トルコリラ円週間見通し 19円台を維持しきれず、10月序盤型の下落も警戒(週報11月第2週)

トルコリラ円は中東・シリア情勢が一服する中で全般的な金融市場動向及びクロス円動向を見ながらの展開に入っている。

トルコリラ円週間見通し 19円台を維持しきれず、10月序盤型の下落も警戒(週報11月第2週)

【概況】

トルコリラ円は中東・シリア情勢が一服する中で全般的な金融市場動向及びクロス円動向を見ながらの展開に入っている。
11月1日の米雇用統計が予想より良かったことでドル円が反騰に転じ、トルコリラ円も11月1日夕刻安値18.79円から反騰入りして週明け11月4日夜高値19.05円まで戻したものの、9月から続く19円台での上値抵抗感から失速し、米中通商協議進展不安を背景にドル円が11月7日昼へ下落した流れと同調して11月7日昼には18.82円まで下げた。
11月7日夕刻に中国商務省による米中双方の追加関税を段階的に撤廃すると合意したとの表明からドル円が反騰入りし、トルコリラ円も8日未明には19.03円まで戻したが11月4日夜高値には届かず、8日夜にも19.02円をつけたが高値切り上げには至らずに失速し、19円割れのまま先週を終えた。
米中協議に関しては8日夜にトランプ大統領が「合意していない」と述べたことで先行き不透明感が再び強まったことがドル円及びトルコリラ円の上値を抑えた印象だ。

【上昇1か月経過、19円台を維持できず】

10月28日以降は何度か19円台に乗せてくるものの19円台を維持しきれずに失速を繰り返している。その中でも10月31日早朝高値以降は11月4日夜、11月8日未明及び8日夜と高値ラインは若干切り下がっている。
9月からみると9月12日高値19.10円、10月18日高値19.09円、10月1日高値19.15円と高値ラインはやや切り上ったものの、いずれも19円台を維持しきれずに失速している。8月26日安値からの上昇が1か月を経過した10月1日高値からの下落で10月10日安値18.16円まで大きく下げている。

19円台を維持し、さらに高値を試して行くような新興国通貨全般の上昇機運やトルコ自身の政治経済的な強さによる上昇機運は今回もみられない。11月に入ってからは、NYダウが史上最高値を更新する中で安全資産とされる長期債券が売られ、米10年債利回りが上昇し、ドル指数も上昇していることがドル/トルコリラでのドル高リラ安となり、クロス円全般の円安によるトルコリラ円上昇の上値を抑えている印象がある。

10月10日安値からの上昇も1か月を経過しており、上値の重さを意識して10月1日から10月10日へいったん大きく下げた時に近い市場心理状態に陥っても不思議のない時間帯に来ているのではないかと思われる。
11月1日安値から11月7日昼安値にかけては底上げされているので、この底上げパターンを維持する内はまだ19円乗せを試す余地は残るが、底上げパターンが崩れると10月10日安値への下落と同様の下げとして18円台序盤試しへ向かいやすくなると思われる。

【中勢は40週前後と80週前後の底打ちサイクル】

【中勢は40週前後と80週前後の底打ちサイクル】

2013年以降の週足では、概ね40週前後(34週から50週のレンジ)の底打ちサイクルと、このサイクルが2セットでの80週前後の底打ちサイクル(71週から88週のレンジ)で推移してきた。
直近では2017年4月14日底から71週目となる2018年8月13日安値(米・トルコ対立によるリラ暴落)で80週サイクルの底をつけている。40週前後のサイクルでは、8月13日安値から39週目となる2019年5月9日安値で底をつけたが、その後は17円台後半を中心とした持ち合いでの推移に止まっている。
2019年8月26日にはフラッシュクラッシュにより17円を割り込んで、5月9日安値も割り込んだのだが、一時的なものとして戻しているため、40週及び80週サイクルではまだ上昇期の範囲にあると仮定される。

しかし、80週サイクルとしては既に7月31日高値でサイクルトップをつけて下落期に入っている可能性も懸念され、その予兆として8月26日のフラッシュクラッシュが発生したともいえる。2019年7月31日高値を超えられない内は、既に2つ目の40週サイクルにおける下落期に入っている可能性及び80週サイクルでの下落継続を疑うべきところかもしれない。その場合はあと10週から20週程度の下落余地もあるという見方もできる。
今年5月以降は落ち着いているとはいえ、ネガティブなきっかけから18ドル台序盤へ下落し始める場合はまず18円台序盤からの反騰注意としても、18円を割り込むような状況が発生する場合は5月安値試し、あるいは底割れしてゆくような展開となる可能性もあると念頭に入れておきたい。

【当面のポイント】

(1)18.90円前後を支持線とし、割り込んでも回復する内は18.95円超えから19円台乗せを再び試す可能性も残るが、18.90円割れから続落の場合は11月7日昼安値18.82円試し、さらに割り込む場合は11月1日安値18.79円から18.70円前後への下落を想定する。


(2)概ね3日から5日周期の短期的な底打ちサイクルでは11月7日昼安値を直近のサイクルボトムとし、8日未明と8日夜の両高値でダブルトップをつけて下落期に入っている可能性が高いと考える。その場合の安値形成期は12日の日中から14日の日中にかけての間と想定される。その段階で11月7日安値を割り込めば11月1日からの底上げパターンが崩れるので下げが加速しやすくなると注意する。

(3)11月8日未明高値19.03円を超えてくると10月31日からの高値切り下がりパターンを破ることとなるため、逆に上昇へ弾みが付きやすくなり、19.10円台中盤を当面の上値目処としつつ、19円台を暫く維持する可能性も出てくると思われる。ただしそのためには新興国通貨全般が上昇基調に乗るか、リスクオン心理前回でクロス円全般での円安がかなり進む必要があると思う。

【最近のトルコ・シリア情勢推移】

10月10日 トルコがシリアのクルド組織を空爆
10月14日 米国がトルコ国防省や閣僚3人等を経済制裁対象に指定
10月17日 エルドアン大統領が5日間の停戦を表明
10月18日 トルコとクルド組織で停戦違反の衝突、エルドアン大統領とトランプ大統領電話会談
10月22日 エルドアン大統領、プーチンロシア大統領と会談
10月23日 トルコが恒久的停戦を受け入れ、米国が経済制裁を解除
10月27日 トランプ大統領、IS指導者バグダディ氏殺害を報告
10月29日 トルコとロシア、クルド人勢力の指定地域からの撤収を確認
      米下院によるトルコ制裁決議可決

11月01日 トルコとロシア、シリア北東部の合同巡回開始
11月02日 トルコが制圧したシリア北部で爆発、少なくとも13人が死亡、30人以上がけが
11月05日 トルコ・ロシアによる2回目の合同巡回実施
11月06日 米・トルコ首脳電話会談。11月13日にワシントンで首脳会談合意
11月07日 エルドアン大統領、米国はクルド人武装勢力撤退公約を果たしていないと批判
11月08日 エルドアン大統領、シリア北部の国境地域に外国軍が駐留する限りトルコも撤退せず
      トルコ大統領府、NATO首脳会議に合わせて英仏独との4カ国首脳会談を予定
11月11日 トルコ政府、拘束中のIS組織外国人戦闘員を11月11日から出身国に送還の姿勢

【直近の主な経済指標等の結果】

10月24日
20:00 トルコ中銀(TCMB)政策金利 14.0% (従来 16.5%、予想 15.5%)

10月25日
16:00 10月製造業信頼感指数 100.9 (9月 98.8)
16:00 10月設備稼働率 76.4% (9月 76.3%)

10月31日
16:00 9月貿易収支 -20.6億ドル(8月 -25億ドル)

11月01日
16:00 10月イスタンブール製造業PMI 49.0(9月 50.0)

11月04日
16:00 10月消費者物価 前年比 8.55%(9月 9.26%)
16:00 10月消費者物価 前月比 2.00%(9月 0.99%)
16:00 10月生産者物価 前年比 1.70%(9月 2.45%)
16:00 10月生産者物価 前月比 0.17%(9月 0.13%)

11月07日
23:30 10月財務省現金残高 -118.9億トルコリラ(9月 -216.5億トルコリラ)

【当面の主な経済指標等の予定】

11月12日
16:00  9月 経常収支 (8月 26.0億ドル、予想 20.5億ドル)
19:30 10月自動車生産

11月14日
16:00 9月 鉱工業生産 前月比 (8月 -2.8%)

11月15日
16:00 8月 失業率 (7月 13.9%)

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