の被害状況によってはトルコ経済への影響なども意識されてリラ売りが進む可能性があると注意したい。
【4か月サイクルの戻りは短命に終わるか?】
トルコリラ円の日足では概ね4か月前後の底打ちサイクルが認められる。2018年5月23日底以降では、3か月後の8月13日安値、5か月弱の2019年1月3日安値、4か月目の5月9日安値、4か月弱の8月26日安値で底をつけてきたが、8月26日安値から4か月強となる1月6日安値で直近のサイクルボトムを付けて反騰に入った。イラン情勢の緊張による下落と緊張緩和による反騰がこのサイクルの底打ちに反映した。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によりリスク回避感が強まる中で1月17日高値から失速している。1月6日安値17.94円から1月17日高値18.82円までの上昇に対する半値押しが18.38円であり、1月25日未明安値18.35円へ下落した時点で既に割り込んでいる。
新型コロナウイルスの感染拡大懸念が落ち着いてリスク回避感が後退する中で反騰入りしてくれば、1月17日高値を超えて19円前後を再び試す可能性はあるだろうが、すでに半値押しでは下げ止まれていないため、このまま1月6日安値を割り込む下落へと発展する可能性も懸念される。仮に1月6日安値を割り込む場合は概ね4か月周期の底打ちサイクルにおいては新たな弱気サイクル入りとなり、次の底形成期となる4月末から5月序盤にかけての間へと下落基調が続きやすくなると懸念される。
【当面のポイント】
(1)1月17日以降は戻り高値を切り下げながら安値を更新してきている。1月25日未明に1月23日深夜安値を割り込んで安値を更新しているため、戻り高値切り下がりの弱気パターンを破るには1月24日夕高値18.47円を超える必要があり、24日高値を上抜けないうちは安値更新を続けやすいとみる。
(2)18.40円以下での推移が続くうちは下向きとし、安値更新が続く場合はまず18.20円、次いで18.10円台前半への下落を想定する。
(3)18.40円超えからは強気転換注意として1月24日夕高値18.47円試しとし、高値更新の場合はいったん戻しに入るとみて18.50円台後半への上昇を想定するが、そのためには地震被害がトルコ経済に及ぼす影響が軽微であることや新型コロナウイルスの感染爆発懸念への落ち着きが見られる場合であり、リスク回避感が強まる中では切り返すのも難しいかもしれない。
(4)18.60円以上へ反騰できないうちは1月17日高値を起点とした下落基調がさらに続く可能性があると警戒し、先行きは18円割れから1月6日安値17.94円試しへ向かう可能性が継続するのではないかと考える。
【当面の主な経済指標等の予定】
1月27日
16:00 1月製造業景況感 (12月 103.6)
16:00 1月設備稼働率 (12月 77.0%)
1月29日
16:00 1月経済信頼感指数 (12月 93.8)
1月30日
16:30 トルコ中銀インフレレポート
1月31日
16:00 12月貿易収支 (11月 -22.3億ドル)
2月 3日
16:00 1月消費者物価 前年比 (12月 11.84%)
16:00 1月消費者物価 前月比 (12月 0.74%)
16:00 1月生産者物価 前年比 (12月 7.36%)
16:00 1月生産者物価 前月比 (12月 0.69%)
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