イベントを経過し一進一退(週報2016年5月第五週)

今週は米国の利上げについて「6月利上げの可能性は高い」と思われる現状の見通しを書いておきます。

イベントを経過し一進一退(週報2016年5月第五週)

前週の主要レート(週間レンジ)

      始値    高値    安値    終値

ドル円   110.03   110.45  109.11   110.25
ユーロ円  123.46  123.52  122.23   122.54
ユーロドル  1.1220 1.1243  1.1111  1.1115
日経平均  16671.28 16957.56 16417.84 16834.84

(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。

前週の概況

5月23日(月)

G7明けの東京市場では、株式市場が米国利上げ、英国のEU離脱懸念といったこれまでの材料に加え、G7で新規材料が出なかったことを背景に大幅安というスタートを切りました。どちらかというと為替市場参加者のほうが驚いたといった感じで、式市場を見ながら円売り介入が出ることは無さそうだとの判断で円買いが目立つ展開となりました。円買いの動きは終日続き、NY市場では一時109.11レベルまで水準を切り下げ、ユーロ円も122.39レベルまで下落、引けにかけて若干の戻しも出たものの、円高地合いのクローズとなりました。

5月24日(火)

東京市場では動意の無い展開が続きましたが、欧州市場に入り世論調査でEU残留派優勢と報じられると、ポンドが全通貨に対して大幅高。特に下げ足を強めているユーロポンドは0.77台半ばから0.76台前半へと急落、それをきっかけとしたユーロドルの売りが目立つ流れとなりました、ユーロドルでのユーロ売り(ドル買い)の動きがドル円では買い戻しのドル買いへとつながり、NY市場に入ってからは強い株価も手伝って110.13レベルへと上昇、引けにかけては110円挟みの水準へと若干押してのクローズとなりました。

5月25日(水)

東京市場では、再び110円台に戻してきたこともあって実需筋を中心としたドル売りオーダーが上値を抑える格好となりましたが、いっぽうでサミットに向けた期待もあって下値も限定的、110円挟みの狭いレンジでの取引に終始しました。海外市場に移ると株式市場が堅調な動きとなり、225先物、ダウ先物が一段高、リスクオンの動きからドル円、ユーロ円は円安気味に推移、NY市場前場にはそれぞれ110.45レベル、123.11レベルの高値をつけ、引けにかけて若干押しが入ってのクローズとなりました。

5月26日(木)

ドル円は、東京市場の朝方に実需売りが出たことをきっかけに、110円台前半から109円台半ばへと短時間に急落、サミットを控え何か出るとすれば円売り材料かと油断していた参加者を直撃する格好となりました。その後、109円台半ばでは買いたい向きも残っていた様子でじり高の展開となり、NY市場の朝方には110円台前半へと戻す場面も見られました。しかし長くは続かず、輸出のドル売りを中心に110円台で着実に上値が抑えられる動きが繰り返されていることもあり、再び109円台半ばへと押してのクローズとなりました。

5月27日(金)

6月FOMCにおける利上げを占うイエレン議長の講演を控え、NY市場までは109円台後半で方向感の無い展開を続けました。注目の講演内容は6月とは示さなかったものの、ハト派代表の議長としては早期の利上げを考えていると取れる発言があったことから、引けにかけてドル買いの動きが強まりました。ドル円は110.45レベル、ユーロドルも1.1111レベルをつけドル高値圏でのクローズとなりました。

今週の予定(時刻表示のあるものは日本時間)

今週注目される経済指標と予定をあげてあります。FRB地区連銀総裁講演の内、2016年FOMCメンバー(ニューヨーク、ボストン、クリーブランド、セントルイス、カンザスシティ)ではない地区連銀はカッコ付で示しました。わかりやすさ優先で、あえて正式呼称で表記していない場合もあります。

5月30日(月)
 **:** LDN、NY市場休
09:35 セントルイス連銀総裁講演
15:45 フランス1〜3月期GDP確報値
18:00 ユーロ圏5月消費者信頼感確報値
18:00 ギリシャ1〜3月期GDP確報値
21:00 ドイツ5月CPI速報値
24:00 メルケルドイツ首相講演

5月31日(火)
08:30 本邦4月失業率、有効求人倍率
10:00 NZ5月ANZ企業信頼感
10:30 豪州1〜3月期経常収支
16:55 ドイツ5月失業率
19:00 イタリア1〜3月期GDP確報値
18:00 ユーロ圏5月CPI速報値
18:00 ユーロ圏4月失業率
21:00 南ア4月貿易収支
21:30 米国4月個人所得、個人消費支出
22:00 米国3月ケースシラー住宅価格指数
22:45 米国5月シカゴ購買部協会景気指数
23:00 米国5月消費者信頼感
23:30 米国5月ダラス連銀製造業活動指数

6月1日(水)
**:** OECD2016年世界経済見通し公表
10:00 中国5月製造業・非製造業PMI
10:30 豪州1〜3月期GDP
10:45 中国5月MarkIt製造業PMI
14:45 スイス1〜3月期GDP
16:50 フランス5月製造業PMI確報値
16:55 ドイツ5月製造業PMI確報値
17:00 ユーロ圏5月製造業PMI確報値
17:30 英国製造業PMI
22:45 米国5月MarkIt製造業PMI確報値
23:00 米国5月ISM製造業景況指数
23:00 米国4月建設支出
27:00 ベージュブック

6月2日(木)
**:** OPEC総会
10:30 豪州4月貿易収支
17:30 英国5月建設業PMI
18:00 ユーロ圏4月PPI
20:30 米国5月チャレンジャー人員削減予定数
20:45 ECB理事会結果発表
21:15 米国5月ADP全国雇用者数
21:30 ドラギ総裁会見
21:30 米国新規失業保険申請件数
21:35 パウエルFRB理事討論会参加
24:00 米国週間原油在庫発表
26:00 (ダラス連銀総裁講演)

6月3日(金)
10:45 中国5月MarkItサービス業PMI
16:00 トルコCPI
16:45 (シカゴ連銀総裁講演)
16:50 フランス5月サービス業PMI確報値
16:55 ドイツ5月サービス業PMI確報値
17:00 ユーロ圏5月サービス業PMI確報値
21:30 米国5月雇用統計
22:45 米国5月ISM非製造業景況指数
23:00 米国4月製造業受注指数
25:30 ブレイナードFRB理事講演

6月14日(土)
 16:00 クリーブランド連銀総裁講演

今週の週間見通し

今週は米国の利上げについて「6月利上げの可能性は高い」と思われる現状の見通しを書いておきます。

週末のイエレンFRB議長の講演内容から、6月かどうかはわからないまでも7月も含めた場合の利上げはかなり濃厚になってきたと考えられます。イエレン議長を含め2016年のFOMCメンバー10名の基本的なスタンス(そう思われている)は以下の通りです。

 イエレン議長(常任) ハト派
 フィッシャー副議長(常任) 中立
 タルーロ理事(常任) ハト派
 ブレイナード理事(常任) ハト派
 パウエル理事(常任) 中立
 NY連銀総裁(常任) ハト派
 セントルイス連銀総裁(2016年) タカ派
 カンザスシティ連銀総裁(2016年) タカ派
 クリーブランド連銀総裁(2016年) タカ派
 ボストン連銀総裁(2016年) ハト派

イエレン議長は、ハト派中のハト派と考えられていて、これまで慎重な姿勢を取り続けてきたイエレン議長が早期の利上げを考えていると取れる発言を行ったことは、FOMCメンバー全体の考えとして、6月〜7月の利上げが濃厚である材料と考えられます。

他にもハト派のメンバーの発言として、ニューヨーク連銀総裁は「6月〜7月という期間に引き締めるというのは妥当な予想」、ボストン連銀総裁「4月の議事録で示された条件の大部分が現時点で全般的に満たされつつある」と利上げの環境は既に整ったと考えられる発言を行っています。

4月の議事録では「4〜6月に経済成長が上向き、労働市場が引き続き力強さを増し、インフレが目標2%に向けて進展している状況と一致すれば、金利誘導目標を6月に引き上げるのが適切になる可能性が高い」としていましたし、6月と7月を比較した場合、6月には会合後の議長会見もあることから、市場との対話を重視するFRBとしては、今週末の雇用統計を含め、今後の経済指標に明確な悪化が見られない限り6月利上げは既定路線と考えた方が良いと思われます。

ひとつのリスク要因としては6月14・15日の翌週に6月23日に予定されている英国のEU離脱をめぐる国民投票がありますが、こちらも残留支持の割合が高いと考えられ、ユーロポンドをはじめとするポンドの動きを見ても、一時期に比べ離脱懸念は相当に弱まっていると考えることができるでしょう。

ちなみに、よく言われる利上げ織り込み度ですが、これはCME(シカゴマーカンタイル取引所)が自ら公表しているサイトを見るのが確かです。
http://www.cmegroup.com/trading/interest-rates/countdown-to-fomc.html

この6月時点の利上げ織り込み度を見ると、現在ではまだ低い(30%前後で推移)と言わざるを得ないのですが、FOMCメンバーの発言では市場参加者は早期の利上げについて低く見積もっているとの発言もありましたので、いつも通りブレているのは市場参加者、FOMCメンバーは着々と利上げの準備を進めていると考えています。

そうなると、思惑的に短期的にはドル買いが先行しやすいのですが、今朝の早朝市場では直近高値を上回り、110.86レベルまで水準を切り上げました。ここで日足チャートをご覧ください。

現在の長期的な円高トレンドはまだ終わったとは考えられず、現在の円安方向への揺り戻しは短期的なもので、一定水準まで達したのちに再び円高トレンドに回帰するという判断は変化ありません。その場合、円高トレンドの継続が変調をきたしていないと判断できる戻し高値は、4月日銀会合時点の高値111.88となります。つまり、高値を切り下げる流れが続いている限り長期円高トレンドは継続となります。

今週の時点で111.88を試す流れは考えていませんが、6月FOMCに向けての抜けてはいけない戻しの限界点として意識している水準です。その後は、先週書いた通り米国の立場から考える為替水準として再び105円台を試しやすいというのが現状認識です。

今週のドル円は、109.50レベルをサポートに、111.50レベルをレジスタンスとする見通しとしておきます。

            ドル円(日足)チャート

            ドル円(日足)チャート

このチャートは、ローソク足の足型をそのままに陰陽の着色のみ平均足と同様とすることで、短期的な方向性(緑=上昇、赤=下降)を見やすく加工した当週報独自のチャートとなっています。また、国内外で人気の高い一目均衡表を併せて表示することで上下のチャートポイントもわかりやすく示しました。トレンドラインは週初の段階で過去一定期間から自動的に表示される自動トレンドライン(無い場合もあります)となっています。

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