【概況】
トルコリラ円は12月6日の米雇用統計後の下落で12月3日安値を割り込んで一段安となり、10月後半からの持ち合い相場の下限だった11月15日未明安値18.77円を割り込んで持ち合い下放れに入り、12月10日には18.64円まで安値を切り下げた。
その後は米連銀のFOMC、トルコ中銀の政策金利発表、ECB理事会、英国総選挙、トランプ政権の通商協議合意へ向けた大詰めの状況を見ながら18.70円を挟んで下げ一服の小持ち合いとなっていた。
12月12日未明の米FOMCは市場予想通りに政策金利を据え置き、2020年のFOMCメンバーによる金利変更回数の中央値をゼロ回として当面は利下げした状況を継続し、大幅なインフレ進行がなければ利上げしないとした。これを受けてドルは全面安となり、ドル円の下落に押されて12日朝には10日夕刻安値と同値まで下落したが、さらに重要イベントも続くとして新たな安値更新を回避して下げ渋りを続けた。
【トルコ中銀の利下げ消化、米中合意報道でのリスクオン】
12日20時、トルコ中銀は政策金利を従来の14.0%から12.0%へと大幅に引き下げた。市場の事前予想が12.5%への利下げだったために予想を超える下げ幅となった。トルコ中銀はこれまで3会合連続で利下げし、利下げ幅も毎回市場予想を上回ってきた。今回で4回連続の利下げとなった。
米連銀が今年3回の利下げで打ち止めとしたものの当面は利上げへ転じないとしたため、資源通貨国及び新興国では利下げによる自国通貨安リスクが後退している。そのため、自国経済に自信があれば積極的な利下げに踏み込むことも可能といえる。最近のトルコ経済指標が昨年8月の通貨危機状況から脱却して高インフレも落ち着き、GDPも4期ぶりにプラスへ回復しているため、トルコ中銀及びエルドアン政権も利下げによる通貨安不安は軽微として、それよりも利下げによる景気押し上げ効果を期待する姿勢といえる。
ドル/トルコリラは11月21日から12月9日まではドル高リラ安での推移だったが、9日以降はドル高が一服していた。トルコ中銀の利下げ発表を前後して乱高下した後、12日深夜にかけてはドル安リラ高となった。13日未明にかけてはいったんドル高リラ安へ切り返したが13日朝にかけては再びドル安リラ高となっている。
トルコの利下げによる通貨安効果とともに、米中通商協議が第一段階合意へ進んだことでの米株高債券安により米長期債利回りが上昇するため、長期金利面では金利差縮小でドル高リラ安となりやすいものの、リスクオン心理の拡大でユーロや豪ドル等が上昇してドルストレートでのドル安感が強まればトルコリラもリスクオンに乗って上昇しやすい。このため政策金利発表や米中関連報道によってドル/トルコリラも若干の乱高下となったようだ。
【10月後半からの持ち合い下放れによる下落加速にいったんブレーキ】
トルコリラ円は12月2日からの下落が進んで10月以降の持ち合いを下放れ、日足のボリンジャーバンドは収縮から膨張へと転じ始めてさらに下落が加速してゆきやすい状況に入っていたが、外部要因により一段安に歯止めがかかって揺れ返しの上昇となっている。13日午前には18.90円超えまで戻しているため元の持ち合いレンジ内に回帰している。
しかし、持ち合い下放れから崩れだし、凡そ4か月周期での高値を付けて下落期に入った印象のため、強気回復には直前の持ち合いを上抜き返すような上昇が必要だ。今年3月も急落から一転して2日間の反騰を入れてから結局一段安へ進んだように、いったん壊れた持ち合いから切り返すのもかなりのエネルギーがいる。
米中が第一段階の合意に至り、関税率が引き下げられても拡大された税率が解消されるわけでなく、第二段階への合意へ進めない場合や第一段階の合意が順守されない場合は税率の再引き上げもあり得る。ひとまず楽観的な反応を強めている金融市場も再びリスク回避へと急旋回しないとも限らないのが相場の本性でもある。
【60分足一目均衡表・サイクル分析】
概ね3日から5日周期の短期的な高値・安値形成サイクルでは、12月12日早朝への下落で10日夕安値割れへ余裕が乏しくなったため、12日午前時点では12月10日深夜高値と11日夕刻高値をダブルトップとした弱気サイクル入りと仮定した。またボトム形成期は13日夕から17日夕にかけての間とし、10日深夜高値を上抜けないうちは一段安警戒としたが、10日深夜高値超えからはいったん強気サイクル入りとして13日夜から17日深夜にかけての間への上昇を想定するとした。
12月12日深夜の急騰により高値更新からの強気サイクル入りとなった。10日夕安値と12日朝安値をダブル底としての上昇であり上昇角度もかなり鋭角的となっているので18.82円以上での推移中は一段高余地ありとするが、急騰に対する反動も警戒されるので18.82円割れからは弱気転換注意とし、18.75円割れからは弱気サイクル入りと10日夕安値試しを想定する。
60分足の一目均衡表では12日夜の急騰で遅行スパンが好転し、先行スパンも突破した。このため遅行スパン好転中は高値試し優先とする。ただし新たな高値更新へ進めないと遅行スパンは深夜から悪化しかねないため、遅行スパン悪化からは弱気転換とみて安値試し優先へ切り替える。
60分足の相対力指数は12日深夜の急騰で80ポイントを大幅に超えてかなりの買われ過ぎとなっている。高値更新でも指数のピークが切り下がると弱気逆行となって下落に転じやすくなると注意し、60ポイント割れからは下げ再開を疑う。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、12月13日早朝安値18.82円を下値支持線、19.00円を上値抵抗線とみる。
(2)18.82円を上回るうちは上昇余地ありとして19円試しとするが、18.95円以上は反落警戒として18.95円を超えた後の18.90円割れからは下げ再開注意とみる。
(3)18.82円割れからは弱気転換注意、18.80円割れからは弱気サイクル入りと仮定して18.75円前後への反落を想定する。18.80円割れを切り返して18.85円を超える場合は上昇再開とするが、18.80円以下での推移なら週明けも安値を試しやすいとみる。
【当面の主な経済指標等の予定】
12月13日
16:00 10月鉱工業生産 前年同月比 (9月 3.4%)
12月16日
16:00 9月失業率 (8月 14.0%)
16:00 10月小売売上高 前月比 (9月 0.6%)
16:00 10月小売売上高 前年比 (9月 2.7%)
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