ロシア製ミサイルS400を巡る対米関係悪化を背景にトルコリラ売り圧力の再燃に警戒
6/10−6/14の振り返り
今週のトルコリラ・円相場(TRYJPY)は、一目均衡表雲下限に続伸を阻まれる形で反落に転じました。週初18.552円で寄り付いた今週のトルコリラ・円相場は、米墨貿易摩擦を巡る警戒感が和らいだことに伴うリスク回避ムードの後退と、6月下旬に開催されるNATO会議で、ロシア製ミサイルS400を巡って米国と会談する可能性が報じられたこと等が材料となり、翌6/11には、 週間高値となる18.882円まで上昇しました。
しかし、一目均衡表雲下限に続伸を阻まれると、その後は、@6/12に開催されたトルコ中銀(TCMB)の金融政策委員会でややハト派寄りのスタンスが示されたこと(※政策金利の1週間物レポ金利は24.00%で据え置かれましたが、声明文で「食料品価格と輸入物価の上昇に伴うインフレを警戒する」との文言削除がサプライズとなり、市場では「TCMBのインフレ警戒感が後退→利下げ観測高進」と受け止められ、トルコリラの下落を招く展開となりました)や、A米国が反対するロシア製ミサイルS400購入に関し、チャブシオール・トルコ外務相が「米国が制裁を課した場合、対抗措置を講ずる」と発言したこと等が重石となり、週末にかけて18.235円まで急落しました。引けにかけて持ち直すも上値は重く、結局18.390円での越週となっております。
6/17−6/21の展望
トルコリラ・円相場を巡っては、潜在的なトルコリラ売り圧力(@イスタンブール市長選のやり直しに伴う民主主義への不信感、Aロシアからの武器購入(S400)を巡る対米及びNATO同盟国との関係悪化懸念、B外貨準備急減を背景としたリラ安防衛能力への不信感、Cトルコ経済を巡る先行き不透明感、D一般特恵関税制度の対象国からトルコが除外されたことに伴う米トルコ間貿易の減少懸念、Eエルドアン大統領の圧力を背景としたトルコ中銀の金融政策のハト派化)を、F政府・当局によるリラ買い為替介入、G政府・当局による資本規制で下支えする構図が続いております。
具体的には、5/15に0.1%の外貨購入税を約11年ぶりに復活させた他、5/20には10万ドル超の外貨購入における受渡日を1日遅らせる措置、外貨建て預金の準備率を200bp引き上げる措置を講ずるなど、矢継ぎ早に「リラ安防衛策」を実施しました。但し、こうした政府・当局による一連のリラ安防衛策は短期的な効果はあれど、長期的な抑止力には繋がりづらく、一巡後は却ってリラ売り圧力を高める副作用がある点には留意が必要でしょう。
テクニカル的に見ると、トルコリラ・円相場は、一目均衡表雲下限に覆い被さられる形で続伸が阻まれました。週末にかけては、一目均衡表転換線の下抜けに成功した他、トレンドの方向性を示唆するボリンジャーバンドのミッドバンドを13営業日ぶりに割り込むなど、トルコリラ・円相場の下落リスクが足元で再燃しつつあります。来週は、6/17に予定されているトルコの3月雇用統計や、6/18のトルコ4月鉱工業生産、6/20のトルコ6月消費者信頼感指数など一連のトルコ経済指標や、ロシアからの武器購入(S400)を巡る各種ヘッドライン、来週末6/23に実施されるイスタンブール市長選やり直し選挙を巡る思惑に振らされつつも、上値余地は限られそうです。当方では引き続き「トルコリラ・円相場の下落」をメインシナリオとして予想いたします。
来週の予想レンジ TRYJPY 17.95ー18.65
トルコ円日足
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