【概況】
トルコリラ円は12月3日深夜に18.83円、4日夕刻にも同値の安値を付けた後は18.90円を挟んで狭いレンジの持ち合いが続いていた。ドル円が12月2日午前に109.72円を付けて8月26日底以降の高値を更新したものの、12月2日夜の米ISM製造業景況指数悪化や米中協議の先行き不透明感を背景に下落に転じて12月4日午後には108.41円まで下落する中、ドル/トルコリラがドル高一服で横ばい推移となり、トルコリラ円はドル円の下落に同調して下げたが、その後はドル円が下げ一服となってドル/トルコリラも動意の薄い状況だったため、トルコリラ円も決め手に欠いて横ばい推移、という状況だった。
しかし、12月6日夜の米雇用統計が予想を上回る良好さだったことからドルが全面高となり、ドル/トルコリラでは凡そ0.6%のドル高リラ安となり、ドル円も雇用統計発表後にいったんは上昇したものの雇用統計の良好さだけでは米中通商協議問題等の先行き不透明感等のリスク回避心理を解消しきれないとして早々に反落して発表前水準近くへ押し返され、トルコリラ円はドル円の失速とドル/トルコリラでのドル高リラ安が重なる形で7日未明には18.74円まで下落した。
【持ち合い下放れ】
10月末以降は18.80円前後を下値支持線としながら、19円台に乗せても維持できない範囲での持ち合いが続いてきた。その間の最高値は10月31日未明の19.08円であり、12月2日昼に同値近辺まで上昇したものの高値更新に至らずに失速した。持ち合い中の最安値は11月15日未明の18.77円だったが、12月7日未明安値で18.74円まで下げて安値を更新した。
10月31日未明と12月2日昼の両高値が持ち合い上限でのダブルトップであり、ダブルトップ完成の目安はその中間点にある谷間の安値を割り込むことだが、7日未明への下落によりダブルトップは完成したといえる。もっとも、12月9日を下げ渋ってその後に急転上昇となれば持ち合いから一時的に転落しかけたものの持ち直しとなり逆に持ち合い上限及びダブルトップを試しにかかる可能性もあるが、12月7日未明安値からさらに安値更新が続けば切り返しへの期待が薄れて買い方の投げ売りを誘いかねない。
【4か月周期の天井サイクル】
トルコリラ円週足
トルコリラ円は2018年8月にかけて通貨危機的な暴落に見舞われたが、危機情勢一服により2018年11月29日へ戻し、2019年5月9日まで再び下げた後は19円を挟んだ持ち合いに入り、さらに10月末以降はよりレンジを狭めた持ち合いとなってきた。この持ち合いによる煮詰まり感は週足、日足のボリンジャーバンドでの収縮度合いを見るとよくわかる。
2018年8月底以降は、概ね4か月前後の周期で高値を付けてきた。11月29日高値の後は3月27日高値、7月31日高値であり、底値も8月13日の大底とダブル底となった8月30日から4か月目の1月3日、4か月目の5月9日、4か月弱の8月26日でつけており、現在は3か月を経過したところにある。
この4か月前後の周期性を踏まえれば、10月31日未明高値と12月2日昼高値によるダブルトップでこのサイクルの高値を付け、持ち合いから転落したことにより4か月周期の底形成期となる年末年始へと下落しやすい状況に入った印象がある。仮にその場合、ボリンジャーバンドの収縮度合いを踏まえれば、長期の持ち合いにより市場心理が煮詰まった状況から解放されるため値動きも大きく荒っぽくなることも警戒されるので、ボリンジャーバンドが収縮から膨張に転じ始めた場合は下落再開感がかなり強まるのではないかと警戒される。
持ち合いが煮詰まった後に急落した直近の前例としては、今年2月から3月半ばへの持ち合いから3月22日安値へ急落して3月27日に急反騰してからまた5月9日安値へと一段安していった波乱含みの展開がある。また昨年12月も昨年8月底からの反騰一服による持ち合いを続けた後に今年1月3日への急落が発生している。
しばらく持ち合い相場が続くと変動幅に対する感覚も鈍くなるものだが、動き出した場合はここ1年間における同様の展開時の変動率を念頭に置くべきだろう。
【当面は米中動向中心に全体の流れを見つつ】
10月23日にトルコが米国提案の恒久的停戦を受け入れ、米国がトルコへの経済制裁を解除したことをきっかけにシリア情勢は落ち着いている。
11月1日からはトルコとロシアによるシリア北東部の合同巡回も始まり、11月13日のトランプ米大統領とエルドアン大統領の首脳会談でも諸問題は先送りされて両国関係を悪化させる動きはなく、12月3日のNATO首脳会議の場においてもフランス等との対立は解消していないが極端な関係悪化も見られず11月に続くトランプ大統領とエルドアン大統領の首脳会談も30分程度で波乱なく終了している。
トルコは米国がF35を売らないなら別の道を選択するとし、11月末からはロシア製S400ミサイルシステムの試験を開始するなどしており、シリア領内のIS等テロ組織を巡るトルコの姿勢と欧米及びロシアの関係は複雑だが、シリアやイランと唯一国境を接しているトルコはNATOに加盟しつつもロシアと協力関係にあり、東西関係の中で微妙で緊張感のあるバランスをうまく保っているともいえる。
シリア情勢がトルコに対する外交的経済的な影響をもたらす場合はトルコリラにとっての悪影響要因となるが、今のところはこの問題に対しては市場もひとまず様子見のスタンスで見ているようだ。
トルコ経済についても昨年の通貨危機的な状況を脱してインフレも落ち着き政策金利も大胆な利下げを続けているように落ち着いているので、トルコ景気を見ての独自要因によるトルコリラの乱高下も見られない。このため、当面は米中通商協議がどうなるのか、それによる世界連鎖株安発生リスクが強まるか逆に世界的な株高基調が継続してゆくのかどうか、その際のドルストレートの強弱及びリスク回避先通貨としての円の強弱がトルコリラ円を左右してゆく状況といえるのだろう。
12月12日にはトルコ中銀の追加利下げも予想されているので、利下げ幅によってはトルコ中銀の先行き景気見通しへの自信がうかがえるかもしれない。
以上を踏まえて当面のポイントを示す。
(1)当初、18.70ドルを下値支持線、18.85円を上値抵抗線とみる。
(2)18.85円以下での推移中は一段安警戒とし、12月7日未明安値18.73円割れからはまず18.70円前後を試すとみる。18.70円前後では買い戻しも入りやすいとみるが、18.70円割れから続落の場合は持ち合い相場からの転落感が強まるので18.50円台へ下値目途を引き下げる。
(3)18.85円超えからはいったん戻りを試す動きとみて12月5日未明高値18.93円手前を試すとみる。5日未明高値を超えずに戻り幅の半値を削るところからは下げ再開とみる。その場合は12月2日午後高値からの下落が戻り高値切り下げ型で継続するため、先行きでは18.50円以下への下落へ進みやすくなってゆくとみる。
(4)強気転換には12月5日未明高値を上抜き、その後の下落場面でも5日以降の安値を割り込まずに切り返す必要があると思われる。
【当面の主な経済指標等の予定】
12月11日
16:00 10月経常収支 (9月 24.8億ドル、予想 16.0億ドル)
12月12日
20:00 トルコ中銀 政策金利 (現行 14.00%、予想 12.50%)
12月13日
16:00 10月鉱工業生産 前年同月比 (9月 3.4%)
12月16日
16:00 9月失業率 (8月 14.0%)
16:00 10月小売売上高 前月比 (9月 0.6%)
16:00 10月小売売上高 前年比 (9月 2.7%)
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