ユーロ週報 指標か理事会か、下抜けの可能性大
今週の週間見通しと予想レンジ
先週のユーロドルは週初の1.12台後半からECB理事会における緩和思惑とハードブレグジットの懸念を改めて材料としたポンド売りの動きとが重なって1.12目前の水準まで下げる動きを見せました。しかしFOMCでの大幅利下げ思惑と中東の緊張の高まりからドルが売られると月曜高値に迫ったものの、その後大幅利下げ思惑が後退すると、まずは先のイベントとなる今週のECB理事会に向け反落しての引けとなりました。
しかし、1週間の値幅は84pipsに留まり、1.12台後半の売りと1.1200の買いに挟まれどちらにも動けないという流れが続きました。来週の米国FOMCでは、ほぼ25bpの利下げは確定と見られ、それ以上の大幅利下げはほぼ無いという見方が支配的です。いっぽうで、今週のECB理事会では、引き締めへの転換が無いままに再び追加緩和の方向性が示されるのではないかとの見方も強まっていて、仮に何らかの緩和策が出てくることになれば、まずはユーロ売りが先行、その上で来週のFOMC待ちということになるでしょう。
これまで、ユーロドルは1.12以下には買いオーダーがあって、下抜け出来ないという流れになっていましたが、先週は3度試して一度も1.12割れを見ることが無かったため、逆に今度1.12を割るとユーロ売りが強まるのではないかという地合いとなっています。またECB理事会の前にも主要国のPMI速報値が発表されますので、その数字が予想よりも弱い場合には理事会を前にして1.12割れという可能性も十分にありそうです。
今週はこの水曜のPMI速報値と木曜のECB理事会で今後のユーロドルの動きを占う週となりますが、先週ユーロの下げを先導したポンドも保守党党首選の結果が判明し、新党首(=首相)の発言次第では10月末のブレグジットに間に合うのかといった懸念が先週に続いて市場の話題となる可能性もあり、材料的にも売り材料につながるイベントのほうが多そうではあるもののECB理事会までは不透明な状況が続きそうです。
ただ、最近でこそ底堅いとも見られるものの、1.12割れはこれまでには何度も見てきた動きですから、ECB理事会という新たなテーマが加わってきたことを考えると、今週はこれまでのもみあいから下抜けを見る可能性のほうが高いように思えます。そのようなバイアスもかけながら、チャートも見てみましょう。
ユーロドル日足
5月安値を挟んで年初からの下降トレンドが上昇トレンドへと転換したものの、7月に入ってからは上昇トレンドもまた転換し緩やかな下降トレンド入りになったか、といったところです。また短期的には1.1200と1.1300に挟まれて横方向へのもみあいとなっていますので、テクニカルには抜けた方向についていくのが本来ではあります。
しかし、6月の押しと7月安値を結んだサポートライン(ピンク)が今は効いているとはいえ、距離も近くいつ下抜いてもおかしくありません。まずは1.1200を下抜ける必要はあるものの、5月安値1.1107と6月高値1.1412の78.6%(61.8%の平方根)押しとなる1.1172(赤のターゲット)を目指しやすい週と見ています。
今週は1.1150レベルをサポートに、1.1270レベルをレジスタンスと、どこかで1.1200を下抜け売りが強まる流れを見ておきます。
今週のコラム
先週は保守党党首選も関係してハードブレグジット懸念からポンドドルは2017年4月以来の安値をつけることとなりました。今週はポンドの長期チャートを改めて見てみましょう。
週足チャートをご覧ください。
現時点では2017年安値と2018年高値の78.6%(61.8%の平方根)押しとも重なる水準であることからいったん下げ止まっている動きではありますが、大きくはピンクの下降ウェッジで示したチャートパターンの中で下降トレンドを継続しやすい地合いであることには変化ありません。
英国保守党首が決まっても、議会でのブレグジット議論がそう簡単にまとまるとは思えませんし、これまでの空転状況を見るにつけ、ポンドもユーロ同様に今週は下げやすい週になると見ておいた方がよさそうです。
今週の予定
今週注目される経済指標と予定はドル円週報に示してあるものと共通です。ドル円週報の「今週の予定」をご参照下さい。なお、その中でユーロの値動きに特に影響が出ると考えられる予定は以下のものです。重要な予定として注意しておきましょう。
7月22日(月)
(特になし)
7月23日(火)
23:00 ユーロ圏7月消費者信頼感速報値
7月24日(水)
15:45 フランス7月企業景況感
16:15 フランス7月製造業・サービス業PMI速報値
16:30 ドイツ7月製造業・サービス業PMI速報値
17:00 ユーロ圏7月製造業・サービス業PMI速報値
7月25日(木)
17:00 ドイツ7月ifo企業景況感
20:45 ECB理事会
21:30 ドラギECB総裁会見
7月26日(金)
15:00 ドイツ6月輸入物価指数
15:45 フランス7月消費者信頼感
15:45 フランス7月PPI
21:30 米国4〜6月期GDP速報値
前週のユーロレンジ
(注)上記表の始値は全て東京午前9時時点のレート。為替の高値・安値は東京午前9時?NY午後5時のインターバンクレート。
先週の概況
7月15日(月)
東京休場中のユーロドルは欧州市場昼前まではじり高の展開となっていましたが金曜高値を超えられませんでした。その後は25日ECB理事会における緩和思惑が重石となって日中安値を更新し安値圏での引けとなりました。
7月16日(火)
ユーロドルは英国の保守党党首選の行方と合意なき離脱の可能性が高まっていることを背景にポンド売りが強まり、その後はNYの引けまでポンドがリードする形でのユーロ売りが進みました。ポンドは2017年4月以来の安値をつけました。
7月17日(水)
ユーロドルは、欧州市場序盤に一時前日安値を下回りましたが1.12の大台を割り込まずに反転。NY市場では全体的なドル売りの流れの中で買い戻しが入りましたが、ユーロ円の売りも出たため値幅は伴わず方向感は出ないままでの引けとなりました。
7月18日(木)
ユーロドルは、欧州市場序盤までは前日からの買いの動きを継続していましたが、ECBがインフレ目標の見直し検討のヘッドラインに反応して反落、一時1.1204レベルの安値をつけました。しかしまたしても1.12の大台は割り込めず、NY市場後場のドル売りの動きから1.1281レベルまで反転上昇、そのまま高値圏でのクローズとなりました。
7月19日(金)
ユーロドルは東京市場ではドル円同様NY引け後の調整からユーロ売りが先行してのスタート、欧州市場では前日に買った向きのストップオーダーも重なって一段安の動きとなりました。7月FOMCにおける利下げが25bpで固まりつつあることから、NYダウは反落しましたがドル買いは引けまで継続し、ユーロドルは1.1204レベルまで押してから若干戻しての引けとなりました。
ディスクレーマー
アセンダント社が提供する本レポートは一般に公開されている情報に基づいて記述されておりますが、その内容の正確さや完全さを保証するものではありません。また、使用されている為替レートは実際の取引レートを提示しているものでもありません。記述されている意見ならびに予想は分析時点のデータを使ったものであり、予告なしに変更する場合もあります。本レポートはあくまでも参考情報であり、アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、為替やいかなる金融商品の売買を勧めるものではありません。取引を行う際はリスクを熟知した上、完全なる自己責任において行ってください。アセンダント社および二次的に配信を行う会社は、本レポートの利用あるいは取引により生ずるいかなる損害の責任を負うものではありません。なお、許可無く当レポートの全部もしくは一部の転送、複製、転用、検索可能システムへの保存はご遠慮ください。
オーダー/ポジション状況
関連記事
-
南アフリカランド(ZAR)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
南アランド円週報:『約1カ月ぶり安値を更新するなど上値の重い展開が継続中』(11/23朝)
南アランドの対円相場は、11/7に記録した約4ヵ月ぶり高値8.86円をトップに反落に転じると、今週前半にかけて、一時8.44円まで下落しました。
-
トルコリラ(TRY)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
トルコリラ円週報:『トルコ中銀は政策金利の据え置きを決定。一巡後の反発に期待』(11/23朝)
トルコリラの対円相場は、9/16に記録した史上最安値4.10円をボトムに切り返すと、11/15にかけて、約3カ月半ぶり高値4.56円(8/1以来の高値圏)まで上昇しました。
-
米ドル(USD)の記事
Edited by:照葉 栗太
2024.11.23
来週の為替相場見通し『トランプトレードと円キャリーの組み合わせがドル円を下支え』(11/23朝)
ドル円は、今週前半にかけて、一時153.28まで急落する場面が見られましたが、週末にかけては一転154円台後半へと持ち直す動きとなりました。
-
ユーロ(EUR)の記事
Edited by:編集人K
2019.07.22
ユーロドル 1.12台前半での持ち合い 木曜のECB理事会を警戒(7/22夕)
週明けのアジア市場でユーロドルは1.12台前半での小動きに終始。東京時間18:30現在は1.1215レベルで取引されています。
-
ユーロ(EUR)の記事
Edited by:編集人K
2019.07.19
ユーロドル 乱高下の後1.12台半ばでの動き(7/19夕)
19日の東京市場でユーロドルは前日海外時間から続く乱高下の後1.12台半ばで方向感を失っています。
- 「FX羅針盤」 ご利用上の注意
- 掲載している情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。
- 掲載している商品やサービス等の情報は、各事業者から提供を受けた情報または各事業者のウェブサイト等にて公開されている特定時点の情報をもとに作成したものです。
- 当サイトはFXに関する情報の提供を目的としています。当サイトは、特定の金融商品の売買等の勧誘を目的としたものではありません。
- FXに関する取引口座開設、取引の実行並びに取引条件の詳細についてのお問合せ及びご確認は、利用者ご自身が各FX取扱事業者に対し直接行っていただくものとします。また、投資の最終判断は、利用者ご自身が行っていただくものとします。
- 当社はFX取引に関し何ら当事者または代理人となるものではなく、利用者及び各FX取扱事業者のいずれに対しても、契約締結の代理、媒介、斡旋等を行いません。したがって、利用者と各FX取扱事業者との契約の成否、内容または履行等に関し、当社は一切責任を負わないものとし、FX取引に伴うトラブル等の利用者・各FX取扱事業者間の紛争については両当事者間で解決するものとします。
- 当社は、当サイトにおいて提供する情報の内容の正確性・妥当性・適法性・目的適合性その他のあらゆる事項について保証せず、利用者がこれらの情報に関連し損害を被った場合にも一切の責任を負わないものとします。
- 当サイトにおいて提供する情報の全部または一部は、利用者に対して予告なく、変更、中断、または停止される場合があります。
- 当サイトには、他社・他の機関のサイトへのリンクが設置される場合がありますが、当社はこれらリンク先サイトの内容について一切関知せず、何らの責任を負わないものとします。
- 当サイト上のコンテンツに関する著作権は、当社もしくは当該コンテンツを創作した著作者または著作権者に帰属しています。
- 当社は、当社の事前の許諾なく、当サイト上のコンテンツの全部または一部を、複製、改変、転載等により利用することを禁じます。
- 当サイトのご利用に当たっては上記注意事項をご了承いただくほか、FX羅針盤利用規約にご同意いただいたものとします。