トルコリラ週報 『地政学的リスク後退で上昇するも、大幅利下げがリラの重石に』
今週のレビュー(10/21−10/25)
今週のトルコリラ・円(TRYJPY)相場は、@10/19の英議会審議で採決が見送られたことに伴うリスク回避的な円買いや、Aロシア・トルコ首脳会談を前にした警戒感が重石となり、10/21に、18.506円まで下落しました。しかし、Bロシア・トルコ首脳会談を経て、シリア北東部におけるトルコ軍事作戦の休止延長が報じられると、Cトランプ米大統領がシリア停戦合意の順守を条件に「対トルコ制裁の解除」を発表したこと等が支援材料となり、10/23には、高値18.990円まで上昇しました。もっとも、心理的節目19円丁度を前に伸び悩むと、DTCMB(トルコ中銀)が市場予想を大幅に上回る利下げ(結果16.50%→14.00%、予想16.50%→15.50%)に踏み切ったこと等がリラ売りを誘い、結局、18.837円付近まで下落しての越週となっております。
来週の見通し(10/28−11/1)
今週のトルコリラ・円相場は、シリア北東部を巡る地政学的リスクの後退を受け(@トルコが米国及びロシアと合意、A米国がトルコ制裁を解除、Bクルド人部隊の撤収)、週後半にかけて19円丁度近辺まで上昇しました。この間、ボリンジャーミッドバンドや、3/27高値20.939円と7/31高値19.696円を結んだ長期レジスタンスライン、一目均衡表雲上限を突破するなど、テクニカル的に見て、続伸リスクが期待されるチャート形状となりつつあります。上値目途としては、心理的節目19円丁度や、10/1高値19.170円、200日移動平均線19.264円などが意識されます。
但し、ファンダメンルズ的に見ると、@トルコ経済を巡る先行き不透明感や、A外貨準備急減を背景としたリラ安防衛能力への不信感(リラ買い為替介入が長期的に続けられないとの懸念)、Bエルドアン大統領による中銀への利下げ圧力、Cエルドアン大統領の求心力低下、D経済的な結び付きの強いドイツ経済の先行き悪化懸念など、不安材料は山積みです。また、Eトルコ情勢が再度悪化に転じるリスクも少なくありません。
以上の通り、トルコリラ・円相場は、テクニカル的に持ち直しの動きが見られるものの、ファンダメンタルズ的な不安要素が続伸を阻む展開が予想されます。来週は10/31に発表されるトルコ中銀のインフレ報告(4半期に1回)に注目が集まります。
前回7月31日発表分では、CPI見通しが2019年末13.9%、2020年末8.2%となりましたが、9/30に行われたトルコのアルバイラク財務相による説明会では、CPIが2019年末に12.0%、2020年末に8.5%、2021年末に6.0%まで低下するとの見通しが示されました。この為、来週のインフレ報告では、CPI見通しが一段と引き下げられる可能性が高いと予想されます。尚、その場合は、今週木曜日に14%まで引き下げられた政策金利が、次回12/12の決定会合で更に引き下げられるとの思惑が強まることから、トルコリラには、対ドル・対円共に下落圧力が加わりそうです。来週は、トルコ中銀(TCMB)のインフレ報告を睨みながらも、下落リスクに警戒が必要です。
来週の予想レンジ TRYJPY 18.30ー19.10
トルコリラ円日足
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